概要
胸甲騎兵とは、近世~近代ヨーロッパにおいて存在した軍隊の兵種。
重騎兵の一種で、背と胸、或いは胸のみを覆う鎧を身につけた騎兵である。
近世から近代にかけ、特に19世紀、ナポレオン戦争時代に活躍したが、
後装式小銃の登場と進化、続く機関銃の登場と大量配備、
更には、連射性能の高い銃火器の登場に伴う戦術や戦法の変化により命脈を絶たれ、
戦車をはじめとした装甲戦闘車両と入れ替わるように、戦場から姿を消していった。
とはいえ、現在でもヨーロッパの一部の国において、
儀仗兵として存続しており、式典等で姿を見ることが出来る。
重騎兵という割には軽装ですが?
一見すると胸甲騎兵は「重騎兵」に分類される割に軽騎兵ばりの軽装に見えるが、
これには銃火器の進化と普及が関係している。
というのも、16世紀を境にして、火縄銃やマスケット銃の威力が上昇する一方、
金属鎧の防御力は「人間や馬が装備可能な重量」と言う制限により性能の限界を迎えていた。
人馬共に全身を甲冑で被った重騎兵は、その装備の重さ故に機動力に欠け、
その割には銃弾に耐えられるだけの防御力が無かったため、格好の的と化してしまったのだ。
そこで鎧で防御する箇所を減らす替わりに、装甲の厚さを増すことにより、
胸部だけでも銃弾の直撃に耐えられる防御力を与える事にしたのである。
更に、胸甲騎兵が活躍した時代、
鎧は「重く、動きを制限する装備」と見なされ、軽装化や廃止が進められた時代であり、
「重騎兵」といえど、鎧を装備しないことが自然になった時代でもあった。
胸甲騎兵は近世以前・・・17世紀までの重騎兵と比較して軽装に見えるが、
彼らが活躍した時代の基準では、胸甲騎兵の装備は十分に「重装」だったのである。