解説
- 1941年11月の会議でヒトラーはフェルディナント・ポルシェ博士に超重戦車の開発について打診した。
- 1942年6月、ポルシェ博士より「タイプ205」の名称でヒトラーに図面が提出された。
- これは、砲塔に150mm砲と100mm砲を同軸に装備し、ポルシェお得意のガソリンエンジンとモーターのハイブリッド式の駆動装置と縦置き型トーションバーサスペンションを備えていた。
- ハイブリッド化は別に燃費の向上が目的だった訳ではなく、ドイツ重戦車の泣き所だったトランスミッションを廃する為である。「ミッションが脆弱で車重に耐えられない」→「モーター駆動ならミッションは不要!」という「車重に耐えられるミッションを作る」でも「ミッションが耐えられるまで軽量化する」でもないある種斜め上の発想である(時間的・技術的に選択肢が無かったのかも知れないが)
- 「それ以外の部分を軽量化したり改良したりして何とかしようという発想はないのか」とか極東の同盟国から聞こえてきそうだが、実際その思想で造られた日本戦車はブリキに豆鉄砲と揶揄され……たのは参謀本部の先見性のなさによるもの。その技術をうまく応用していったら、「パンターよりカタログスペックはちょっと劣るけど、その代わり日本の泥ン中でも使えるそれなりな戦車」が出来上がっている。しかも、日本の技術で。まぁこいつらの祖先だと思えば納得……していいのか?
- その後、武装が128mm砲および75mm砲に変更となり、1943年1月に製作が承認され、制式名称は「VIII号戦車 マウス(=ハツカネズミ)」に決定された。最大装甲厚は240mm、総重量188tに達した。
- 同年5月の段階で150両(135両とも)が発注されたが、10月にキャンセルされた。
- 同年11月に試作車両が完成。試験走行を続けたものの、トラブル続きで遅々として開発が進まず、最終的に1944年11月にヒトラーの指令により、すべての超重戦車の計画が中止となった。
- 結局、完成したのは、試作車両が2両だけだった(うち1号車はダミー砲塔搭載)。
- その後、1号車は試験場にそのまま放置され、ほぼ無傷のままソ連軍に鹵獲された。2号車は終戦間際に実戦投入のため、試験場からの移動の途中に行動不能となり爆破処分され、大破した状態でこちらもソ連軍に鹵獲された。
- 2両のマウスを鹵獲したソ連軍は、1号車の車体にまだ原型をとどめていた2号車の砲塔を組み合わせ、走行可能なマウスを完成させ、モスクワへと運び、試験をした。
- 現在、そのマウスはモスクワ近郊のクビンカ戦車博物館に展示されている。
- このように史実ではロクに活躍する機会も無いまま現在に至っているが、あるアニメのクライマックスで大暴れし、見る者に強烈なインパクトを与えた。きっと天国のポルシェ博士も歓喜し、号泣したに違いないだろう…。
- 2014年4月、クビンカ戦車博物館とWorld_of_Tanksで有名なWargaming社が協同でマウスのレストアプロジェクトを発表。4Gamer.Netさんの記事
性能
全車長 | 10.09m |
---|---|
車体長 | 9.03m |
車体幅 | 3.67m |
車高 | 3.68m |
重量 | 188t |
懸架方式 | 縦置きトーションバー・ボギー式 |
最高速度(整地/不整地) | 20km/h/13km/h |
行動距離(整地/不整地) | 190km/97km |
主砲(弾数) | 55口径12.8cm KwK44戦車砲(55) |
副砲(弾数) | 36.5口径7.5cm KwK44戦車砲(約100) |
機銃(弾数) | 7.92mm MG34機関銃(1000) |
装甲(砲塔) | 前面220~240mm 側後面200mm 上面60mm |
装甲(車体) | 前面200mm 側面180mm(下端部100mm) 後面150mm 上面前部100mm(中後部60mm) 底面50mm |
搭載エンジン(馬力) | 水冷V型12気筒MB509ガソリンエンジン(1080hp) |
乗員 | 6名 |
サブカルチャーでの出演
ゲームでの登場
- メタルサーガシリーズの一つ、PS2用RPG「メタルサーガ 砂塵の鎖」に登場する。
- 入手にはかなり多くの手順を踏む事になるが、それだけの労に見合うだけの性能は持っている。
- ゲーム中で手に入る戦車の中で最大の防御力を持ち、最も多くの武装を施す事が可能で、主砲3門、副砲2門、SE2門の搭載が可能なバケモノ戦車。特に主砲を3門装備可能な戦車はマウスだけ。
- しかし、全車両中最も重い重量を誇り、主砲3門装備した上で下手に装備を積むと、最強のエンジンを装備しても自走不能に陥ってしまう。
- 特に、劇中最強の主砲「プラズマキャノン」(アイテムの合成で入手。材料は敵のドロップ頼み)を3門装備させるとなると他の装備を殆ど諦めなければならなくなるなど扱い所は難しいが、不要な部分を徹底的に軽量化させる方向で改造し、攻撃は主砲による砲撃のみに特化させると言う手段もある。
- 兎に角入手過程も困難ならば、その改造・運用・実用も困難と言う癖の強い戦車だが、その苦労を耐え忍んで手に入れた火力は他の戦車の郡を抜いて余りある。一度プラズマキャノン3連射と言う快感を知ってしまえば、もうマウスを手放す事は出来なくなるだろう。
- 初代PSコンバットチョロQでは、中盤の難ボスとして登場。ダンケロリ高原という小さなステージで、明らかに縮尺度外視の巨体で突撃して来る。
- とにかくこのマウスは不条理&理不尽極まりなく、砲撃・突進・衝撃波が揃ったオールラウンド戦車となっている。特に突進の恐怖は多くのプレイヤーにトラウマを植え付け、無限作戦失敗地獄へといざなった。
- PS2「新コンバットチョロQ」では操作可能な戦車として登場。
- 「激戦の果てに」クリア後使用可能となる。敵タンクとしては登場しない。高火力だが固定砲専用装備を示す「H」カテゴリの武器を、旋回砲塔の戦車で装備できる数少ない車両。装甲や積載重量、自身の重量も操作可能な戦車の中で1番である。
- GBA「コンバットチョロQ アドバンス大作戦」でも登場する。
- プレイヤーは「Lタイプ車体」と「128ミリカノン」を装備すると再現できる。敵タンクの場合「重戦車マウス」と表記される。尚、敵タンクは命中補正のパーツ、「標準器」も装備している。
- 何気にオープニングムービーにも登場。すぐに破壊されるけど。こちらは標準器を装備していない。
アニメでの登場
- アニメ「ガールズ&パンツァー」で、戦車道全国大会決勝戦において、黒森峰女学園の所有車両としてまさかの登場を果たす。
- その圧倒的すぎる攻撃力はカモさんチーム操るルノーB1bis(約30t)を縦回転で吹っ飛ばすほど。
- さらに正面至近距離からの砲撃や大洗の戦車で最強の攻撃力を持つポルシェティーガーの砲撃ですらビクともしない装甲を持っている。
- しかし、カメさんチーム(ヘッツァー)が車体の下に潜り込んでマウスを浮かせ、ウサギさんチーム(M3リー)とレオポンさんチーム(ポルシェティーガー)が右側部からちょっかいを出して、砲塔を回転させたところで、カメさんチームを踏み台にアヒルさんチーム(八九式)が上に登り、回転砲塔を封じ込めるという超ド級の荒業で無力化された。
- その隙にあんこうチームが、土手の上から露出した後部のスリット(表からも判るように、よほどのことがなければ攻撃できない底部を除き、車体中後部の装甲が一番薄いため)を狙い、撃たれて撃破されてしまい、早くも退場してしまった。
というか黒森峰はそんなもんどうやって手に入れたのだろうか…。
知られざる異母兄弟「トータス重駆逐戦車」「T95重戦車」
メガロマニアの偏執を誘うマウスはあまりに有名だが、完成していればライバルとなるであろう車両がいたことはあまり知られていない。
トータス重駆逐戦車
連合国最優秀ともされる戦車砲・対戦車砲、オードナンス 17ポンドQFの倍近い弾頭重量を持つオードナンス 32ポンドQF(口径94mm)を搭載し、最大装甲厚は228mm。
全周砲塔を採用して結果188トンの巨体になったマウスに対し、トータスは旋回砲塔を諦めて前方固定とし、実用的な重量に収めようとした。それでも戦闘重量は79トンに達した。
そして抱える問題もマウスと同じだった。搭載されたエンジンはクロムウェルやチャーチルと同じロールスロイス ミーティアで600hp。当然出力不足で最高速度はマウスとトントンの20km/h。それでもマウスと異なり駆動系の信頼性は高かったと評価されているが、運用に支障がないわけがない。
トータスは25両の生産命令が出たが、対独戦の終結により大部分がキャンセルされ、6両のみが完成した。連合軍占領下のドイツで輸送試験が行われたが、その後運用されることはなかった。
T95重駆逐戦車
開発したのはアメリカ。こちらも砲塔を持たない駆逐戦車である。砲口径は105mmだが装甲に重きをおいた車両で、車体前面上部は装甲厚が300mmにも及ぶ。
これはトーチカなどで強固に守られたジークフリートラインなどを突破するためであった、しかし開発開始が遅くその上競合する開発中の戦車が存在したため試作車2両のみしか完成しなていない。
超重量を支えるための履帯は左右2本ずつに設計されており極めて個性的な外観をしている。(長距離移動時は外側の履帯と車体の一部を切り離し、自ら牽引する。)
最高速度は13km/hであり、この車両に搭載されるフォードGAFガソリンエンジンは86tにも及ぶ車重に対し500hpの出力しかなかった。これはソビエトのT-34中戦車(28t)と同じ値である。
1両はスクラップに、1両は博物館に展示してある。
余談
ガルパンに登場した時期と前後して、「世界初のハイブリッド車はプリウスじゃなくてマウス(キリッ」とドヤ顔で語る意識高い系ミリオタが出現したが、あちらが世界初が名乗ってるのはあくまで市販(量産)車としてであって本車とはベクトルが全く違う。
まあ、トヨタをdisりたくなるお年頃なのは分かるが。
関連タグ
ゴリアテ:命名のコンセプトが一緒