概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。初登場エピソードはTC27巻収録「しあわせトランプの恐怖」。
見た目は普通のトランプだが、所持しているだけで願いが何でも叶う。ドラえもんも「持ち主の願いを何でも自動的に叶える」と断言していることから、トランプの性能の高さが伺える。それだけでなく、トランプを手に持っていなかったとしても(傍に置いているだけでも)効果を発揮する。
これだけ聞けば便利な道具だと思うかもしれないが、作中でドラえもんが「世の中甘くないんだぞ。いいことずくめで終わるはずがない」と言っているように、このトランプには恐ろしいデメリットが存在する。
このトランプは確かに所有者のあらゆる願いを叶えるのだが、願いを叶える度にトランプの枚数が1枚ずつ減っていく。そして最終的にはジョーカーだけが残り、これまで叶えてきた願いの埋め合わせとして、持ち主に不幸が束になって襲い掛かってくるのである。
おまけに1度でも願いを叶えてしまえば自動的にトランプの所有者となり、捨てようとしても手元に戻って来てしまう。トランプを手放したい場合は誰かに譲ってしまうしかない。
作中での活躍
のび太からトランプを譲り受けたスネ夫やジャイアン等の持ち主達が、トランプに余裕がある内に自分の願いを叶え、その後はトランプを誰かに譲るという方法で安全にトランプを利用していく。最終的にのび太の手元に戻って来た時には既に2枚のみとなっていた。
のび太は、これ以上願いを叶えてはいけないと思い、トランプを焚火の中に放り込むも燃え尽きる前に戻って来てしまい、今度はゴミ捨て場に捨てられていた金庫にトランプをしまい込むが金庫ごと戻ってきてしまい次々と失敗する。
のび太はトランプを手放すことが出来ず、「(ママに叱られるから)家にも帰れない」と考えた。するとママと先生が話しているところを目撃し、ママは先生から「あまり強く叱っても逆効果では?」と言われたことで、叱ろうとしていたのび太を許すことにする。
しかし、急に家へ帰れるようになったことに疑問を抱いたのび太がトランプを確認すると、ジョーカーだけになってしまっていた。先程のび太が「家に帰れない」と考えてしまったせいで、トランプが自動的にのび太の「家へ帰れるようになりたい」という望みを叶えてしまったのだ。パニックに陥るのび太だったが、その金庫をひったくりに奪われてしまう。
のび太から事情を聴いたドラえもんは「その場合はトランプを盗んだひったくりが新たな持ち主になる」と説明する。図らずも、のび太は事なきを得ていたのだ。
その後、ニュースにて「ひったくり犯が犬に噛まれ、ドブに落ち、車にはねられ、落ちたところが交番だった」と報道され、ジョーカーによる不幸はひったくりに降りかかるというオチで終わった。
余談
上記の通りドラえもんは「世の中は甘くない。良いことばかりで終わるはずが無い」と言っているが、ドラえもんが持つひみつ道具の中には「ソノウソホント」や「ウソ800」、「あらかじめ日記」等、ノーリスクでどんな望みでも叶えることが出来る道具が数多く存在する。
しかしこれらの道具は望みを言葉で話したり文章として書かなければいけないが、この「しあわせトランプ」はデメリットこそあるものの、願いを思い浮かべるだけで即座に効果を発揮する。すなわち、この道具なら何もせずとも最速で望みを叶えることが出来るのだ。
その為、ファンの間で度々起こる「最強のひみつ道具は何か?」という議論では、「願いを思い浮かべるだけで効果が発動するしあわせトランプが最強」という意見が挙げられることもある。
それだけでなく、この道具は所有者が意識して願いを思い浮かべていなかったとしても、無意識の内に考えていることさえ「願い事」として受け取ってしまう。上記の初登場エピソードでも、追い詰められたのび太は「家へ帰りたい」と考えている訳ではなく「家へ帰ることも出来ない」と考えただけなのだが、トランプはそれをのび太の願いとして受け取り、家へ帰れるようにしている。
また、2012年版「しあわせトランプの恐怖」(水田わさび版アニメ)では、追い詰められたのび太が「最後の願い事をしなければ良いんだ!そうすれば…」と言いながら願いを思い浮かべないようにしていたが、やはりトランプが自動的に発動し、のび太が家へ帰れるようにしている。
基本的に、しあわせトランプは所有者が願いを思い浮かべることで効果を発揮する「任意全能」と言える。しかし上記の描写を踏まえると、所有者の思考とは無関係に効果を発動させる「常時全能」と考えることも出来る。
デメリットに関しては、ファンの間では様々な意見が挙げられている。
- タイムふろしき等でトランプを使用前に戻せば良かったのでは?
- 「トランプを手放したい」と願えば良かったのでは?
- 「ジョーカーの効果を無くしてほしい」と願えば良かったのでは?
- 「トランプ1枚で願いを何度でも(無限に)叶えられるようにしてほしい」と願えば良かったのでは?
これらが可能かどうかは原作版で描かれていない為不明(ただし「タイムふろしき」以外の指摘に関しては、しあわせトランプは「願いを何でも叶える」と明言されている為、上記の願いを叶えることは可能と考えることが出来る)。
関連タグ
ババ抜き:恐らく元ネタ。
仮面ライダー剣:ジョーカーが残ることによる不幸に加え、のび太の手元に戻ってきた際のカードがハートの2とジョーカーだったりと、偶然にも酷似している。
クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険:こちらも願いを叶える魔法のトランプが登場する作品。ただし手に持って呪文を言わなければ発動しない。
びんの悪魔:ロバート・ルイス・スティーヴンソンの作品。しあわせトランプと性質のよく似たビンが登場する。
猿の手、三つ目のトーテムポール:しあわせトランプ同様、使用者の願いを叶えるがデメリットもあるアイテム。前者の『xxxHOLiC』版においては、「思っただけで発動」「全ての願いを叶えた後に持ち主に災厄を齎す」という共通点がある。