概要
進撃の巨人69話は、読者に多大な衝撃を与える内容であった。
一言で表現するならばケニー・アッカーマンの半生、となるだろう。
ケニーがレイス家に従うきっかけとその後の行動、レイス家のウーリとの出会いと別れが明らかとなった。
これだけでも衝撃の内容だったが、特に読者の関心を惹きつけたのは彼とリヴァイの過去についてだった。
ケニーは売春により病気になったという妹のクシェルの元へ向かう。しかし、彼女は既に事切れていた。
部屋の端を見ると、そこには痩せこけた少年がうずくまっていた。
ただのリヴァイと名乗る愛想のない死にかけの子供。
ケニーは妹が唯一残した忘れ形見である彼が一人でも地下街で生きていけるように、ナイフの握り方や挨拶の仕方などを教えた。反面、自分が親代わりになることに対しては、自分にそんな資格がないことを感じていた。
だからこそ幼いリヴァイが1人で大人のゴロツキを倒したところを見たケニーは、彼の元から去っていった。リヴァイも離れ行く彼の後ろ姿をただ見つめていた。
ケニーの回想ののち、場面は現実へ。
重傷を追い、木にもたれかかっているケニーをリヴァイとその部下が発見する。
部下を報告へ向かわせた後、リヴァイはケニーに話かける。
するとケニーは最後の悪あがきと言うように、ロッドから盗んだ巨人になる薬の入り注射の入った小箱を出す。
だがリヴァイは自分に見つかる以前に注射を打つ時間も体力もあったはずであると指摘し、なぜそうしなかったのかを尋ねた。
自分でもよくわからなかったといいつつも、彼は過去を振り返り、こう語った。
「みんな何かに酔っ払ってねぇと やってらんなかったんだな…」
血を吐くケニーにリヴァイは初代王の目論見を聞くが、ケニーには分からなかった。
頬にケニーの血を浴びつつ、リヴァイはケニーと自分の母親の関係について問いただす。
「ハッ バカが…ただの…兄貴だ…」
「あの時…何で…俺から去っていった?」
「俺は…人の…親には なれねえよ…」
小箱を甥の胸に預けるように強く叩きつけ、敵であり自身の誇りであったその甥に看取られながら"切り裂きケニー"ことケニー・アッカーマンは、その波瀾万丈な生涯を終えた。
その後、故・リーブズ会長の「女王になった暁には、リヴァイをぶん殴って『殴り返してみろ』と言え」という遺言を、巨人となった父王を倒し正式に女王となったヒストリアがついに実行する。
戦々恐々としつつも勇気を出してリヴァイの肩を殴るヒストリア。
無事成功したことに顔をひきつらせつつガッツポーズをする彼女と、歓喜の声をあげつつ見守ったエレンたち104期生。
「ふふ… お前ら、ありがとうな」
仏頂面の人類最強はその時、初めて優しい笑みを浮かべた。