太后
たいこう
太后(キングダム)
CV:坪井木の実
嬴政(=秦の始皇帝)の生母。秦国内でも絶大な権力を持つ後宮の主であり、その影響も計り知れない。歳を重ねて尚衰えない容色を誇り、その美しさたるや『男根を失った宦官が欲情する』とまで評される。後述の過去にも纏わる息子・政への情は全く無く、呂不韋と並ぶ政敵として彼の前に立ちはだかる。
来歴
元は趙国王都でも評判の一流舞姫であり、清純な美貌と可憐な振る舞いから『邯鄲の宝石』と賞賛され、美姫の愛称で慕われた。
呂不韋に見初められて彼と婚約し、行く行くは彼の妻となる未来を疑っていなかった美姫だったが、呂不韋は自身の立身の為に彼女を政の父・荘襄王(当時は即位前で、名を子楚と言った。が、混乱防止のため荘襄王で統一する)に献上する。
更に長平の戦いにより趙国内では秦への憎悪が高まっており、身の危険を感じた荘襄王は呂不韋の手引きにより早々に邯鄲を脱出。しかし彼女と息子・政は逃げ遅れ、そのまま置き去りにされてしまう。敵国・秦の王子を産んだ女を周囲が許す筈も無く、政は様々な暴行を受け、美姫も半ば娼婦紛いの生活を余儀なくされる等、惨めで屈辱的な日々を過ごす。彼女は自身が転落したのは政を産んだせいと考え、彼を憎悪するようになった。昌文君いわく、「あの二人の間には闇しかない」とのこと。
(更に言えば、自分が未だ過去に囚われているのに対し、同じ苦しみを味わったはずの政が王として気高く振る舞い前向きに生きていることも癇に障っていたと思われる)
後に嬴政は荘襄王の即位により王位継承権が巡ったことで邯鄲から脱出し、太后も経緯は明かされていない(呂不韋が手引きしたのかさえ不明)が脱出できている。
政は呂不韋との権力争いに打ち勝つため、彼女に助力を求める。一時は協力したかのように思われたが、それは呂不韋をおびき出すための罠で、裏で呂不韋とつながっており、嘗ての縒りを戻そうと肉体関係を持っていたのだった。この関係は秘中の秘とされていたが、政は宮女・向の証言によりそれを知る所となる。
呂不韋が後宮に送り込んだ巨根の男・嫪毐を愛人とし、彼との間には二人の子供がいる。当初は自身の性欲発散の相手でしかなかった嫪毐だが、彼が彼なりに自分を気遣い心を尽くそうとしている様に触れ、乾き切っていた太后の心に再び人情が兆し始める。それと同時に彼との間に生まれた子供たちにも愛情が芽生え始めていた。
今まで破滅的な生き方しかできずにいた太后だったが、嫪毐と出会い子供も生まれた事で、初めて人心地が付いた彼女は『安らかに暮らせる場所が欲しい』と願うようになる。そして彼と共に太原に毐国を建国。子供たちと自身の未来のため、政の加冠の儀を狙い咸陽へ反乱軍を差し向ける。
しかし、それらも飛信隊を始めとする秦軍の到着と彼らの奮戦により敗北。反乱の首謀者として嫪毐が捕えられると、刑場に乗り込んだ太后は彼を庇い、共に車裂きにしろと政に迫った。だが政は国母である太后を裁くことはできないと諭す。そして太后の脳裏に過ったのは、嫪毐との子供たちのことだった。幼い彼らまで処刑されるのかと、(事情を知らぬ者たちを尻目に)茫然と問いかける太后に、政は『例外は無い』と無情な現実を告げるのだった。その時太后は突如得物を手に政へ襲いかかり、衛兵に取り押さえられるも、あらん限りの呪詛を込めて政を痛罵。余りの仕打ちに我慢できなくなった側室・向は母に愛されなかった政の悲しみを訴え、身勝手な愛情を詰るのだった。
太后は結局幽閉という処分で終わるが、たまに泣き叫び暴れたかと思えば無気力に横たわるという不安定な状態にあった。しかし密かに訪れた政によって子供たちはまだ生きているという事実を告げられる。知らされた際の胸中は不明ながらも、政に再び彼らと会うその時まで健やかであるようにと労りの言葉をかけられる太后であった。
コメント
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男が女を愛するとは ~韓紅(からくれない) 鰯雲 透き通る~
頂いたリクエストは「嫪毐と太后」で「韓紅 鰯雲 透き通る」という太后様に似合いそうな鮮やかだけどどこか寂しいキーワードです。太后と接する中で凡で臆病だったごく普通の男だった嫪毐が変わってゆく過程でこんなことがあったらなぁ、と妄想してみました。キワモノ扱いされることが多いお二人ですが、それでも厳しい戦国を必死で生き抜いた男女だったと思います。2,322文字pixiv小説作品 邯鄲の宝石
呂不韋との有り難くない濡れ場を提供した、太后様の暗黒時代。 「史記」で描かれる太后はとにかく淫乱な男好き、という印象です。しかし「呂不韋列伝」などを見ていてふと思ったのは、「ほいさっさと別の男に譲られる女の気持ちってどんなだろう?」でした。 それだけに、原先生が太后の側の気持ちをきっちり描いてくれたのは意外であり嬉しかったです。 そこで、呂不韋と太后の過去をあれこれ想像して書いてみました。……太后本人が語っていた「幸せの絶頂」から一気に転落した瞬間、彼女はどう思っていたのか。秦から迎えが来るまでの間、どんな風に過ごしていたのか。想像は尽きません。 今回はあくまで太后の側の気持ちを描きたかったので、呂不韋の気持ちは敢えて明確に描きませんでした。いつか呂不韋視点で書いてみたいと思います。 因みに、作中で呂不韋が取り入っていた「秦の太子の寵姫」は、史記などを読んでいる方はご存知と思いますが華陽太后の事です。(荘襄王の前の王・孝文王の正妃。子楚の養母となった)21,992文字pixiv小説作品