概要
旧来、警察予備隊や保安隊では米軍から供与されていた装備品が使用されていた。
しかしながら被服や弾嚢などの布製品は訓練や課業による消耗が激しく、国産化が急務となった。
警察予備隊時代から、一般隊員向けには米軍のM43戦闘服を参考にした作業服が、特車乗員には旧日本軍の戦車服に似た被服が製造・支給されていたが、より効率的に活動でき、かつ多種多様であった作業用被服を減らして効率的に生産できるよう製作された。(とされている)
迷彩服1型(旧迷彩服)が支給されてからは徐々に一線を退き、専ら普段の訓練や演習本番前の「予行」、軽作業、新隊員や防衛大学生・少年工科学校生徒・予備自衛官の訓練や、訓練や演習の対抗部隊の被服として使用されていた。迷彩服2型や迷彩作業服が登場してからは『裏方仕事』も中古の迷彩服と置き換わり徐々に姿を消しつつある。
構成
一般用と裁断が異なる空挺用が存在する。空挺用は一般用の登場以前から同様の構成の服が存在した様子。
材質はモスグリーン単色の綿・ビニロン混紡で、厚みがある生地でできており、縫製は丁寧でとにかく丈夫な被服として品質面では好評であった。一方で支給回数は少なく、購買で同等品を私物として購入してやりくりする隊員や何度も修繕して使用する隊員が多かった。
また、「磨いた半長靴で顔を映して、プレスしたズボンで髭を剃れ」という凄まじい金言に代表されるように小まめにアイロン掛けを行って威容保持に努めることが推奨された。
製造は民間の被服縫製工場、紡績工場のほか、日本各地の縫製施設がある刑務所、少年院でも製造された(そのため同じデザインでも若干の差異がある)。
上衣
一般用と空挺用の上衣はズボンにたくし込むシャツタイプ。
前あわせはジッパーで、官給品や一部のPX品には桜の刻印が入る。
左右胸部に雨蓋付きの貼りポケットが付く。
肩にはエポレットがあるが階級章の取り付けには使用せずに、サスペンダーの脱落防止や偽装材の取り付けに用いられる。
襟は折り襟で、立て襟の状態で固定できるボタンがある。
また、腋は蒸れを軽減するために2cmほどの切れ目がある。
空挺用
空挺用は全体的に細身で肩にペン刺しが付く。また、袖のボタンはスナップボタンに変更されているほか、一般用のデザインとほぼ同じに見えるが肩と袖の裁断が異なる。つまり型紙の殆どが違うため一般用とは「ぱっと見以外全部」違う。
着用するとかなりタイトであるうえ、一般用と違って身体にあわせた凝った裁断であるため、やもすれば野暮ったく見える一般用と違って空挺用はかなり精強な印象となる。
一般用、空挺用共に厚手の生地である上に上衣をたくし込むデザインのため夏場は蒸れて大変不快であったという。
下衣
一般用は大腿部横に大型のカーゴポケットが左右合計で2箇所あるのみである。
前あわせはボタンである。
全体的なデザインは旧来のM43タイプのズボンから大きな変化は無いが、凝った前あわせは簡略化されてより直線的な裁断となり生産性や歩留まりは向上したものと思われる。
空挺用
空挺用は腰ポケットとカーゴポケットがそれぞれ左右2箇所、計4ポケットである。
これも空挺用上衣と同じく全体的に細身の裁断で、カーゴポケットの雨蓋はスナップボタンである。
ベルトは作業服と友布で調整具が2個付いた独特のものが支給される。
また、航空自衛隊では帯電防止加工が施された概ね同様のデザインの物が「68式作業服」として採用された。
迷彩服1型(旧迷彩、熊笹迷彩)
迷彩服1型は上衣、下衣とも、この作業服と同じ裁断である。
官給品のベルトと後述の作業帽は迷彩柄では無く、作業服のものを使用した。
但し、ベルト・作業帽共々迷彩生地のPX品が販売されていたため、これを用いる隊員も多かったそうである。
作業帽
円柱型の丸天帽で、全体的なデザインはケピ帽に似ている。
天頂部にピアノ線を入れて形を整えることが推奨されているが、空挺団や航空部隊など航空機にかかわる部隊では禁止されている。代わりに旧日本軍の戦闘帽のようなあごひもが縫い付けられている。
階級章 き章
布製のき章を着用する。
階級章は三等陸士から陸士長までは右袖の肩から100mmの場所に、三等陸曹から上の階級の者は両襟に布製の略章を縫い付ける。略章は1980年代半ばまで緑地に白の刺繍(或いは織り出し)のもの、それ以降は隠密性を重視した黒刺繍のものが用いられた。
各き章も白や金、銀といった派手な色の刺繍を取りやめて黒刺繍ないし茶色となり、名札も白布から緑地へと変更された。
とはいえ、階級章はともかくき章の場合、ベテラン隊員は迷彩効果が高い新式のものが制式となっても旧制式のものを好んで縫い付ける隊員が多かった。
特に、緑地に白ないし銀の刺繍の空挺き章や、黒地に白ないし銀の刺繍のレンジャーき章は、より迷彩効果が高い迷彩服2型登場後も旧制式のものが人気であった。
作業外被
悪天候時や寒冷期に使用する作業外被(オーバージャケット)が支給された。
官給品は、オリーブ色単色である。
1969年から使用されているものは、綿と麻の混紡生地で前合わせがボタン留め、ポケットは胸と腰に左右それぞれ2箇所の合計4箇所。腰部分に絞り紐が付く。
後に、化学繊維製の生地を使用して前合わせをジッパーとしたものが登場し、近年まで使用されていた。
余談
- 生地に用いられていたビニロンは丈夫でナイロンより熱に強く、アイロン掛けを上手に行うとワイシャツのように仕上がるため、独特な作業服であった。しかしながら、ビニロンは染色が難しいため色落ちが激しく、支給されたときには目も覚めるほど濃い緑色であっても、廃品寸前となると薄い青灰色に近い色となることもあった。また、洗濯で縮みやすい生地で、「新品を洗ったら1号(ワンサイズ)縮んだ」という笑い話も残っていたほど。
- 「上衣をたくしこむ」という着用法が災いし、匍匐を行うとズボンの中が泥だらけになった為不評であった。しかしながら、上衣の裾はシャツ形に裁断されていたので、ジャケットのように着用することは不可能であった。