作品解説
変わり者の刑事・糸村聡が、被害者の残した遺留品から様々な殺人事件の謎を紐解いていくオリジナル刑事ドラマシリーズ。
物語は基本的に一話完結型。
刑事ドラマではあるが、「凄い刑事が抜群の推理力で犯行トリックを暴き、チームワークと迫力のアクションで犯人を追い詰めて逮捕!」…という作品ではなく、事件に纏わる人々の心模様にスポットを当てて謎を解明していくという、どちらかというとヒューマン・ミステリーに近いスタンスの作品。
事件そのものの論理的解明よりも、事件関係者達の想いや心のしこりといった、真相の裏にさらに隠されている心理的な背景や因果関係の究明に重点が置かれているのが本作の大きな特徴となっている。
犯人逮捕とは別に主人公・糸村が、一見その場にそぐわない不可解な遺留品を基に被害者の生前の行動の理由や心理を解き明かすことで、事件の本当の全体像が見えてくるという構成になっており、同局の『相棒』とはまた異なったアプローチで描かれた異色作である。
2011年から2013年にかけて水曜21時台→木曜21時台→再び水曜21時台と枠を行ったり来たりしながら3シリーズ放送(この事から、ファンの間では「流浪の番組」と冗談交じりにネタにされる事もある)された後はスペシャルドラマとして「日曜エンタ」枠にて放送されていた。
2017年に連続ドラマシリーズとしては4年ぶりとなる第4シリーズが、毎週木曜20:00 - 20:54の「木曜ミステリー」枠にて放送された。
なお、木曜ミステリー枠は東映京都撮影所制作枠なので、制作を手掛ける東映のセクションが、これまで手掛けてきた東映東京撮影所から東映京都撮影所に移ったことになる。もっとも「警視庁・捜査一課長」(こちらは「土曜ワイド劇場」での単発放送を経て「木ミス」枠に登板しているが、主人公が異動するなどの設定改変はなされていない)の様に、同枠であっても東京を舞台にした例もあるので、一部では「糸村まで異動させる事は無かったのでは?」という声も少なからず存在したりする(なお「スペシャリスト」は「土ワイ」枠では京都が舞台だったのだが、こちらは木曜ドラマ枠でレギュラー放送された際は逆に主人公が上京したという設定改変がなされている)。
2018年には7月12日から9月13日にかけて第5シリーズが同枠で放送、連続ドラマとしてはこの第5シリーズが平成最後の放送となった。
2019年には10月3日にスペシャルドラマとして放送(作品上はこの回が令和期の初放送である)。また、11月24日、12月1日にもスペシャルドラマとして放送(新シリーズ開始や劇場版公開などの連動要素のない単純な2週連続で編成が組まれた珍しい例)されている。
そして2年後にあたる2021年1月から第6シリーズが同枠で放送されており、連続ドラマとしてはこの第6シリーズが令和最初の放送となっている。
2022年7月から第7シリーズが放送予定。それが木曜ミステリー枠最後の作品となる。
登場人物
- 糸村聡
演:上川隆也
主人公。階級は警部補。
第1シリーズでは警視庁刑事部捜査第1課第1強行犯捜査部門科学捜査係主任だったが、ある事件を解決する上での単独行動を理由に左遷され、第2~第3シリーズでは警視庁月島中央警察署刑事課主任となり、第4シリーズからは京都府警捜査一課特別捜査対策室所属となる。
「遺留品には死者の想いが宿っている」と公言するほど遺留品に対して並々ならぬこだわりを持ち、独自の視点から事件の真相に近づく。
非常にマイペースな性格で、糸村本人には全く悪気は無いのだが生きている人間には無神経な行為が多く、空気どころか態度に出している感情が読めない部分があり、同僚への配慮が足らない迷惑な行動をとったり、時に被害者家族に対してもやや無神経な聴取で悲しませることもしばしば。
しかし、遺留品や死者に対しては真摯に向き合い、そこに託された真相の解明のためならば上司の命令を無視することも辞さない。
遺留品から事件関係者達の心の機微を解き明かし、事件関係者に「3分だけ時間を下さい」(とは言うものの、明らかに「3分」で済みそうにない場合でも同じように頼んでおり、家に上がり込んでレトルトではないビーフシチューを作ったり、登場人物に3分で終わってないことを指摘された事もある)と頼み、容疑者が犯行に至った細かな動機や被害者の最期の思いを伝えて、その心残りを解消することで彼らを救済していく。
事件解決に暗躍する役どころではあるが、捜査上はあくまでも遺留品から真相に繋がるヒントを見つけ出すのが仕事であり、直接犯人と対峙することは少なく、実際に犯人を追い詰めて逮捕するのは主に仲間の刑事たちの役割となっている。
中には事件とは直接関係の無い遺留品がテーマとなることもあり、糸村は犯人捜査自体にはほぼノータッチというエピソードも多い。
- 村木繁
演:甲本雅裕
警視庁科学捜査研究所係官。
糸村から依頼されて遺留品の科学鑑定を行っているが、他の仕事がどんなに立て込んでいても関係なく平然と別の鑑定を依頼してくる彼に振り回される苦労人。
たまに反撃することがあるが、交換条件を出されて上手く丸め込まれて結局鑑定を任されている。
糸村とはほぼ腐れ縁の仲にあり、第4シリーズからは警視庁と京都府警との人事交流により、府警の科捜研に赴任し、同じく京都府警へ異動になった糸村と再会するハメになる。
第5シリーズでは意中の女性が京都にいるらしいことを匂わせ、周りからもイジられるが、その相手はなんと驚くべき人物で…。