概要
美濃国(現在の岐阜県)に現れたとされる妖怪(あるいはお椀の付喪神)。
大御所の解説によればその昔、とある年の暮れにある長者の元へ山奥に住んでいるという武士が訪ねて来て、客を招待したいので20人前の膳椀を借りたいと申し入れて来た。
相手が相手なので断るとどのような仕打ちをされるか分からないと考えた長者は要求を受け入れてお椀を貸したのだが、いくら待ってもお椀は返却されず、それどころか毎年お盆の度に武士はお椀を借りに来るようになってしまった。
このような状況を不思議に思った長者は人を雇うと、密かに武士の後を負わせた。武士は山奥の池へとやって来るとお椀を抱えてそのまま水の中へと姿を消し、その光景を見た追っては心底驚き、事の次第を長者に伝えた。
気味悪く感じた長者は、一計を案じてその年もやって来た武士にお椀を貸す時に膳に縫い針を刺してお椀を貸し出すとそれっきり二度と武士がやって来る事は無くなった。
そしてまた人を雇って例の池の様子を見に行かせると、水中に顔がお椀の化け物がいたという報告を受けた長者は恐れおののき、それ以来決してその池に近づかないようにしたという。
余談
角椀漱の解説文には顔がお椀に似ているという理由からなのか、角盥の付喪神である角盥漱のイラストが掲載されている。
ちなみに岐阜県に伝わる「椀貸伝説」の一種である「椀借り武士」を元ネタとして生み出された妖怪らしい。