刀については、山姥切長義を参照。
山姥切国広との関係からかねてより想像されることも多く、実装以前に投稿された作品には「オリ刀剣」「未実装刀剣男士」ネタもある。検索の際はそのあたりの混同にも注意。
プロフィール
備前長船長義作の打刀。長義は長船派の主流とは別系統の刀工となる。
写しであると言われている山姥切国広と共に伯仲の出来。美しいが高慢。
より正確に言えば自分に自信があり、他に臆する事がない。
※「伯仲」とは、力などが接近していて優劣がつけがたいという意味。語源には長兄と次兄の意味もあるが、二振りは兄弟設定ではない。
概要
「謎の人物」時代
「来たか……。いい覚悟だ」
【謎の人物】
本丸に現れた謎の人物
彼よりもたらされたのは、放棄された世界・歴史改変された聚楽第の調査。
それは、時の政府からの特命だった。
初出は2018年9月13日。イベントは本来7月下旬~8月上旬辺りの開催が予告されていたが開発の都合上延期されていた。
当初は、極める前の山姥切国広のように白い表地に青い裏地のフード付きマントを頭から目深に被っているため、どのような容姿をしているかも不明だった。
因みに、最初に発表された際は、
・本歌山姥切長義実装説
・山姥切国広オルタ説
・謎の人物X感を出すためにマント着てる説
・運営が新キャラ発表方法をシルエットから謎マントにシフトしてきた説
・NPCの政府の人間説
などがファンの間で話題になった。
「監査官」時代
2018年10月31日~11月21日開催されたイベント『特命調査聚楽第』でついに登場。
本丸に訪れて時の政府からの通達を行う。時の政府は戦いが長期化している理由を審神者に求め、放棄された世界である歴史改変された聚楽第への経路を一時的に開いて実力を示す機会とした。
謎の人物とは時の政府から遣わされた『監査官』であることが判明し、聚楽第では彼が審神者の部隊に同行して評定する。
高圧的な態度を取り、審神者に「不満なら反乱を起こしてもいいが……まあ、無事ではすまないな」と脅しに取れる警告も発する。
見逃しがちな上に回想に収録されない途中撤退ボイスでは、審神者の采配に対し序盤は「慎重すぎるのも考え物だぞ」と窘めたり、中盤では一度退いて立て直すことに同意するも、佳境に於いては「ここまできて撤退、か。……失望させてくれる」と冷ややかに叱責してくる。
しかし、それは裏を返せば審神者たちに期待をしていたということであり、撃破数を上げて周回すると「なかなかの手際だな」と褒めてくれる。
部隊に山姥切国広が居ると、彼の活躍に対して思うところある視線を度々向けて因縁があることを示唆し、さらには「実力を示せ」「がっかりさせるな」と発破をかける。その真意とは…?
そして、敵300体撃破および聚楽第本丸最終ボスを撃破して、監査官から評定「優」を獲得すると…………
仲間加入
「俺こそが長義が打った本歌、山姥切。
聚楽第での作戦において、この本丸の実力が高く評価された結果こうして配属されたわけだが、……さて」
作戦から帰還すると本丸画面に「政府から特命調査 聚楽第の調査報酬が贈られました」と表示され、顕現の演出が入って刀剣男士・山姥切長義として正体を現して仲間になる。プレゼントは俺。
当初は新刀剣男士が居ると告知はされておらず、サプライズの確定報酬だった。と言っても、イベントが始まってからはお知らせ画像で「(監査官の立ち絵に被せて)優獲得で…」とクリアすれば何かがあることはアピールされ、回想55~57(未開放だと刀帳のタイトル画面に彼だけシルエット表示、タイトルは『???』)の追加、刀帳の158番と戦績の打刀欄が増えている……と察し易くはなっていた。
イベント開始から10日経過した11月9日、公式ツイッターから改めて刀剣男士としてのキャラクター紹介がされた。
優獲得後は聚楽第本丸最終ボス「ゾーリンゲン友邦団」から稀にドロップするようになり、入手台詞も異なる。6-4の「ゾーリンゲンサーバー部隊」を思い出させる意味深な部隊名。
聚楽第イベントの形式は山姥切長義を一振り入手するなら、所謂脳死周回が基本である過去と比べ圧倒的に楽。当初は無課金勢から課金必須ではないかと非難の声が上がったが、実際は無課金でも1週間程度あれば充分に可能な親切設計。課金にしても5000円程度ですぐ手に入る。
敵の強さも厚樫山以降を周回できる程度の戦力があればクリア可能。手が届きやすい難易度のため、このイベントで復帰した審神者も多かった。
1周回あたりの最短ルートが七福賽3つと抜け道の鍵で480円×3+600円=2040円となる。周回数による確率UPや天井などはなく、運で引き当てるしかない。ドロップ率はwikiの集計では12.08%と良い方だが、周回数で殴りにくいぶん複数振り所持の難易度は高い。
無課金でも乱舞レベル2に出来た幸運も居れば、30周してもドロップ0だったりと悲喜こもごも。
レア2のため乱舞レベル3以上は必要数が多いが、それでも乱舞レベル5(22振り分)を達成した猛者も複数存在し、申告によると課金額は「給料三ヶ月ぶん」や「51万円」など結婚資金も斯くや。とうらぶでは珍しく重課金ソシャゲ領域の札束を飛び交わせた。とんだ魔性の男である。
再会を匂わせる言葉の直後に仲間加入して評定が終了することに加えて、彼を入手できずにイベント終了するとこんのすけから「歴史改変された聚楽第への経路の封鎖を確認しました。現在かの地への進入は不可能です。監査官は既に政府へと帰還されたとのことです。…彼はいったい何者だったのでしょう?」と言われるため、監査官と聚楽第報酬の山姥切長義は同一人物だと推察される。
こんのすけは監査官の正体を知らないらしい…?
復刻版 特命調査聚楽第
HTML5移行の影響なのか、予定表にないCPも挟んでまた若干遅れて2019年6月18日~7月9日開催。初参加・前回優未獲得は通常通り、前回優獲得済は評定パート無しに分岐する。
この仕様から、『監査官』個体の山姥切長義が本丸に配属されるのは一度だけのようだ。
もう監査も罵りも頂戴できないことに審神者間では嘆きが広がったが、蓋を開けてみたらイベント導入は全員共通だったため、前回優獲得済の本丸にも監査官が登場して特命調査を通達するが直後にこんのすけに特命調査は終了していると宣告されるという笑いと混乱が生じた。
この謎の監査官は一体何者なんだ…となり、「自本丸の山姥切長義のパフォーマンスだよ」「いや政府から別個体の監査官が来たんだよ」「いやいや審神者の回想だよ」等と話題された。
イベントの改良点として、行動回数を残したまま最終ボス撃破した際の持ち越し、最終ボス撃破10回目20回目報酬に山姥切長義が追加、マップが少し変更されて抜け道ルートが480円×2+600円=1560円と値下がりした。
周回報酬は再び政府から贈られるが顕現演出なしで受け取り箱に入る。二種類目の入手台詞を聞くにはレアドロップを狙うしかない。
容姿
銀髪を右側は耳に掛け、前髪は左に流している。瞳は蒼色。公式美形の青年。
備前長船の刀工・長義に打たれた刀と明言があり、衣装も長船派の特徴と共通しているが、ゲーム内では刀派の表記は無しというイレギュラーな立ち位置。これは長義は長船派の主流とは別系統の刀工なためか。とはいえ本ゲームの刀派はそんなに厳密ではない例もあるのだが。
戦闘衣装は長船に共通する黒いフォーマルスーツに手袋。他と違ってカマーベストとクロスタイで、ドレスコードとしては若干カジュアルになっている。
肩に巻いたストールはシルバーグレーの表地に、鮮やかなロイヤルブルーの裏地が目を引いて美しく、四隅には装飾が施されている。
太腿にはベルト状の防具を装着している。
内番衣装は黒地に金が差し色された長船共通デザインのジャージだが、フードが付いているアレンジがされている。インナーは青いVネック。
キャラの紋は、山姥切伝説と後北条氏の三つ鱗紋を意匠した山を、長尾氏の九曜巴紋を意匠した9つの三つ巴紋がとりまいているもの。
監査官姿のフード付きマントはシンプルで装飾がなく、正体判明後とは形状が異なる。
フードの下は立ち絵の拡大から、目元は黒いマスク(一見影のようにも見えるが目の部分が開いていて額にも肌色が見える)と推測されていたが、絢爛図録3のチラ見せで確定し、髪型はオールバックと判明した。
キャラクター像
当初から彼のキャラ設定文や台詞にて「霊剣『山姥切』」と言及されていた。実装を期待していたユーザーにとっては、3年10ヶ月越しに叶った刀剣男士となる。そのためか、待たせたことを意識した台詞がいくつかある。感慨深くなる審神者も居ることだろう。
山姥切国広はオリジナルではないことにコンプレックスを抱いて拗らせているが、オリジナルである山姥切長義は長い不在期間にクローンに存在感を食われていたような状況に成っていたことが禍根となっている。
一人称は「俺」。
ツンケンしていた監査官の頃とは一転して、本丸の実力を高く評価したことで仲間になってからは審神者に対しては物腰が柔らかくなる。「~かな」が口癖の様子。
高慢で自信家な性格だが、「持てる者こそ、与えなくては」という『ノブレス・オブリージュ』の精神の持ち主。負傷時やつつきすぎの対応から審神者には寛容であり、高慢であっても傲慢ではない人柄。近侍にしてつついても「っふふ、減るものではなし」と許容してくれる上に、つつきすぎも嫌がらない、希少なおさわりOK派。
審神者に構われるのはまんざらでもないようで、審神者が長期間留守にした際には平静を取り繕っているが声に動揺が表れている拗ね方をしている。
就任記念日の台詞では審神者の実力を見極めているようであり、年を経るごとに評価を高め、3年目ではやっと祝いの言葉を贈り「歴戦の審神者」との賛辞をくれる。
おみくじボイスでは結果によって誇らしげにしたり憤ったりする感情豊かな姿が見られる。審神者が引いたおみくじなのに我がことのようにしている様子や、刀剣乱舞4周年の台詞から、審神者には肩入れしてくれているようだ。
戦場においては死神のように敵に死を与える存在を自認している。好戦的に変わり、「ぶった切る!」「くらって倒れろ!」などの粗野な口調も散見される。
中傷・重傷に追い込まれても「ははっいいぞ……!楽しめそうだ!」と敵を挑発する血の気の多さが見られる。真剣必殺となれば迫真の表情を浮かべる者が多い中では珍しく静まった無表情へと化して、「ここからは本気だ!後悔しろ!」と敵に刃を振るう。
馬当番・畑当番をさせると難色を示して、最後までちゃんとやったようであるものの終了時の声にはやる気のなさが表れていたり、刀装失敗では最初は普段の態度を取り繕うがだんだん不機嫌になっていき仕舞いには飽きて放り出すなど、子供っぽいところもある。
尾張徳川家に伝来した繋がりの南泉一文字と回想『猫斬りと山姥切』が発生。
南泉を「猫殺しくん」と呼んで嫌味でいじってくる性格のため、会いたくなかったと鬱陶しがられる。斬った物の格の差を持ち出したことから「(そういう性格なのは呪いのせいで)猫斬ったオレがこうなったみたいに、化け物斬ったお前は心が化け物になったってこと……にゃ!」と皮肉を返されるが、「語尾が猫になったまま凄まれても……かわいいだけだよ」と流す。皮肉の応酬をする腐れ縁なことが窺える。
この回想から、南泉一文字が山姥切国広と回想があったのは山姥切長義と旧知だからと察せられる。
自身の写しである山姥切国広とは、通常の姿と極の姿とでパターンの違う回想『ふたつの山姥切』と特殊手合わせが発生。
山姥切国広のことを自分を差し置いて山姥切の名で顔を売っているという嫌味から「偽物くん」呼ばわりするが、でもそれはここには自分が居なかったから仕方ないと断じ、自分が居る以上『山姥切』として認識されるべきは自分だと主張する。
通常の山姥切国広相手には終始優勢で余裕なままだったのに反し、修行で自身の物語を見つめ直し審神者の刀としてアイデンティティを確立した極めた山姥切国広相手では、意見と価値観の衝突によって自尊心を崩されて苛立ちを示し、一人になった際には激情を露わにする。この際の反応は他には刀剣破壊でしか見せないことから、精神ダメージの深刻さが窺える。
手合わせでは、山姥切国広から「折る気か」と言われるほど実戦さながらの訓練で対する。極めた山姥切国広だと挑発を返すようになり、山姥切長義の余裕を崩して苛立ちを覗かせるほど白熱した仕合を繰り広げる。
また、刀帳・内番・手紙の通りなら山姥切国広から本歌の呼び方は「山姥切」とされる。
監査官の頃は美しくて高慢な監査官に失望してもらえるのは我々の業界ではご褒美ですと目覚める審神者が急増してドMホイホイと化していたが、回想や刀剣破壊では追い詰められてプライドを折られたり激情を吐き出す悲痛な場面があることから庇護欲または嗜虐心を刺激される審神者までも続出させた。
一方で、聚楽第において敵に占拠された中心地に自身に関係の深い元主・北条氏政の存在が確認されていても、「これが正史でない以上、当人であるかどうかは瑣末なこと」と言いきり、正史を守ることに関しては揺るがない冷徹さを持ち合わせている。
数々の沼深い要素と洗練された外見などが相俟って実装直後から人気に火が付き、2019年2月10日ワンダーフェスティバルでねんどろいど化決定。放送では異例の大出世と触れられ、後発の中でも特に人気が爆発した刀剣男士と言える。
ボイスを担当する高梨謙吾氏は役作りについて以下のように語っていた。
高梨「とにかくキャラクター造形的に、言葉を見るだけでもプライドがめちゃくちゃ高いんです。なので、そこだけをストレートにやりすぎちゃうと「嫌な奴だなぁ」とかって捉えがられがちなキャラかと思ったので、随所に随所にわかりやすく隙をつめこればなっていう気持ちを込めてスタッフさんと相談しながら収録させて頂いたんですけど、それがね皆さんにちゃんと上手く伝わっていればいいなとは思います」
松澤(MC)「たしかに今の話を聞くと納得ですね。ちょっと隙があるというか、ついていてあげなきゃみたいなところもあって」
高梨「そういうフックになるような部分もいっぱい随所に詰め込みたいなと思って。淡々と台詞をやっているだけだとやっぱりなかなか伝わらないので、わかりやすくニュアンスを込めたりとかっていうことをやりましたね」
性能
打刀では機動が3番目に高く、代わりに統率は宗三左文字・陸奥守吉行と並んで下位から2番目。
初期値・最大値ともに合計値が山姥切国広・南泉一文字と全く一緒で、このステータス配分はランクアップ前後でも一致している。
山姥切国広と比較した場合、彼より生存が2、機動が1高く、反対に統率が2、偵察が1低くなっている。南泉一文字と比較すると打撃・偵察がそれぞれ1、統率が2高く、反対に機動・衝力がそれぞれ1、必殺が2低くなっている。
モチーフの刀剣について
作者は南北朝時代の備前国長船派の刀工・長義。「ながよし」とも「ちょうぎ」とも読むが、ゲームでは後者となる。
備前長船の中でも長船四天王(長光・兼光・元重・長義を指す)の一人に数えられ、正宗の弟子として正宗十哲にも名を連ねている。
正宗十哲とは後世のフィクションで直接師弟関係はなく作風に影響をうけた刀工とされるが、篭手切江が言及しているため刀剣乱舞世界にも存在する逸話の模様。
長船本流とは異なり、自由奔放な作風が特徴で、凄まじい切れ味を示す刀が伝わる。
長義は同時代の長船派の主流である兼光一派(長船派の祖・光忠の嫡流。光忠→長光→景光→兼光の流れ)とは別系統で、備前風に相州風を加えた「相州伝備前」または「相伝備前」と言われる作風を作出して「備前にありながら最も備前離れした刀工」とも言われる。
刀身は南北朝時代の特徴と相伝備前の典型から身幅広く豪快な姿をしており、地刃共に健全で長義の最も優れた作品の一つと言われている。
信州戸隠山中で山姥という化物を退治したことから「山姥切」と呼ばれる。伝説の舞台となった戸隠山の麓の戸隠地区や鬼無里地区には、紅葉伝説と呼ばれる鬼女退治の伝説が伝わっている。
「山姥切」の逸話は本歌と写しどちらにも存在しており、本来はどちらが「山姥切」の呼称の持ち主だったかは諸説が入り乱れて錯綜している。
モチーフとなった刀剣の重要文化財としての名称は「刀 銘:本作長義天正十八年庚寅五月三日ニ九州日向住国広銘打/天正十四年七月廿一日小田原参府之時従屋形様被下置也長尾新五郎平朝臣顕長所持」となる。とても長いので「本作長義…(以下58字略)」と省略されることもある。刀身の出来もさることながら5W1Hが明確な長い銘も歴史学の観点から貴重視されている。
本歌は長い銘(作者のサイン)は存在するが、号(名前)については尾張徳川家の記録上には記述がない。そのため所蔵元の徳川美術館では「本作長義」と呼んでいる。
「山姥切長義」という名は刀剣乱舞が初出のオリジナルではなく、以前からそう呼ぶ人も居ることは『刀剣春秋792号』にも書かれている。確認できるものだと昭和44年『寒山小論文集』や昭和52年『小田原の刀剣』でもこの名で呼ばれている。
後北条家に伝来し、天正15年(1586年)に足利領主・長尾顕長に下賜された。
銘の内容は、「この長義の打った刀は、天正十四年(1586年)七月二十一日に長尾顕長が小田原城に参府した際に、北条氏政から本刀を下賜され、四年後の天正十八年(1590年)五月三日に九州日向国の刀工・堀川国広がこの銘を追刻した」というもの。
「本作」とは「この作品は」という意味で、長義が打ったものであるという但し書き。写しに対する本歌という意味ではない。このように所有者やその由来を明らかにするために入れられた銘を切付銘という。
元は太刀か大太刀だったとされるが磨り上げられており、国広に追刻銘だけ依頼したのか、磨り上げも含めた依頼だったのかは不明。作刀から追刻銘されるまでに200年以上開きがあり、目釘孔の数から複数回の磨上が行われている可能性もある。
天正18年(1590年)は豊臣秀吉による小田原攻めが行われた年であり、『徳川美術館の名刀』によると、豊臣の軍勢が小田原に押し寄せた5月、北条氏の家来である長尾顕長は敗戦を察して堀川国広に命じて本刀に銘を切らせた。
北条氏が無条件降伏したので予想したような死闘は起きなかったが、氏政はこの戦いで降伏後に切腹、首は京に送られて聚楽第の橋にさらされた。氏直は助命されて高野山に送られて翌年に赦免されるも病死。顕長は所領を召し上げられ浪人となった。
本刀への銘打ちに先立って天正18年(1590年)2月に作刀されたのが、写しである山姥切国広。
美術工芸品や日本刀において写しの元となった基準作品・実物は、和歌の本歌取りに倣って「本歌」と称される。現代では写しは本歌の姿をなるべく復元模造するのが主流だが、この時代の写しについての意識は異なり、太刀か大太刀を磨り上げた刀と最初から打刀として作成された刀である差もあって二振りは実はあまり似ていない。峰の形状と樋先の位置関係などは正確だが、反りを含めた全体の姿形と茎の仕立てには差異がある。
この二振りはどちらも重要文化財に認定されている。古来より優れた作品には写しが多く存在するが、本歌・写しがともに国宝・重要文化財となっている作品は他には皆無。専門家の間では写しは本歌に及ばないとされるのが通例だが、この二振りの場合は双方が高く評価されてきた名刀であることを物語っている。
他の名刀と同じく写しは複数存在するが、通常は本歌が現存している場合は写しが目立つ機会は少ない。確認できる例を挙げると、堀川国広の弟子の阿波守在吉も慶長2年(1597年)に長義写しを作刀、現代に於いてはロンギヌスの槍作製で一躍注目された刀匠会現会長・三上孝徳氏(刀匠銘 貞直)が写しを複数回に渡り作刀している。
延宝9年(1681年)6月、徳川綱誠が購入し、尾張徳川家に伝来。
以後は同家を離れる事なく、現在は尾張徳川家ゆかりの徳川美術館に所蔵されている。
2018年9月29日~11月25日、京都国立博物館で刀剣乱舞とコラボ企画された「京のかたな 匠のわざと雅のこころ」展が開催。「本作長義(以下58字略)」も通期出展されていたがコラボ刀剣ではないため気づかない人が多かった。
しかし、その開催中の10月31日に刀剣乱舞にて山姥切長義が実装され、さらに11月9日に公式Twitterでキャラクター紹介がされたことで、後期になって注目度が上がった。
イベントが延期しなければもしかしたら参加できたのでは…と惜しまれていたが、本展示を特集した女性セブン43号(2018年11月15日発売)の表紙風ピンナップで堂々のセンターを飾り、遅参を挽回せんとばかりに話題を攫った。店頭では彼の雑誌デビューを宣伝文句にしたポスターまで作成される気合の入れようだった。
逸話を依拠とした「本作長義」とは切り離されたキャラクターである可能性も一部で囁かれていたが、南泉一文字と旧知なことに加えて、この女性セブンに徳川美術館提供の「本作長義」の写真が掲載され、キャラクターのモチーフと確定した。先述の通り徳川美術館は「山姥切」と呼ばない方針のため、今振り返ればこれは貴重なものと言える。
刀剣乱舞の設定においては、山姥切国広は本歌が山姥を斬った伝説を持っていて写しは斬っていないと記憶していたが修行によって新たな事実が判明する。また、回想から南泉一文字・山姥切長義も本歌は山姥を斬っていると認識しているようだ。
彼の抱える謎
特命調査聚楽第の世界と監査官については多くの謎が含まれている。
以前より絢爛図録や他の回想で触れていたが戦況が劣勢と改めて判明、パラレルワールド、世界の放棄とは、存在感を現した時の政府、政府所属の刀剣男士、などの新たな要素で波紋を起こした。
- こちらを既に把握していた言動に加え、政府は我々を見ているらしく、彼も政府に居た頃から我々を見ていたとも取れる。
- 官職を任されていることと政府に反乱したら無事では済まないという口振りから所属期間は浅くなさそうにも見えるが、彼はいつからなぜ政府所属となって役職に就いていたのか。
- 彼に人型を与えたのは誰なのか。絢爛図録には勝ち目のない戦況における唯一の勝算が審神者の力とあり、刀剣男士を生み出せるのは審神者の能力のみと受け取れるため、政府には刀剣男士を多量に生み出すことは出来なさそうに取れるが…。
- 本イベントで別の世界に介入できることが判明したため、彼も歴史改変され放棄された世界と関わりがあるのか。
- いつもボスから刀剣男士の気配を察知しているこんのすけが監査官が何者かわからないのは何故か。実は正体を知っているが優判定を取れなかった審神者に対しては隠している場合も考えられるが、どちらにせよ政府は監査官の正体を明るみにしていないことになる。
……などが挙げられる。
本イベントでは1590年の聚楽第に本来居るはずのない北条氏政が居たことから、小田原攻めが起きない世界であると推測される。小田原攻めが起こった一因には、天正16年(1588年)に秀吉から氏直・氏政親子に聚楽第行幸の列席を求められたが氏政が拒否したためターゲットにされたという。
山姥切国広は小田原攻めの折に打たれた刀であるため、小田原攻めが起きないということは山姥切国広がそもそも打たれないということを意味する。
つまり彼は自分の逸話を(これは人間のせいであり山姥切国広に非は無いとはいえ)騙っている(と彼は思っている)山姥切国広という自らの写しが作られる歴史を守る戦いをしていた、ということか。山姥切国広が打たれなければ「山姥切」という逸話は彼のものであったにも関わらず(どちらが山姥を切ったかは現実では定かではないが)、だ。
あの世界で監査官としての彼が目前にしていたものは実はとても重く、酷な状況であったと考えられるが、正史を守るためなら動じない冷静さに驚かされる。
後に、特命調査文久土佐藩にて、時の政府は権限を行使して刀剣男士を顕現して特殊な任務に充てる事例があることが判明した。
また、史実の人物とされる敵が登場しており、本人なのか名を騙った時間遡行軍やその世界の刀剣なのかは不明であるが、聚楽第における北条氏政も同様の可能性がある。
後続の特命調査イベントで謎が補完されていくのかもしれない。
ちなみに、後続は通信連絡だったのに監査官は本丸に直接訪れたことをよく揶揄されるが、本丸の監査が任務の監査官と現地の調査が任務の先行調査員では役割が異なるからだと思われる。