概要
2008年に登場した京阪電気鉄道の優等列車向け車両で、同年10月19日の中之島線開業に合わせて営業運転を開始した。当初は主に快速急行などの運用に就いていたが、2011年5月28日のダイヤ改正で淀屋橋駅~出町柳駅を結ぶ特急(京阪特急)が10分ヘッドで運転されることになったため、現在は8000系とともに特急を中心に運用されている。
当系列はフレキシブルに組成を組み替えるができ、8両のほか、7両・5両・4両と自由自在に短縮できる。中之島線開業の1番列車では普通出町柳行きとして7両で運転されたほか、2009年10月のファミリーレールフェアにおいては団体臨時列車として5両、2010年7月7日の交野線での七夕イベントとしては臨時列車おりひめとして4両で運転された実績があった。
デザイン
車体
前面デザインは「風流の今様」をコンセプトとし、「花鳥風月」になぞらえて「月」をモチーフとしたものとなり、前照灯は丸型のものが3灯で円弧状に並んでいるほか、尾灯・種別灯はダイナミックスラッシュムーンをデザインしたものとなっている。車体の色は京のれんや水都大阪をイメージしたエレガントブルーに都市のきらめきや石庭の川の流れを感じさせるアーバンホワイトにスマートシルバーの帯をまとっている。行先表示装置は京阪で初となるフルカラーLEDを採用し、集電装置はシングルアームパンタグラフ(PT-7163-A)を搭載している。(13000系では廃棄物削減のため下枠交差式となった。)
車内
座席は転換クロスシート(プレミアムカー除く)で、乗務員室付近を除く車端部はセミハイバックロングシートとなっている。クロスシートは1+2列配置で、先頭部は2+2列配置となっている。山側が1列、川側が2列となっている。座席表皮は当初は東レのエクセーヌを採用していたが、現在は消臭対策としてセーレンのデオエストを使用している。ヘッドレストは黒で、「COMFORT SALOON 3000 SERIES」の文字が刻まれている。バリアフリー対策のため、フリースペース(車いすスペース)が各車両大阪寄りの山側に配備されている。なお、扉付近は座席配置の関係があってか乗降の妨げとならないよう、立つスペースがない。
つり革のデザインはサヤ(ストラップ)と吊り輪が紺色、ベルトが黒色である。扉付近は乗降の妨げとならないよう短く、優先座席付近はより多くのお客さまに利用していただけるよう長くなっている。各扉の上部に車内案内表示装置(LCD)が設置されており、電車の案内のほか、京阪沿線のおでかけ情報やニュース、天気予報などが見れるようになっている。
貫通扉は電動式の自動扉で、取っ手を握れば開くようになっている。窓は中央部が固定式二重ガラスで、先頭部および車端部が開閉可能となっている。蛍光灯(照明)はグラスファイバー製のカバー付きである。クーラーは10000系に続いて集約分散式のものを2台搭載している。
化粧板は扉が墨木目柄、壁面が桜鼠の和紙柄となっている。床は石畳をイメージした格子柄である。カーテンはフリーストップ式のロールカーテンを使用し、ループ状の水玉模様がデザインされている。
乗務員室
運転台は7200系以来続いているツインレバー式のツーハンドルマスコンで、中央にレバーシングハンドルがある。
マスターコントローラーは左側が力行で最大5ノッチ、右側がブレーキで常用7段、抜き取り位置、EB(非常)となっている。
また、コックピットの左側には各パイロットランプ、右側に車両情報モニタが付いており、現在運行している列車や車両の状態を見ることができる。機器スイッチ類はさらに折れ曲がったところにある。この運転台の仕様は13000系にも反映された。
前面装飾追加改造
2017年8月から9月にかけて、前面貫通扉の交換と左右の装飾灯パネルの設置が行われた。
特急運用時には「鳩」マーク表示、快速特急「洛楽」運用時は「洛楽」の文字を表示し、左右の靄の装飾灯パネルを点灯させて列車種別の違いをわかりやすく表現。全6編成施工後、液晶ディスプレイの表示を開始した。
組成変更(プレミアムカー)
デビューから10年以上が経過した2021年、全6編成とも座席指定車「プレミアムカー」を組み込むことが決まった。連結位置は8両編成のうちの6号車。
8000系の場合は編成から中間車1両を抜き出して改造工事を行う手法がとられたが、本系列では最初から新造車両を組み込む方式を取った。床下機器の配置関係から、7号車・3750形が抜き取られ旧6号車・3550形が7号車へ移動、そして新造車3850形が新6号車として挿入されている。
6号車の行先表示器には、車両用側窓と一体化したAGCのガラスサイネージ「infoverre(インフォベール) Windowシリーズ Barタイプ」を採用。複層ガラスの層間に液晶ディスプレイを内蔵することで省スペース化を実現した。
編成から抜き出された3750形の活用方法については現時点では未発表である。
運用
- 2018年9月15日ダイヤ改正時点では主に淀屋橋駅~出町柳駅間の特急や平日ダイヤの快速特急『洛楽』を担当しているほか、車両基地からの送り込みの間合いとして快速急行・急行・準急・区間急行・普通でも運用されていた。
- プレミアムカー挿入後の2021年1月31日ダイヤ改正時点では、淀屋橋駅~出町柳駅間の特急・平日ダイヤの快速特急『洛楽』運用に集約され、デビュー当時の中之島駅乗り入れ定期運用は設定終了。
性能
編成 | 8両編成6本(48両) |
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営業最高速度 | 110km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
起動加速度 | 2.8km/h/s |
減速度 | 4.0km/h/s(常用最大)・4.3km/h/s(非常) |
全長 | 先頭車18,900mm・中間車18,700mm |
全幅 | 2,782mm |
全高 | 4,138mm |
車体材質 | アルミニウム合金 |
軌間 | 1,435mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
主電動機 | 三相かご形交流誘導電動機(出力200kw) |
駆動装置 | TD継手平行カルダン駆動 |
歯車比 | 85:14=6.07 |
制御装置 | 東洋電機製造IGBT素子VVVFインバータ制御 |
台車 | ダイレクトマウント式空気ばね台車(電動車は軸梁式、付随車はモノリンク式) |
制動方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ |
保安装置 | 京阪形ATS、K-ATS |
製造メーカー | 川崎重工業兵庫工場 |
こぼれ話
- 本形式は1998年2月運転開始の直通特急用として11年前の1997年に登場した山陽電気鉄道5030系との共通点が多い。
- 製造メーカーが川崎重工業兵庫工場
- IGBT素子使用のVVVFインバーター制御
- ボルスタアンカー付ダイレクトマウント軸梁式空気バネ台車
- 扉間1+2配置の転換クロスシート連結部ロングシートの座席配置(乗務員室後ろはロングシート)
- アルミニウム合金車体
- アルミ車体組立技術として摩擦撹拌接合を採用(2000年製の2次車のみ)
- 側窓カーテンがフリーストップ式
- 座席に使用されている生地は東レのエクセーヌという、高級自動車の多くに採用されているものであり、発注を受けた東レは「本当に鉄道車両の座席(しかも特別料金不要)に使うのか」と問い返したという話が伝わっている。ちなみに東レの大阪本社はその中之島線沿線にある。