誘導
スミレ、すみれというキャラクター・人物はスミレの記事へ。ここでは植物名について扱います。
スミレ属
スミレ科スミレ属(Viola)の植物は北半球を中心に分布し、世界中に400種前後が存在するといわれるが、スミレ属は交雑しやすく変異しやすい性質があり、種数は確定しがたい。スミレ科の19属の多くが木本だが、スミレ属は3種を除いて全て草本植物である。
園芸種としては、ヨーロッパ原産のサンシキスミレ(Viola tricolor)を改良したパンジー、ビオラの知名度が高い。西洋ではスミレの香りが重視され、香りの強いニオイスミレ(Viola odorata)も一般的だが、日本ではあまり栽培されない。
日本では草本のみ50種類程度が分布し、タチツボスミレ(ヤブスミレ)、マルバスミレ、エイザンスミレ、シハイスミレ、ツボスミレ(ニオイスミレ)などが山野草として普通に見られる。非常に多くの変種があり、またそれらの交雑種や園芸種も含めると数百種類にものぼる。
茎を地上に伸ばす種類と、地面から葉を出す種類がある。茎を地上に伸ばす種類であっても多くは背が低いが、タチスミレのように背が高くなるものもある。
スミレ属の花
スミレ属の花は特徴的な5弁花で、虫媒花として特殊化している。具体的には、花の基部が後ろに突き出して袋状の距(きょ)という構造を作る。距は蜜の入れ物になっている。茎は前方の花の部分と後方の距の間についていて、距が発達した種ではあたかもやじろべえのようにバランスをとっているように見える(距の短いスミレ属植物もある)。花の色は紫色(菫色)、または白系の色が多いが、中にはキスミレのように黄色のものがある。
スミレ(Viola mandshurica)
日本産スミレ属の代表種。春に深い紫(菫色)の花を咲かせる。スミレ属のうち地上茎がなくて葉がすべて根元から出る種類であり、背丈は低い。
種にはエライオソームというアリの好む物質が付着しており、スミレが開花するのはアリの通り道であることが多い。
基本的に丈夫な種類で、畑や庭先や道端、中には都市部のコンクリートの隙間などに生えていることもある。
異称
トノウマ コマヒキグサ キョウノウマトトノウマ、チンチノコマ、ウンマンコッコなど馬系の他、ベコノツノツキ、ウシンコッコなど牛系の呼称がある。
また、スモウグサ スモウトリ スモウトリグサ スモウトリバナ スモウバナ スモトリグサなど、大昔の子供がこの植物で戦う遊びをしたための呼称と思われるものがあるが、柳田國男は、ジロータロー ジロヤサブロウ ジロウタロウなどに見られる太郎や次郎は、草相撲の際につけられるなんちゃって四股名であり、カギヒッパリ カギトリバナ カギヒキバナ カギバナなどのカギは「馬の顎に譬へられた」花の部分で、これをひっかけて相撲をしたための呼称と説く。また、すみれを「スモトリバナ」と称する美濃の苗木では、白菫がジロ花 紫菫はタロバナと称したという。
他に、オソメバナ、オソメンバナ、カケヒキバナ、ヒトバグサ、スミレグサ、ウツボグサ、スミラ、スミエなど。