永井豪の漫画作品。完結までに実に18年を費やした、氏の最長作品である。
「週刊少年マガジン」で1973年より連載を開始、掲載誌を「月刊少年マガジン」「週刊漫画ゴラク」に移しながら、1990年に連載終了した。
あらすじ
未曾有の大地震により崩壊し地獄と化した関東地方にわずかながら生き残った人々は、魔王スラムキングと呼ばれる男による暴力支配に脅かされていた。
そんな世界にぶらりと現れた、正体不明の巨漢バイオレンスジャック。
彼が行くところ、バイオレンスの嵐が吹き荒れる……果たしてその正体は……?!
概要
いわゆる文明崩壊モノの先駆けともいえる作品で、人の常識、社会が完全に崩壊した世界を舞台に「マジンガーZ」「キューティーハニー」「ドロロンえん魔くん」など様々な永井作品のキャラクターが大挙ゲスト出演するオールスターもの、セルフパロディものとしても楽しめる。
しかし殆どのキャラは、愛する者の死や性暴力に晒されるなどの過酷な運命が待ち受けていたり、目を疑うような凄惨な末路を辿ったりするため、純粋なファンはとにかく注意が必要である。
所謂みんなのトラウマの宝庫である。というか全編がトラウマである。
しかしながらどのような地獄の苦境に居ながらも、絶望せず立ち上がる人間の強さと美しさもまた同時に描かれており、トラウマブレイカーをも兼ねている。
特に人犬という、手足を切り落とされた姿で登場する飛鳥了と牧村美樹の描写の酷さは、読んでいて相当つらいものがあるが、特に飛鳥了がこのような悲惨な姿で登場することには最終的に意味があるので、トラウマ描写の嵐に臆せず、最後まで読んでみるべし。
結末について
最終章のどんでん返しについては、ファンの間でも賛否が割れるところである。
解説を担当した夢枕獏は、本作の結末について以下のように記している。
「物語作法上は反則技に近いもので、普通は書かないし、描いてはいけない。
しかしバイオレンスジャックに限っては、作者が注ぎ込んだエネルギーの量と歳月の重さにより
許されるのである。ここまで徹底的に描き尽くされたら、この結末しかないではないか。
作者は納得し、自らを許すのである。」
キャラクターとしての「バイオレンスジャック」
タイトルロールとしての「バイオレンスジャック」は、基本的に冒頭のフレーズが表わすような巨漢にして野生の塊のような男で、鉈のようにデカい超肉厚のジャックナイフを携帯する。このことから「暴力を呼ぶジャックナイフ」という意味で、バイオレンスジャック(ジャック)と人々に呼ばれている。
地獄と化した関東をさすらい、生きる人々の前に現れては破壊と暴力、そして再生を起こす謎の存在。
作中では上述の基本形の他、少年と女性、そして鳥の三つの姿で現れ、様々な超能力を持つ。荒廃した逆境の世界に立ち向かい逞しく生き抜こうとする者には力を貸し、自身に立ち塞がる者には一切容赦ない破壊と暴力が吹き荒れる。
デウス・エクス・マキナ染みた存在で、誰も知らないその正体は最後に読者だけに明かされる。
その他(逸話など)
何度かOVA化されているが特に2作目「バイオレンスジャック 地獄街」は、あの板野一郎が監督し、完全18禁でエログロ満載と言う凄まじい気合の入り方で一見の価値あり。
セルフパロディが公式が病気、作者は病気の粋に達しているエピソードも多く、特に「マジンガーZ」編である「鉄の城編」は、あまりのやりすぎっぷりから語り草になっている。
永井豪本人も、今後どのエピソードがアニメ化されることになっても「あ、鉄の城編はアニメ化しなくていいです(笑)」と語っている。
ついでにBL描写も多く、永井豪自身も作品内で「なんの漫画や」とセルフつっ込みを入れている。
関連イラスト
スターシステムの為か、元ネタ作品のタグが併用されている事も有る。
永井豪作品でもかなり過激な作品なのでR-18Gタグが使用されている作品も多数。