概要
1992年の山形新幹線開通に伴い登場した事業用車。同じく事業用車のクモヤ143-3を改造する形で落成した車両である。
そして、新幹線区間を自力走行可能な『電気機関車』にして、れっきとした『新幹線車両』でもある。
この車両が導入された理由は、「検査が必要な山形線の車両を検査できる基地まで運ぶこと」。
山形線(山形新幹線)区間の普通列車用として導入された719系5000番台は標準軌(1435mm)対応のため、車両検査を仙台総合車両所(現:新幹線総合車両センター、宮城県利府町に存在)で行うことが検討されていた。しかしそのためには福島駅から同車両所までの新幹線区間を通らねばならず、新幹線用の保安装置の搭載や新幹線区間の電圧(25kV、在来線用は20kV)への対応が難しい同形式単独では、この区間を走ることが不可能だった。
そのため、その新幹線区間で719系を牽引できる車両として、本形式が改造という形で誕生したのである。
改造内容は
- 車体色を変更
- 電気回路を交流50Hz20/25kVの両方に対応できるよう変更し、719系との併結に対応する制御系統に取り替え
- 山形新幹線区間用のATS-Pと東北新幹線用のATCを搭載
- 東北新幹線用列車無線アンテナを搭載
- スカートの取替
- タイフォンカバーを耐雪タイプに交換
- 719系との併結に対応する電気連結器の設置
- 標準軌用のボルスタレス台車に履き替え
など。
改造は郡山工場で行い、改造完了後に仙台総合車両所へ回送。ここを拠点に加圧試験や新幹線区間での試運転などを実施し、実際に719系を連結して山形から仙台までの試験走行も行った。
そのままその運用が実現していれば、「在来線車両が新幹線高架を走り、その横を営業運転中の新幹線車両が駆け抜ける」などといった光景が見られたかもしれない。
しかし719系の定期検査は結局仙台では行われず、車体を山形で、台車やパンタグラフを郡山でそれぞれ行うこととなった(ちなみに、山形新幹線新庄延伸の際、普通列車用として719系が増備されることはなく、代わりに701系5500番台が新たに導入されている)。
結果、本形式が東北新幹線区間を実運用で走行することはなく、山形車両区内の構内入換、および山形線内における秋季の落ち葉掃き、冬期の架線霜取り列車などの運用に限られた。
その後、落ち葉掃きなどの運用について専用の装備を装着すれば旅客車両でもできるようになったことや、老朽化が進行したことなどから、本形式は2014年に廃車された。
なお、廃車に先立って仙台へ送られているが、その際も「福島から山形へ自力回送されたうえで、山形からトレーラーで仙台まで陸送される」という形で移動しており、「在来線用事業用車にして新幹線用機関車」という唯一無二の特色が活かされることは最後までなかった。
なお、登場時の趣味誌各紙のレビューでは、(一見して種車が明らかにわかる外観にもかかわらず)なぜか「新造」として紹介された。JRから配布されたプレスリリースに誤植があったのか、もしくは財産上の処理で一旦除籍の上新造扱いであったのかは不明。