概要
43話ショックとは、仮面ライダーセイバーのテレビ本編第43話(正式には第43章)「激突、存在する価値。」における一連の展開。及び、その内容が視聴者に与えた強烈な印象や衝撃を指す。
この話、デザストと緋道蓮の二人の関係に決着をつけたいわゆるデザ蓮回とでも言うべきものだが、実は、この二人は物語の本筋においては全く関りがなく、物語においてはどちらかという不必要な話である。
しかし、その点も含めて非常に大きな印象と余韻を与える神回であり、余りの作品としてのクオリティの高さから最終回の様だと称された。
詳細
以下、主にデザストと蓮の二人の関係について記述する
ストリウスが世界を滅ぼし得る大きな力を手に入れたその裏では、カリュブディスメギドとの戦いで負った傷により、デザストは傷がなかなか再生せず徐々に死に瀕していた。
そんなデザストの状況を察した蓮は、デザストにあえて戦いを挑む。
「お前を倒して、俺は先に進む」
剣士とメギドと言う身でありながら、はぐれ者同士でつるんでいた二人の関係に決着をつけることにした蓮に、デザストも応じる。
蓮は剣斬に変身し斬りかかるが、かつて戦った時と違い今度はデザストが蓮を圧倒する。
真の実力を見せるデザストに、剣斬はブレイズの戦い方を真似て反撃するが、そんな剣斬にデザストの怒りが爆発する。
「そうじゃねえだろう!」
デザストの強烈な一撃に剣斬は変身を解除。ついに蓮は追い詰められる。
目の前に迫る死に、悲鳴をあげながら逃げる蓮。
そんな蓮に、止めの一撃を振り下ろすデザスト。
その時は、蓮の脳裏にはかつてデザストからかけられた「強さの果てを見たくないか?」という言葉が蘇り、再び闘志を取り戻す。
「俺は見てみたい…このままじゃ終われない」
その言葉と共に、再び剣斬に変身した蓮。そして、今までお前としか呼んでこなかったデザストに宣言する。
「お前じゃない!俺は……緋道蓮だ!」
「俺はデザストだ!」
そしてつい、蓮の一撃がデザストを直撃した。
傷が再生せず苦しむデザストに一瞬怯む剣斬だったが、なおも斬りかかるデザストの思いを受け止め決意を口にする。
「俺の全存在を賭けて……、お前を倒す」
そう言う蓮に、デザストは笑いながら語り掛けた。
「お前になんか、声をかけるんじゃなかったぜ」
そう言うデザストに、蓮も答える。
「ああ、お前となんか出会わなければよかった」
そして剣斬の渾身の一撃がデザストを貫く。
ついに力尽き、倒れ伏したデザストは、消えゆく中で蓮に語り掛けた。
「お前は……、そのままでいいんだよ……。それとな、紅ショウガ、ちゃんと食えよ」
それは以前、共にカップラーメンを食べながらかけられた言葉。
デザストとの、確かな思い出の言葉。
それを受けて、蓮も答える。
「マジ……、ないわ……」
蓮のその言葉を聞きながら、デザストは自身のアルターライドブックとスカーフ、そして無銘剣虚無を残して消えた。
ヒビ割れたデザストのブックを拾い上げた蓮は、消えたデザストに語りかけるようにつぶやいた。
「……楽しかったよ、ありがとう」
そして蓮は、デザストが最期に使っていた無銘剣虚無と共に、昼下がりの公園で紅しょうがを入れたカップラーメンを食した。
評価
基本的に、『仮面ライダーセイバー』と言う作品は、話によってクオリティの差が非常に大きい。
しかし、第43話は主に上記にまとめたように、デザストと蓮の関係を中心に、そんな過去話とは比較にならないほどに神回であるとして、非常に多くの好評を得た。
特に非常に好評を得たのが、ストーリー面でのキャラクターの扱いと、映像面での演出の美しさ。
CGに頼らず、逆光や影を利用した迫力のあるアクションシーンと、二人の心情を表すために差し挟まれた何気ない風景のシーン。
これらの映像表現は純粋に美しいだけでなく、BGMに使われた切ないメロディのオリジナルソング、更に、最後のカップラーメンを食す蓮の様子も相まって、非常にきれいなシーンとなっている。
また、キャラクターの扱いに関しては、メタ的な扱いを本作のストーリーに上手く落とし込んだ内容となっており、この点に関しても多くの視聴者から好意的に評価されている。
元々、デザストと蓮の二人は、その関係性そのものを楽しむファンも多い反面、二人して共に主人公とは最低限のつながりしか存在しない為、物語の本筋に関わることが無く、多くの視聴者からいらないキャラクターだと指摘されていた。
そんな中、デザストと蓮の変化を掘り下げる為に、数話前から白黒の色調を使った映像を利用したシーンを差し挟み、デザストの心情を映像的に描写するなどして、デザストのキャラクター性を掘り下げ、更にデザストが蓮を自分と同一視している描写を入れることで、二人の関係性も描いていた。
その上で、デザストの創造主であるストリウスがどうでもいい存在、不必要な存在であると明言することで、仮面ライダーセイバーの世界観においてもデザストと蓮の存在自体が不必要であるということを視聴者に印象付けている。
そんな中、二人は決着をつけたことで、互いにとって必要な存在であったことを印象付けた43話のストーリー構成は多くの視聴者の感動を呼んだ。
この関係性は全体的なストーリー構成にも落とし込まれており、実際、この43話ではデザストと蓮の決着と並行して、ストリウスが世界を滅ぼすだけの力を手に入れ、それを神代兄妹と神山飛羽真が止める為に共闘するという世界の命運を左右する重要な出来事が起きている。
しかし、この二人は物語の本筋に関わることもなく、ただ個人的な因縁の決着をつける為に怪人とライダーが戦うという展開でしか登場しておらず、メタ的に見ればその点に関しても描く必要のない物語であるように見える。
だが、既に述べられた通り、デザストと蓮は世界にとっては不必要であっても、互いにとっては必要な存在であったという強いテーマを持って描かれている。
この世界の命運を左右する出来事の裏で、個人的な決着をつける二人と言う対比構造は、このデザストと蓮のテーマをより際立たせる構成となっており、物語全体で見ても非常に美しい流れとなっている。
余談
蓮とデザストの決着の際に流れたwill_save_usは、この回の為に書き下ろされたオリジナルソングであり、その歌手は須藤芽依役の川津明日香氏である。
ただ、翌週がゼンカイジャーとのコラボでツーカイザー/ゾックスが登場するため予告で「ヨホホーイ!」と登場したゾックスにより急激な温度差が生じ、視聴者からは「ゾックスに全部持ってかれた」「感動を返せ」などの声が相次いだ。さすが界賊。
関連タグ
アンク 城光 タロスズ:過去の仮面ライダーにおける似たような立ち位置の怪人達。
ベイル:次回作の怪人で、こちらは宿主(彼的にはこっち)との十数年越しの因縁に決着をつけた。
最終的に彼は宿主の体に回帰するも、互いに許し合うような素振りを見せた。
43話ショック同様切ない感じの挿入歌が流れ(しかも宿主とベイルの過去を描いた外伝作品の主題歌をソロアレンジしたものである)、因縁の怪人と決着をつけるという展開に43話ショックを思い出した視聴者もおり、「デザストといい因縁の怪人と決着をつける展開ってどうしてこう素晴らしいんだ(要約)」との声もあった。
『しょっぺえ』
このしょっぱさはきっと、紅しょうがだけじゃないだろう…。