曖昧さ回避
車のヴェノム
ヴェノムとは、アメリカのチューニングメーカー「ヘネシーパフォーマンス」が独自にリリースするコンプリートカーのシリーズ名である。ここではその代名詞とも言える「GT」、その後継にあたる「F5」(メイン画像の車)について掘り下げる。
未知の可能性を秘める概要
ヴェノム(Venom)シリーズはアメリカのチューニングメーカー「ヘネシー」(フルネーム:ヘネシーパフォーマンス、Hennessey Performance)がリリースする、極限のスピードを求めたハイパフォーマンスブランドである(そもそもヘネシーの理念が「信頼性の高い最もパワフルなクルマを造る」である事には留意)。
2021年で創立30周年を迎えたヘネシーというブランドは、ハイパーカーの世界においてはまだまだ新しく、そして確かに魅力的な存在なのかもしれない。
ここでは、ヴェノムシリーズの最高峰モデルである「GT」、「F5」について深く掘り下げる。
また、GTとF5の主要諸元も後半にてまとめる。
Venom GT
ロータス エキシージ(Lotus Exige)をベースに開発したモンスターマシン(エリーゼ(Elise)とする説もある)。
静止状態から300km/hまでの加速時間は追い風参考13.18秒、向かい風参考14.18秒を記録し、その平均値である13.63秒が2シーター量産車の世界最速としてギネス世界記録に認定されている。さらに2014年2月14日には、ケネディ宇宙センターにあるNASAシャトル着陸施設の5.2km(オーバーラン地帯含む)の着陸路にて最高速度計測が行われ、ミラー・モータースポーツパークのディレクター、ブライアン・スミスの運転により最高速度435.31km/hを記録した。片方向のみの走行であったことや、ギネスの新たに示す量産車(Production car)の定義である30台の生産を満たしていないことからギネス世界記録には認定されなかったが、ブガッティ ヴェイロン スーパースポーツ(Bugatti Veyron Super Sport)の持つ2シーター量産車の最高速度ギネス記録を事実上破っている。
スペック
エンジンはGM(ゼネラルモーターズ)のLSX 7L V8エンジンをベースにしたものでツインターボを組み合わせる。発表段階の最高出力は1200hp(=1216ps)だったが、後に生産が決まったオープンカー仕様への対応の為の構造変更による重量増に合わせてパワーウエイトレシオ(kg/hp)を維持するために1244hp(=1261ps)まで出力を向上させた。エンジン出力は800hp(=811ps)、1000hp(=1014ps)、1244hp(=1261ps)/6600rpmの3段階に調節が可能でトラクションコントロール(TCS)も搭載。
トランスミッションはリカルド製6速MTとなる。駆動方式はMR。
車高調節式サスペンションにより最大6cmの車高調節が可能。
ボディワーク・エクステリア
ボディはロータス エキシージ(Lotus Exige)をベースに大幅に改良を加えたもので、ロードカーとしての登録はエキシージの改造車扱いとなる。ボディはカーボン樹脂を使用し軽量化を図り、車両重量は1244kgとなる。これにより先程話題が出たパワーウエイトレシオは(単位がkg/hpなら)ピッタリ「1」となる。ブレーキはフロントがブレンボの6ピストンキャリパー、リアが4ピストンキャリパーを使用、サーフェストランスフォームズのカーボンセラミックローターを組み合わせる。フロントスポイラーや可変式リアウィングなどの空力パーツを追加している。
Venom GT Spyder
ヴェノムGTのオープンカー仕様。エアロスミスのボーカリストスティーヴン・タイラーの要望により生産が決定された。2013年モデルで5台が生産予定。
最初の1台はタイラーに贈られた。
Venom GT World Fastest Edition (ワールドファステストエディション)
2013年ギネス認定された0-300km/h記録及び2014年の最高速度記録達成を記念したモデル。 3台限定でアメリカ国旗の色を取り入れたボディカラー仕様となる。
生産
イギリスノーサンプトンシャーシルバーストンの工場にて生産、テストが行われている。エンジンはテキサス州シーリーの工場で作られイギリスに空輸される。GTの購入者にはヘネシーのテストドライバーによる1日の講習が提供され、イギリスかアメリカのサーキットにて受講で出来る。ヘネシーでは販売網をヨーロッパ、中東、ロシア、アジア、オーストラリアまで広げる計画を立てている。 生産は年間10台に限られており、2014年3月時点で11台が納車された。合計29台の限定生産となった。
Venom F5
世界記録を更新したヴェノム GTの後に続くべくヘネシーパフォーマンスが送り込んだ究極のロードカー。そのハンドルはさながら(最近の)F1のそれである。
ヴェノムF5の最高速テストはフロリダ州のNASAスペースシャトル発射施設、「ジョン・F・ケネディ宇宙センター」において行われる予定。
ちなみにヴェノムF5のクーペモデルは24台の限定車で、価格は210万ドル(=3億3000万円程)からという設定だったが、既ににその全車は完売している。ロードスターモデルは30台程の生産を予定しているとの事。
車名の「F5」は、竜巻の強さを表す世界基準ともいえる「藤田スケール」における最大クラス。いかにもヴェノム GTの後継車として誕生し、最高速で500km/hを狙うモデルの名としては相応しいネーミングである。
なお、2022年にはレッドドットデザイン賞(デザインに関する賞だと思ってもらえればOK)を受賞している。
スペック
リアミッドに搭載されるエンジンは、「Fury(フューリー)」という愛称が付けられた6.6L V8ツインターボエンジン。
驚異的なのはその重量で、鋳鉄製のブロックやアルミニウム製のヘッド、エンジン内部の構成部品にはアルミニウムやチタン、インコネルなどの軽量素材が用いられている。結果的にエンジン重量は280kgとかなりの軽さを実現した。
最高出力は1792hp(=1817ps)。
車重は1338kg(後述参照)であり、この数値はおなじく世界記録を争ったスウェーデンの自動車メーカー「ケーニグセグ」がリリースしたメガ・カー、「One:1」のそれを下回る。
パワーウエイトレシオは後述の主要諸元参照。
ミッションは自社製7速ロボタイズドMT(パドルシフトによる操作が可能)。駆動方式はMR。
サスペンションはヴェノム GTの様に最大7cmで上下可能。80km/h以上の速度を出すと自動で車高が下がる仕様となっている。
ボディワーク・エクステリア
ドライバーが座る事になる空間-モノコックは、ヘネシーオリジナルのカーボンモノコック(86kg)が使用されており、ボディにも同様にカーボンが使用されている。車重はGTよりも若干増加して1338kg(ヘネシーパフォーマンス公式より)という数字になった。
ヘネシーはこのスペックで、0~100km/h加速で3秒以内、0~200km/h加速では5秒以内のタイムを実現。そして最終的な最高速は、ヴェノムGTでのギネス記録挑戦の時がそうであったように、双方向走行の平均記録で500km/hオーバーを狙うという。
ドライバーは、レーシングドライバーとして数々の栄誉に輝き、GMのテストドライバーとしてのキャリアも持つジョン・ハインリシー。彼は、これまでヴェノム F5のドライビング・ダイナミクスを最適化するためのテストドライバーとして、ヘネシーとともにF5の開発に携わってきた。最高速500km/hへの挑戦は、まさにその集大成とも言えるべきものでもあるのだろう。
なお、個体によってリアウイングの構造が異なったり、リアバンパーのデザインも異なっていたりする。
この動画に登場するF5はプロトタイプなのだが、それでこの様子なので製品版はとんでもない事になっている事は想像に難くない。
主要諸元
GT | F5 | |
エンジン | GM製LSX 7L V8ツインターボ | 自社製"Fury" 6.6L V8ツインターボ |
最高出力 | 1244hp(=1261ps) | 1792hp(=1817ps) |
最大トルク | (不明) | 1617Nm |
燃料タンク容量 | (不明) | 90L |
トランスミッション | リカルド製6速MT | 自社製7速ロボタイズドMT |
ブレーキキャリパー(前) | ブレンボ製 6ピストン | ブレンボ製 6ポッド |
ブレーキキャリパー(後) | ブレンボ製 4ピストン | ブレンボ製 4ポッド |
ブレーキディスク | (不明) | カーボンセラミック 390mm |
ホイールサイズ(前) | (不明) | 19インチ |
ホイールサイズ(後) | (不明) | 20インチ |
サスペンション(前) | (不明) | ダブルウィッシュボーン |
サスペンション(後) | (不明) | ダブルウィッシュボーン |
車重 | 1244kg | 1338kg(個体差有り) |
最高速度 | 435km/h | 438km/h(理論値:538km/h) |
GTの最高速度はWolrld Fastest Editionのもの。