概要
ATACMS(エイタクムスまたはアターカムズ)、正式名称MGM-140 ATACMSとは、アメリカ合衆国で開発された大型の地上発射型対地ミサイルである。その射程の長さもあり、事実上の短距離弾道ミサイルとしても扱われることがある。
アメリカ陸軍のMLRSやHIMARSの227mmロケット弾用6連装ランチャーに、1発が丸ごと装填される口径24インチ(約610mm)の大型ミサイルで、MLRSであれば本来ロケット弾12発を装填するところに2発、HIMARSであれば本来6発を搭載するところに1発を搭載する。発射コンテナそのものは通常の227mmロケット弾と同じ外見に偽装されている。
実戦デビューは1991年の湾岸戦争で、射程140km超の初期型「ブロックI」が投入され、アメリカ空軍のE-8ジョイントスターズ対地AWACSなどから受け取った敵配置情報をもとに、遙か遠方のイラク軍陣地を吹き飛ばした。ウクライナ侵攻でもアメリカからウクライナへと供与されたものがロシア側に対して使用されている。
バリエーション
- ブロックI:初期型。人員や施設を標的にしており、重量561kgの弾頭に950発もの自由落下式の子爆弾が内蔵されている。射程は140km超。
- ブロックIA:ブロックIの射程延伸型。軽量化により射程を300km超まで延長し、加えてGPS誘導により軌道修正の機能が追加されている。軽量化のため子爆弾の数は310発まで減らされている。後に保管寿命延長も兼ね、弾頭重量約230kgになる半徹甲式の単弾頭へと変更された。
- ブロックⅡ:移動中の戦車や装甲車などを標的とするタイプ。車両攻撃のため、子爆弾を対装甲誘導弾13発へと変更している。
- ブロックⅡA:ブロックⅡの射程延伸及び改良型。射程を300km超に延長し、弾頭の対装甲誘導弾は6発に減らしつつも改良型へと更新している。
- ブロックⅢ:地中侵徹弾頭型。開発中とされる。