概要
人間を苗床に繁殖する種族「殖魔(サキュバス)」と人類との戦いを描く物語。2022年9月12日刊の週刊ヤングマガジン41号より連載中。2024年5月現在、単行本が6巻出ている。
作者は渡嘉敷拓馬。ハリウッド映画のCGアーティストという異色の経歴の持ち主。
世界観・用語
- 殖魔(サキュバス)
人間を繭のようなものでくるみ、自身の卵を植え付ける事で「苗床」に変える事で存続してきた種族。同族を「苗床」化することも不可能ではないが、そちらは禁忌とされる。
見た目はヒトと変わらないが、苗床内の幼生の段階ではシワシワの質感に大きく鋭角的な目といった異質さが目立つ。
サキュバスという呼称ながら男型と女型両方が存在し、同族間には「父」や「兄弟」といった性別にかかわる関係性も存在する。
しかしながら生物的な違いは見た目上に限られ、男型も女型もその生殖能力と生殖方法は同一・同質である。
通常の人間を遙かに超える再生能力と脳を破壊しない限り失われない強靱な再生能力を持ち、加えて後述の「派閥」によって異なる特殊能力も備える。
古くは人間を誘惑する事で苗床を確保していたが、現代では大規模な専用施設で多数の人間を確保したりしている。
苗床にされた人間を助ける事は不可能で、その生態から人類から目の敵にされている。
- 殖魔の派閥
「血」「骨」「肉」「脂」の四つの派閥があり、例えば「肉の派閥」は筋肉の肥大化・超強化、「骨の派閥」は骨格の変容といった固有の特性を持つ。
複数の派閥の能力を有した「混合殖魔(ミックスサキュバス)」も存在する。
このうち「血の派閥」は組織としては壊滅している。
人間側からは個体ごとの脅威度によってSからDまでのcat(カテゴリー)に分けられている。
- 公安殖魔対策局(マルサ)
殖魔(サキュバス)を狩る人間側の組織。「血の派閥」を掃滅に成功しており、その旧支配地域に本部を建設している。
「血の派閥」の殖魔の能力を解析し、人間が扱えるようにした「血戦術」を使用する。
しかし殖魔の超再生能力は際限できず、その任務は死と隣り合わせ。生還しても身体の欠損により引退する局員もいる。
- 血戦術
自身の血を媒介に、武具などを現出させる術。マルサ局長・阿光アマネによって編み出され、彼女はそれぞれの技の命名者ともなっている。
戦闘の流れにおける役割や性質によって「序・破・急・終」に分類されている。作者によると執筆当時に見ていた映画の影響とのこと(ツイート)。
登場人物
- ニト
本作の主人公。「肉の派閥」の肝いりで築かれた病院のような施設にいた。この施設は四派閥の殖魔の生殖に適した体質の人間を飼育する苗床農場とも言える場であった。
彼の四人の友人はそれぞれ筋肉検査、血液検査、骨検査、脂肪検査でトップを飾る逸材であり、施設の殖魔によって彼等彼女等と四派閥の仔が一つの繭にまとめる試みがなされた。
「病院」の正体を知ったニトはこの繭に飛び込み、その全てと融合し、人間とも殖魔ともつかない存在へと変貌する。
その後マルサ側についた「血の派閥」の殖魔ヒイロに拾われ、外界の人間達や殖魔達と関わりながらも、自分自身と四人の仲間から託された沢山の夢を少しずつ叶えていこうとする。
施設時代から見返りを求めず他者を思いやれる善性の持ち主だったが、施設脱走後は殖魔の仔の生死をも案じる一面を見せている。
- ヒイロ
「血の派閥」の殖魔(サキュバス)だが、人間側につき、公安殖魔対策局のメンバーとして同族と戦っている。
ニトがいた施設に新人看護師に扮して潜入し、ニトの友ムサシに外界のギネスブックを差し入れ「病院」の異常性に気付く切っ掛けを与えた。
殖魔と人間の共存を目指すが、その条件に生殖を封じる「断種」が含まれる事から旧友である殖魔から魂を売ったと言われてしまう。
- 阿光アマネ
公安殖魔対策局(マルサ)局長で血戦術の考案者。殖魔を処刑する任務よりも食堂で料理をするほうが好きだと語り、新人局員から食堂の人と勘違いされる事もある。
おっとりとした物腰だが、任務の実現の為には手段を選ばない。使えるものはなんでも使うというラストエリクサー症候群とは真逆の精神性をもって、イレギュラーの塊であるニトを局に受け入れる決断をなす。
制作の背景
作者は高等専門学校卒業後にレベルファイブに入社し、『イナズマイレブンGO2 クロノ・ストーン ネップウ/ライメイ』、初代『妖怪ウォッチ』の制作に関わる。
仕事後に書いていた漫画『カンブリア』を講談社に持ち込み、月刊少年マガジン増刊「マガジン・プラス」の2013年2月号、月刊少年マガジン2013年11月号で読み切りが掲載された。『カンブリア』時代の名義は「渡嘉敷拓」。
連載が決まったのを契機に退社するも、始動に時間がかかり2016年2月より月刊少年マガジンRで連載された(全三巻)。
この作品は一巻時点で打ち切りが決まってしまう(ZBrushと出会ったマンガ家がCG業界に戻り、ハリウッド映画制作を目指す理由)。
連載終了までの時間で余裕が出来た事からフリーでCGアーティストとして活動。
カナダのバンクーバーに移り、有名なハリウッド映画にも関わった。彼が手がける3DCGは分業化が進み、モデラーとして関わる事が出来るのは作品の一部。
そのなかで作品の全てに関わり、創造したいという想いが募り、それが可能な漫画家になりたいと考えるようになった(フランスの出版社が青田買い?ハリウッドCGアーティストが描く、異色のダークヒーローバトル!)。
『LILI-MEN』では海外で重視される「解剖学的に正確なキャラクターデザイン」という方向性が盛り込まれ、漫画制作では背景に用いられる事が多いCGをキャラ描写でも活用している。