ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

V-22の編集履歴

2019-11-16 22:01:11 バージョン

V-22

ぶいにじゅうにおすぷれい

アメリカで開発・運用されている軍用垂直離着陸輸送機 愛称「オスプレイ」

概要

V-22とは、米国のベル社とボーイング社が共同で開発した軍用垂直離着陸機である。公式愛称は「オスプレイ」(ミサゴの英名)。よく誤解されるがCH-47ヘリコプターと同じ位置付けの輸送機であり、攻撃機ではない(射撃装置やミサイルを装備した攻撃機型の計画はあるが)。現状では武装も後付けの機銃程度しか装備できない。


ティルトローターという機構が特徴的であり、翼両端にある回転翼の向きを向きから向きにまで変えることが可能。それによりヘリコプターのようにも固定翼機のようにも飛ぶことができ、ヘリコプターのようなVTOL性能やホバリング能力と、固定翼機のような高速性や長い航続距離の両方を得ることとなった。


だが良いとこ取りとはいかず、従来のヘリコプターや小型輸送機に比べ、機構の複雑さなどが災いし非常に高コストな機体となってしまう。さらに運動性などの弱点もあり、主力輸送機として大々的に運用するのには向いていない。


現時点では海兵隊仕様のMV-22(輸送機)、空軍仕様のCV-22(特殊戦用輸送機)が存在する他、海軍でも艦上輸送機として納入が決定している。

米国以外では汎用輸送機として陸上自衛隊への納入が決定している他、特殊作戦機として興味を示す国も。ただ開発の遅れや高コストな事から真剣に検討している国はまだ少ないようだ。

pixivでは「オスプレイ」タグの方が多く使われている。また、この航空機のみならず、それっぽいもののイラストにもタグが付けられる。


V-22の先駆者

ベルXV-3

1951年、垂直離着陸機という形で研究が始まり、1955年に初飛行に成功した。だが、プロペラ羽の異常振動、安定性の低さ、操縦性の悪さなどの問題が続発し、事故で機体が大破したことにより開発は終了した。


ベルXV-15

1971年、陸軍NASAが共同で『垂直および短距離離着陸機研究』を開始。この計画にベル社の「モデル300」が採用され、1973年には改良が加えられた「モデル301」へと発展した。


本機は「V-22の縮小版」といえるほどよく似ており、1977年に初飛行(初ホバリング)、1979年には通常の飛行にも成功した。


JVX計画

1981年、当時の国防長官が4軍統合で使う「新型の垂直離着陸機」の開発計画を発表した。

この計画が『JVX計画:Joint-service Vertical take-off/landing eXperimental(統合垂直離着陸研究)』で、コンピュータが使えるようになった事が計画推進の決定打となった。このJVX計画で開発されるのが、のちの”V-22 Osprey"(オスプレイ)である。(1985年命名)


1988年、陸軍は予算の都合により計画から離脱。以降は陸軍の装備を搭載する事は想定していない。


V-22のあゆみ

紆余曲折を経て1986年に試作機が完成し、1989年に初飛行が行われた。

だが、その後のテストで乗員や民間人まで死亡する深刻な墜落事故が連続して発生(1991年と1992年)。その後、『技術的問題は殆ど解決された』として1994年には量産に踏み切った....が、事故対策やコストダウンのための再設計で配備計画は遅れに遅れ、2005年に本格配備が始まった後も事故は何度も起きている。


しかしそれはオスプレイの根本的な欠陥によるものではないとして、米国国防総省は「オスプレイの安全性」を一貫して主張し続けている。2008年にはオバマ大統領自身も、オスプレイに乗り込んで安全性をアピールした。

VTOL機はそもそも操縦が難しく事故が起きやすい機体なので仕方がない所はあるが、それでも事故率は従来機と比べると極端に大きい訳ではない


日本でも、2012年に沖縄のアメリカ軍基地への配備後、不時着、墜落事故が続発したために(主に左の方々から)注目を浴びた。現在でも陸自への納入決定によって(事故リスク以外に、防衛予算の圧迫という面でも)再び注目を浴びている。

※余談であるが海上自衛隊のUS-1の後継機として後述の救難機仕様の導入も検討されていた。


pixivでも、投稿されたイラストは2012年以降のものが多い。


オスプレイの性能

  • 特性

固定翼機としては短めの主翼の両端にエンジンナセルを取り付け、これにローター(メーカーではプロップローターと呼ばれる)が直結されている。

このエンジンナセルを飛行形態に合わせて回転させ、ローター回転面を調整する構造になっており、回転面を上に向けてヘリとして垂直離着陸、正面に向けて固定翼機として水平飛行が可能。ヘリコプターモードと固定翼モードの転換には最短で12秒ほどかかる。

ローターが大きすぎるため離着陸は基本的にヘリモードで行われている。また、回転面を斜めに向けた転換モードで短距離滑走離陸を行うことも可能。垂直離陸はエンジンの負荷が大きいので、必要がない限りは滑走離陸をすることになる。

最大搭載時は垂直離陸ができなくなるため滑走離陸を余儀なくされるが、それでも460mでの離陸が可能。

万が一故障でヘリモードに転換できなくなった場合の緊急着陸も想定されており、ローターは地面に接触後、過度に破片を散らすことなく安全に破損するような構造になっている。


主翼内には両エンジンを繋ぐ動力伝達用のシャフトがあり、エンジン出力にも余裕があるので、エンジンの一方が停止してももう一方のエンジンで両方のローターを駆動させることが可能となっている。

ただそれなりに無理をすることになるので片肺飛行は短時間のみで、できる限り速やかに着陸しなければならない。


オスプレイのローターは既存のヘリコプターのローターより径が小さいため、ヘリコプターに備わっているオートローテーション(エンジンが停止した場合にローターをフリーにすることで揚力を発生し着陸する緊急手順)は通常のヘリと比べて高度、速度の条件が厳しい。

実用上、可能な高度、速度ではほぼ間違いなく固定翼モードなので、オートローテーションは行われないものと考えていい。


CH-47などと同じく、ローターを2つ持つ関係で引き起こすダウンウォッシュ(下降気流)がかなり強い。実際、ロープを使った歩兵の降下訓練ではダウンウォッシュにロープが煽られてかなり苦戦している様子がうかがえる。

また、ヘリモードではエンジン排気が地面に直撃するため、船への着艦の際は耐熱板の用意などの対策がないと甲板を痛めてしまう恐れがあり、実際地面の草を焼いてしまったという報告もある。同じ理由で斜面への接地着陸は行えない。


  • 輸送能力

人員であれば25名輸送可能(機体左右に向い合せになった長椅子型が24席+指揮官用が1、さらに操縦席2席に加え予備員席が1)。

また担架なら上下に3段重ねることで12床設置可能で、長椅子と組み合わせて設置できる。

機内に車両を自走搭載することもでき、また野戦砲など機内に収まらない物でも吊るして運搬することが可能。

前述のように陸軍はプロジェクトから離脱した為、陸軍の装備の輸送は考えられていない。例えばHMMWV(ハンヴィー)は機内に搭載することは出来ず、元から大型汎用輸送ヘリでしか輸送できない榴弾砲といった重量物の吊り下げも考えられていない。(中型汎用輸送ヘリでも輸送可能なように軽量化がされた軽量榴弾砲の吊り下げは可能)


最大積載量は9,070kg。回転面を傾ける機構や中途半端なローター、主翼面積により、出力のわりに少なめになってしまっている。


  • 飛行性能

航続距離は954km(強襲揚陸作戦)である。これは従来の輸送ヘリ(CH-53)の約2倍にあたる。

その上スピードも従来機の約2倍(最大565km/h)となっており、ここでもヘリコプターを遥かにしのぐ飛行能力を誇っている。


しかしながら、ローター面積の小ささが災いし、ヘリモードでの運動性は本業のヘリコプターに劣る。しかも、ヘリコプターモードと固定翼モードの転換に時間がかかる特性上、着陸の際はかなり遠くから着陸地点を見極めて転換に入らなければならない。

このため離着陸やホバリング時は旧来のヘリ以上に無防備な時間が長くなるため、ヘリボーンでは敵の攻撃を避けるための念入りな事前偵察、そして手厚い支援が必要となる。


  • 格納形態

海兵隊の揚陸艦などスペースが限られる艦上での運用を考慮し、オスプレイは格納形態に変形することができる設計となっている。

エンジンナセルを水平にし、三本ずつあるローターを折り曲げて機体方向に揃え、この状態で主翼を水平に90度回転させて機体に添わせる。

この形態であれば機体の横幅を格段に減らすことが可能で、艦内でのスペースをかなり節約することが可能。

この変形機構は書籍でよくトランスフォーマーと表現されている。


  • 武装

ドアガンとして後部ランプドアに機関銃を取り付ける事が出来る程度。他は敵から発射された対空ミサイルを探知したり撹乱する自衛のための欺瞞装置を装備しているだけ。まぁ輸送機だし。


BAE Systemsが開発したリモートガーディアンと呼ばれる電子光学/赤外線(EO/IR)センサーとアナログジョイスティックで制御する汎用の自動機銃を腹部に搭載する研究もされている。

側面ドアにドアガンを設置しようとすると有効な射角が得られない欠点があったが、このシステムによりその問題を解決する事が出来るといわれている。

パイロットではなくガンナーにより操作される。

現状一部の機体で試験運用をおこなっている段階で、これが大々的に運用されるかは不明。


派生型

オスプレイは基本的には輸送目的だが、救難機仕様もある。

また、配備される組織や運用形態によってそれぞれ名称が異なる。

CH-46CH-53の後継とされ、

・揚陸強襲作戦の支援

・地上での作戦行動の維持

・自軍の展開

に用いられる。

360機が装備される予定とのこと。


戦闘捜索・救難、

艦隊兵站支援(艦艇どうしの補給)、

特殊作戦に用いられる。

48機が装備される予定であったが計画が棚上げされ後述のCMV-22に計画が移行。


  • CV-22B: 米空軍向けの特殊作戦型。

MH-53Jの後継とされ、

・長距離特殊戦活動、

・不測の事態での作戦、脱出および海洋特殊作戦

に用いられる。

53機が装備される予定。


C-2(愛称 グレイハウンド)の後継機になるものと見られる。

陸上~空母間の輸送を主な任務とし、空中給油装置付き外装燃料タンクを装備することで艦載機空中給油を行える。

44機が装備される予定。


構想段階

現状具体的な開発、調達計画はないものの、考えられている仕様。

  • 攻撃機型

攻撃ヘリのように機首に旋回式の機銃をつけたり、スタブウイングを追加してそこに機銃などを懸架し近接航空支援機とする。また、自衛用に機首側面に前方発射型ミサイルを取り付け、運用する実験も行われている。


イギリスで提案・研究されており、軽空母等で運用を行う。

主翼上部にレーダーを搭載する。

カーゴランプ部に対潜レーダーを搭載する案もある。


カーゴベイ内に増槽及び給油装置を設置して空中給油母機とする計画。

機種を流用すればコストダウンが狙えるし、特殊な飛行特性のオスプレイにはオスプレイで給油する方がやりやすい、というのも。

空中給油装置は現在開発中であり、現状では地上給油キットにより駐機中の機体および車両への給油能力を持つのみとなっている。

予定されている海軍のオスプレイ空中給油機化キットでは後部ランプドアよりドローグを曳航し、給油機とするが、キットの取り外しにより通常の輸送機としても使用可能となっている。


登場作品

他の航空機には見られない独特の機構や形状もあり、近未来を描いたフィクション作品では当機、あるいは類似した架空機が登場することがある。


特攻野郎Aチーム:先述したリモートガーディアンに似た武装を搭載して登場。

トランスフォーマー 実写版で米軍に運用されている。ローター四枚の架空の派生型もわずかにだが登場した。

ジオブリ-ダーズ:OVA2及び原作漫画後半に手厚生省衛生二課のハウンドに配備された「バラクーダ2」が登場。非常識と評される「 MH-1Cバラクーダ」はティルトローター機ではあるが、別物となっている。

スプリガン:劇場版の終盤に登場。カラーリングは民間機風となっている。

ジパング:架空のイージス護衛艦「みらい」の艦載機として、オスプレイをモデルとした架空哨戒機であるMV/SA-32J「海鳥」が登場する。(但しオスプレイよりもかなり小型化されている)


関連動画

V-22オスプレイ(宣伝用PV)

V-22オスプレイ(整備風景)

V-22オスプレイ(発艦映像)


関連タグ

オスプレイ

航空機 軍用機 輸送機 VTOL ティルトローター パワードリフト

なんで飛ぶのん?

問題を報告

0/3000

編集可能な部分に問題がある場合について 記事本文などに問題がある場合、ご自身での調整をお願いいたします。
問題のある行動が繰り返される場合、対象ユーザーのプロフィールページ内の「問題を報告」からご連絡ください。

報告を送信しました

見出し単位で編集できるようになりました