概要
女性の天使のイラストに付けられるタグ。
アブラハムの宗教において、天使に性別は無いとされるが、その根拠としてマタイによる福音書22章30節のイエスの言葉が挙げられ「復活の時には、彼らは娶ったり、嫁いだりすることはない。彼らは天にいる天使のようなものである」。
実際、性別が明確に設定されている天使というのは非常に少なく有名どころではガブリエルがいる。
ここでいう彼らとは復活の時に立ち会った人間のことであるが、彼らは復活の時には娶ることも嫁ぐこともないという。また上記のイエスの言葉は「夫と死別したために再婚を繰り返した未亡人は天国では誰(生前に結婚した男達)の妻となるのか?」という質問に返した答えであり、大抵の場合「天使みたいに性別の意味が無くなる(から、結婚なんてしないよ)」ということだと解釈される。
天使は男性的に描写される事が多く、ゴエティアに登場する悪魔(堕天使)のうち、グレモリーのような女性の姿をした者も彼(he)と呼ばれている。ただし、唯一神も「彼」と呼ばれており、天使が彼と呼ばれてはいても、それがそのまま男性であることも意味しない。唯一神はキリスト教では父なる神と呼ばれることもあるが、イスラム教では唯一神は生みも生まれもせず(112:3)、妻も子もいない(72:3)存在とされている。
イスラム教の聖典クルアーンでは女性の天使については積極的に否定している。「多神教徒は慈悲深きお方(神)の僕である天使を女性にしたりする。お前たちは天使の創造に立ち会ったのか」(43:19)。多神教徒は天使の創造に立ち合ったわけでもないのに、勝手にある天使が女性だと主張している、という非難である。「誠に来世を信じない者は、天使に女性の名前を付けたりする」(53:27)。天使に女性の名前をつけるのは、「来世を信じない者」のやる事だとしている。
当時のアラビアには、天使を女性とみなす(又は「女性の天使がいる」)考えがあったようだが、クルアーンでは上記のように多神教徒や不信心者による誤りとしている。
聖典以外の伝承も含めて、アブラハムの宗教で女性的な天使と言えるのは、女性につけられる(女性形の)名前を持ち、「魂の助産婦」と呼ばれるライラだけである。それでも女性だと明言されてはいない。女性的とされる事もあるガブリエルも男性名であり、女性につけられるのは「ガブリエラ」のような女性形となる。日本語ではガブリエルとカタカナ表記される女性もいるが、アルファベット表記ではGabrielleであり、これも女性形になった人名である。
ヨーロッパ系の人名の一つである「アンジェラ」は天使を意味する人名の「アンジェロ」等の女性形であって、こちらも教義上における女性の天使の存在を示すものではない。
女性の天使(的)存在はゾロアスター教にはいる。アムシャ・スプンタのうち、アールマティ、ハルワタート、アムルタート。ヤザタのうちアナーヒターやアシ等がそうである。
ゾロアスター教はアブラハムの宗教と深く関わりがあり、歴史的にはアブラハムの宗教の一派であると主張していたこともあった。イスラムによるペルシャ侵攻の際、自分たちがアブラハムの宗教の一派であり啓典の民であると主張することで迫害から逃れるためである。その際にゾロアスター教徒が根拠としたものが、クルアーンの「まだ(ムハンマドに)教えていない使徒もいる」(4:164)という啓示で、ゾロアスター教開祖のゾロアスターがここの節の使徒にあたると主張した。こういったことが功を奏したのか、クルアーンにゾロアスター教の名前が登場している(22:17)こともあり、ゾロアスター教は事実上準啓典の民として戦争状態に陥ることなくイスラム教と共存してきたという歴史がある。文化的にもゾロアスター教側の天使名が人名として引き継がれたり(バフマン、ソルシュ、バハラーム、ナーヒード等)、イスラム化後の伝説においてアブラハムの宗教的な天使に翻案されたりしている。が、「天使(マラーイカ)」についての信仰そのものに異教の天使観が影響を与えるという事態を生まなかった。
イスラム教にもユダヤ教、キリスト教いがいの特定宗教の開祖を預言者、と見なす見解が存在するが、ローカルな、一部の異説にとどまる(これを公式教義として明示したのが近代イランにおける後発新宗教であるバーブ教、バハーイー教であると言える)。
前述の通り、クルアーンは「過去の啓典に混ざり込んだ誤謬や改竄(キリスト教の場合イエスの神性や彼が十字架にかかった事などが該当)を直す」という立場をとっている。そのため、ザラスシュトラを預言者として扱うとしても、ゾロアスター教における「女性の天使」は「後世の信徒による誤りの混入」という判定となる。
イスラム教でなくても、「最後の審判や天使観において、ゾロアスター教がアブラハムの宗教に影響を与えた(アブラハムの宗教にはゾロアスター教の要素が残されている)」という言説は宗教学の分野に属するもので、これに同意するのは聖書を自由に解釈するリベラル派のみ。ユダヤ教やキリスト教の伝統的な立場でもない。
フィクションにおける女天使
女性の天使の描写はフィクションにおいて顕著である。むしろ天界、天使の概念がある作品で女性の天使がいない例を探すほうが難しいかもしれない。
複数人がいる種族、カテゴリ単位でpixiv百科事典に記載のある例としては以下がある。
- エンジェルナイト:複数の作品シリーズに登場する概念。女性型が多い。
- グランブルーファンタジー:星晶獣の一区分として「天司」がある。下位のものはみな無機質だが、人の姿をした上位天司には女性型が多い。
- デジタルモンスター:女性型天使デジモンとしてエンジェウーモン、ダルクモン、オファニモンがいる。
- Magic: The Gathering:プレインズウォーカーの手による等して誕生するクリーチャー・タイプとして天使がいる。設定上は男性もいて小説版に登場しているが、カード化されているのはみな女性型である。
- ロードオブヴァーミリオン:「エンジェル」の名で最初にカード化されたのは女性キャラだった、後に男女双方いる天使達を包括するクラス名とされた。それに伴い元のエンジェルには「キュオ」という個体名があてられている。
- 遊戯王OCG:モンスターカードにおける種族分類として天使族と堕天使がおり、女性型モンスターも多い。明確に「逆転の女神」という名前だったりワルキューレモチーフのキャラもいる。
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