CV:大空直美
概要
通称「サクナ」。タマ爺からは「おひいさま」と呼ばれる。
ヤナト神族の住まう世界「頂の世」の神都で暮らしていた、豊穣神の一人。
物語の初めに、とある失態を犯したことで、「頂の世」にある辺境の島である「鬼島」こと、ヒノエ島に追放されてしまう。
公式で、ぐーたらな生活をしていたと紹介される通り、公式ニート。
人物
「ぶははは!
家にある米を貢ぐだけで毎年の御役目がいただけるんじゃからぁ、
まっこと高貴な血とは、楽なもんよ!」
当初は甘ったれたボンボンそのもので、生意気でわがまま、怠け者でお調子乗りな態度が目立っていた。
神都に居た時には親友のココロワヒメにすらも若干ウザがられている描写があり、鬼島に追放された際にはほっとされた程。
本人曰く成人しているらしいが、容姿はどう見ても小学生女児。
また、いわゆるジジイ口調でしゃべり、偉そうな言い回しを好む。いわゆるロリババア。
その反面、難しい話や地道な努力は嫌うだめっこ。都合が悪くなると、トイレに行くと言って話を逃げ出すこともしばしば。神であることを鼻にかけるセリフも多く、仲間となった人間の子供が生意気なこと言うたびに、相手に「敬え」と言うのは殆どお約束。
とはいえ全く分別がないわけでもなく、上司であるカムヒツキに対しては恭しい言葉遣いで話し、へりくだることなく実直に意見を述べる。同輩のココロワヒメや協力者であるアシグモに対しても(失言こそすれど)フレンドリーに話す。
不遜な態度を取るのは「自分より下位の存在」に対してであり、それも実際に偉いのでサクナとしては当然の話でもある。
最初は生意気で人を見下した態度が目につくものの、物語を読み進めれば「イヤなやつ」ではないことがすぐにわかるだろう。
「終わらん…背が痛い…
わしは既にひと働きしてきたというに…」
一方で、必要とあらば骨身を削って働くことをいとわず、
全員が飢えて死にかねない極限の環境に追い込まれたことで、「やればできる子」を爆速で体現していく。ヒノエ島では人間たちが外を自由に歩き回ることができないため、あらゆる仕事がサクナに回ってくるため、何だかんだ作中で一番働かされている。
また、過ぎたことは後には引きずらない性格で、落ち込むことはあっても基本的には前向き。
なんやかんやで面倒見のいい性格で、色々と性格的に問題の有る人間たちであっても世話を焼き、最終的には彼らの為に命を懸けるほどに大切に思っている。
そうしてヒノエ島での日々を過ごし、泥臭くも多くの出会いと経験を得ていく中で、父のような"守る強さ"と母のような"与える慈悲"を兼ね備えた、一人前の神へと成長してゆく。
実は読書好きという一面がある。
特に朧月香子という作家の書いた全1200巻からなる恋愛小説『片恋物語』はすべて読破し、その内容をすっかり覚えてしまうほど。ヒノエ島にも「これがないと眠れない気がする」として、こっそりと朧月香子の本を少しだけ持ち込んでいる。
しかしヒノエ島に追放されてしまったことで朧月香子の新作を追うことができなくなり、ひとり嘆いている。
舌がよく回り、学習が早いのも豊富な読書量によって育まれた教養のおかげなのだろう。
なお、寝る前にちょっとずつ読み進める派。
神格
「人の子らよ、敬え、へつらえ!!」
ヤナト神族の中でも上級神に位置する、格の高い存在。
武神タケリビと豊穣神トヨハナの間に生まれ、両親から双方の資質を受け継いでいるハイブリッド。
自ら「高貴な血」と言うだけあって、ゲーム開始時には働くことなく暮らすことができるほどに裕福な家の生まれだった。
能力
「戦神の武と豊穣神の恵みが合わさったのじゃ。最強でなくてなんとするか」
単身で鬼や獣を狩りに行く「武神」としての側面と、
稲作によって武力を高めることのできる「豊穣神」としての二つの顔を見せる。
なお、神というだけあってオープニング時点でも人間よりも遥かに高い力を持っている。
酒気を帯びて酔っぱらった状態であるにも関わらず、刀を持った山賊を蹴り飛ばせるほどの膂力を示し、田右衛門を驚嘆させている。
豊穣神の子として
「米はわしの、いや我らヤナト族の魂にして、力の源!!」
両親から武神と豊穣神の両方の資質を引き継いでおり、
五穀(特に稲)を育て、収穫することが自身の力と成長に大きく関わっている。
稲作を繰り返すことによって、当初は太刀打ちできなかった相手でも容易く倒せるようになる。
ゲーム内では稲を収穫して精米が完了することで、パラメーターが成長するという形で反映されている。
また、稲作を重ねていくにつれて便利な農技を習得していく。
豊穣神らしいといえば豊穣神らしい能力なのだが……
「土地が耕されているかどうかが視覚的に判別できる」
「等間隔に田植えを行うためのグリッド線が見える」
「田んぼに近づくと水量と水温が数値として見える」
……便利ではあるが、どうにもAR技術っぽさが否めず。
「一度に掴める苗の量が多くなる」「一度に脱穀できる量が多くなる」
「高速で田植えができる」「高速で雑草を抜ける」
「高速で稲刈りができる」「高速で脱穀ができる」
「高速で……」「高速で……」
……これではただのベテラン農家だ。
たとえ豊穣神といえども、
魔法のように稲を生やせるわけではなく、
厄介な病虫害を退けられるわけでもなく、
結局のところ自らの手足を使い、汗水流して、知恵を絞り、肥溜めと格闘し、
稲田と向かわなければならないのは人間と同じなのであった。
「考えてもみよ!?奉納する稲を
豊穣神自ら作ってはおかしいではないか!」
「いえいえ、何一つおかしなことなどございませぬ。
我が国の豊穣神とは元来そうしたもの」
これはサクナに豊穣神としての力が不足しているのではなく、ヤナトにおける豊穣神とは「そういうもの」らしい。タマ爺によれば、主神カムヒツキですら毎年田植えを行っているとのこと。
また母トヨハナが自ら米作りのノウハウを「農書」として書き残していることや、頂の世全体で不作が続いていて他の豊穣神たちも米を十分に生産できず代わりに豆や麦を主作としていたことから、神といえども米作りには苦戦するものらしい。
そうした中でサクナだけが文字通り「売るほど」大量の米を生産できるようになっていくのは、サクナの豊穣神としての資質の高さを裏付けるエピソードと言える。
武神の子として
「稲作殺法!!」
武器は農具と羽衣と言う、一見すると戦闘向きではない道具を使って戦う。
また米作りを行うことで、農具を使った武技や、羽衣を使った羽衣技を習得していく。
農具は大きく分けて二種類存在し、
これらの農具はきんたに作ってもらうことで上位の農具を入手できる。
「羽衣」は壁や天井・敵に張り付けてロープアクションを行う道具として活躍する。
険しく入り組んだヒノエ島の地形を踏破するために役立つだけでなく、
張り付けた敵を引き寄せて攻撃に繋いだり、弱体化させたり、体力を吸収したりと、戦いにも役立つ羽衣技を使うことができる。
武神の血を引くだけあって戦闘能力は高く、自分よりも遥かに巨大な相手を倒せる程。
鬼たちが跋扈し、人間だけでは出歩くことのできない危険なヒノエ島を、唯一出歩くことのできる戦闘員として奔走することになる。
容姿
母から受け継いだ羽衣と、蝶のように結い上げた髪がトレードマーク。髪色は公式イラストでは黒に近い紫、作中では紫色の髪で表現されている。
ストーリー中では場面に合わせて装いを変えている。
御柱都での宴の最中は、煌びやかな白い衣を纏い、冠を被っていた。
サクナ曰く、この衣は自身の格を示すのに相応しく、相当高価なものらしい。
鬼の討伐や狩りを行うシーンで着用。
腰にはタマ爺の本体である、折れた「星魂剣」を携える。
「片手武器(鎌など)」「両手武器(鍬など)」「衣」「笠」「面」の装備を換装するとそれぞれ見た目に反映される。
我が家での生活・野良仕事をしている間は赤い着物一枚の農民ファッション。
この姿のときだけは羽衣を外している。
都に一度帰り寝所についた際は、白い装束を着ていたこともある。
モデル
サクナヒメ
彼女の名前と稲作(いなさく)をあわせてサクナヒメ(作稲姫)になったと思われる。
また、直接のモデルになったのはウカノミタマであると推測される。
コノハナサクヤヒメは植物と花を司る神であり、(五穀豊穣を祈願されることもあるが)食物や農業との関わりがやや薄い。稲田に纏わるエピソードもあるがどちらかといえば酒造と関連付けられることが多いなど、サクナヒメの直接のモデルとは言い難い。(※サクナヒメも作中で酒を造ることができる)
あくまで名前を拝借したと考えるのが適当だろう。
「武神タケリビと豊穣神トヨハナの子」という出自を考えれば、ウカノミタマがモデルではないかと推測できる。ウカノミタマは武神須佐之男(スサノオ)と農耕・食料の女神カムオオイチヒメの子であり、ウカノミタマ自身も穀物の神として祀られている。
ウカノミタマといえば稲荷神(いわゆるお稲荷様)であり、作中の序盤にサクナヒメが「狐の面」を手に入れることからも関連が伺える。
武神タケリビ、豊穣神トヨハナ
名前の元ネタとなったのはおそらくタケミカヅチとトヨウケヒメ。
オオミズチ退治と両親の出会い、主神との抗争といったエピソードから、
ふたりの直接のモデルになったのはスサノオと、
その妻であるクシナダヒメとカムオオイチヒメだろう。
スサノオと考えられる理由は言わずもがな。
ヤマタノオロチ退治の際に十拳剣「天羽々斬」を損傷させてしまうエピソードもタマ爺(星魂剣)と深く結びついている。
またスサノオと同じく、タケリビも粗暴な性格だったことが作中で知ることができる。
クシナダヒメはヤマタノオロチ退治を通じて武神と出会い夫婦となった点が、
カムオオイチヒメは豊穣の神を生んだ点がそれぞれフォーカスされており、
トヨハナは二人の特徴を合わせたキャラクターであることが伺える。
プレイヤー達からの扱い
- グータラで親の遺産を食いつぶしているニートという設定
- 申し開きの最中の、女神としての威厳もへったくれもない泣き顔
- 「嫌じゃ嫌じゃ(駄々こね地団駄)」「びええええ(迫真の泣き声)」
- 田起こしの最中に呟いてプレイヤーに作業終了を促し、サボろうとする。
- 「そろそろ半分くらいか。もうよいのではないか」→進捗50%。全然耕せていない。
- 「こんなもんじゃろ。あ~、疲れたわい」→進捗75%。まだ完璧には遠い。
- 「完璧じゃ!これ以上ない働きっぷりよ」→進捗95%。完璧と言い放ちつつ完璧じゃない。
駄目だこの女神…早く何とかしないと…と思わせる駄目っぷりを発揮しまくり、見事「駄女神」の烙印を押されるのであった。
メスガミ
オープニングで登場するや否や、ニートでありながら高貴な血筋を笠に着て高圧的な態度で他者を見下し人生を舐め腐ったセリフを吐く生意気なクソガキという一面がクローズアップされる。
こ、こいつ……!
そんな彼女がひょんなことから今までのグータラな生活を剥奪され、
一度もやったことのない稲作をせざるを得ない状況に追い込まれ、
初見では理解不能な専門用語に翻弄されつつ、
冬までに収穫を終えなければならない時間的制約から正解も見えないまま突き進まされ、
一日中野山を駆けずり回って食料を集めながら稲田の管理も並行して行う激烈な肉体労働を強いられ、
あっという間に傷んでいく食料と格闘しながら夕餉の献立を考え、
終わりの見通しの立たない島の開拓&調査という任務も進める……
……と、次々と襲いかかる苦労によってあっという間に「わからせ」られてしまうという展開から、誰が呼んだか「メスガミ稲作わからせゲー」というワードが一気に広まる。
あの宇崎花を演じた大空直美氏がCVを担当したこともそのあたりの評価を後押ししているだろう。
しかし……
苦労人
よくよく考えてみればサクナがヒノエ島に行くことになった原因は人間たちにあり、サクナは巻き込まれただけに過ぎない。
にも拘わらず、人間たちからは謝罪の一言もなく、なし崩し的に島での庇護を求められる。
サクナからしてみれば理不尽極まりない事態だが、かといって彼らを見殺しにするわけにもいかず、致し方なく彼らと共同生活を送ることとなる。
そんな人間たちはそれぞれ性格や能力に問題があり、トラブルを何度も引き起こす。
その仲をどうにか取り持ちつつ、個々の要求に答え、うまいことやっていかなければならない。
さらに人間たちは女子供ばかりで戦う力もなく、唯一の男も武芸の才能が無く致命的なまでに不器用……。
そんな状況で、サクナは米作り及び狩りなど生活の中で大変な仕事の大半を担うことになる。
※ストーリーが進むと米作りのほうは手伝ってくれるようになるのだが、序盤のうちはなにからなにまでサクナ一人でやらなければならない。
贅をむさぼっていた日々はどこへやら。
テクサリ団子(有毒である彼岸花の鱗茎を水に晒してどうにか無毒化したもの)を食べなければならないほど困窮し、大好きな本を読むこともままならず、都に帰りたい、家に帰りたいと一人泣き崩れそうになり……気を落としながらも、寝る間も惜しんでまた次の仕事に奔走する……。
えぇい、もうたくさんじゃ!!
……こうしていざ蓋を開けてみれば、そこには作中屈指の苦労人の姿があった。
あまりにも苦労ばかりの境遇に同情し、「可哀想だ」と声を漏らすプレイヤーも少なくない。
(特に「最初の1年目」が悲惨)
天穂のサクナヒメという作品がサクナの成長をテーマにしているため、打ちのめされる姿を描く必要があるのも致し方ないのだが……。
一応フォローしておくと、苦労ばかりが続くわけではない。
序盤を乗り切るとやがて狩りや米作りのノウハウもある程度身に付き、食糧事情も安定し始める。人間たちも各々の技能に見合った役職を得てサクナを助けてくれるようになり、持ちつ持たれつの関係を育んでいく。
サクナも実った稲穂に愛着がわいて「かわいいのう、かわいいのう」と我が子のように愛おしみ、生活も少しずつ豊かになっていく。
「…はて…出てくる前、わしは水路の樋を
上げたっけ…?下げたっけ…?」
……それと同時に、いつの間にか頭の中が米作りに染まり切り、
たとえ実家にいようとも田のことばかりを考えて夜も眠れない、
プロ農家の鑑にもなっていくのであった。