概要
IT土方(アイティーどかた)は、プログラマーに対する蔑称(スラング)である。デジタル土方ともいう。
IT業界、特にSIer(システムインテグレーター)は大手を中心とした序列になっており、一次請けから二次受け三次受けと仕事が次々と丸投げされる。特に大規模な商用プログラムを開発するときは、大人数で開発を行うことになる。営業がとってきた仕事を、システムエンジニアなどが要件定義、細分化し、末端のプログラマーが実際のコードを書く。
プログラマーというとIT産業の主役でホワイトカラーの象徴のようなイメージがあるかもしれないが、2000年頃から末端のプログラマーは上から降ってきた要件をひたすらプログラムコードに実装するだけのブルーカラー・肉体労働者と化してしまっていることが珍しくない。先端技術を手に明日に向かって進み続けるプログラマーを夢見る若者達には辛い現実であった。
この構造がゼネコン業界と酷似しており、デスマーチや鬱といった肉体的にだけでなく精神的にも過酷な状況に置かれているプログラマーが多いため、このような状況を揶揄してやや自虐的に、一見ITと縁がなさそうな「土方」という単語を組み合わせてIT土方と呼ぶ。
こうなった原因として、1990年後半頃からの規制緩和とデジタル革命により仕事量が膨大化したが、不況により設備投資を安く抑えたい企業と「目に見えない資産」と称されるプログラムを軽視したITに疎い管理サイド、さらに派遣業の緩和で手あたり次第人材をかき集めるものの適材適所を度外視して経歴を捏造までした営業サイドによって人材が使い捨て状態と化した。特に携帯電話(ガラケー)開発は悲惨と言われ、販売単価が1円(携帯キャリアから支援金は出ていたが雀の涙程度)ではあるが差別化のため使わない機能を多く追加した新製品を3ヶ月周期で頻発化したことから開発費をギリギリまで抑えながらも膨大な開発量を3ヶ月納期でこなさなければいけなかったことから「24時間365日デスマーチ」「サビ残だらけで最低賃金割れ当たり前」と言われていた。また携帯電話の開発拠点や製造会社を忌み嫌うものが今でも残っており、「横須賀リサーチバーク(YRP)はIT界のアウシュビッツ」「新川崎はIT界の巣鴨プリズン」と揶揄されたりF、N、S、K、H、T、Iと頭文字を使ってネットで開発環境を語る者も少なくない。
IT土方が活況だった頃は丁度氷河期世代の頃で「仕事があるだけマシ」ということでこの惨状でも応募が殺到したが、ゆとり世代以降はこの噂を忌み嫌ってITを避けるようになり、2010年頃になると団塊世代の大量定年退職によって技術者が減り、さらに海外企業が単価の安いIT土方を高額で雇用し始めたことから人ああまりどころか人手不足に陥っている。そのため一部では技術者の待遇改善を図っているところもあるが、守旧的なところは今でも土方扱いしている。
その他
IT土方(どかた)をIT土方(ひじかた)と読むと世間の見方も変わるのではという少数説があるが、普及はしていない。