概要
富士重工業(スバル)の軽貨物車(軽トラ)及びその派生の軽乗用1BOXバン。昭和36年に初代モデルが発売され、現行型は8代目(トラック:2014~、バン:2022~)にあたる。
赤帽のトラックとして使われていることは余りにも有名である。ちなみにこの赤帽仕様は内装の細かな点やエンジンをはじめ、普通に市販されているサンバーとはかなりモノが違い、赤帽仕様から一般用にフィードバックされた部分もあるという。
所有者以外にも確認できる違いとして、NGK等のスパークプラグの適合カタログを見ると赤帽仕様は純正指定熱価がノーマルより1番高い。
そしてエンジンオイルもやや固めのものを入れる指示がされている。長距離の高速巡航でエンジンの過熱を抑える意味合いもあり、赤帽サンバーは大阪から東京まで1日で往復しても大丈夫と言われている。
これは軽トラとしては車室空間が広く、エンジンが最後端にあり空荷でも重心移動が少なく、四輪独立懸架のため不快な音や振動がドライバーに伝わりにくく「ドライバーに優しい車」であるからこそ実現できるものである。
もっとも、赤帽が発足した当初、「普通の軽トラでは仕事が出来ない」という(個人)事業者が続出したため、それを取り仕切る団体が各(軽)自動車メーカーに専用車を設計・製造するよう依頼したものの、スバルしか相手にしてもらえなかった、と言う事情があった。
上記以外にもスイッチ一つで4WDへと切り替えが可能なので悪路への耐性も良く、農業方面でも活躍している。この機構はサンバーが初めて採用したもの。
また他社の軽トラよりも運転席が広く出来ていて、ゆとりのある作りとなっていた。
本車種は駆動方式がポルシェが好んで用いるリアエンジン・リアドライブであることなどから、ネタや冗談で「農道のポルシェ」と呼ばれることがままある。
もっとも、実際に排気音はポルシェに似ているし、前述の様に巡航性能も軽トラとしては高い物であるため、あながちただの冗談でもない。
また、リヤエンジンのメリットとして簡易な点検であれば荷台上の荷物を降ろさず後部メンテナンスハッチを開くことで行える点も商業用として重宝された点である(アクティトラックのメンテナンスハッチは荷台奥にあり積荷を下ろさないと点検できない。キャリイやハイゼットのメンテナンスハッチは運転席下にある)。
だがスバルの軽自社生産撤退に伴い、乗用仕様(ディアスワゴン)はハイゼット(アトレー)のOEMになってしまった。トヨタの資本が入った際の懸念事項がいよいよ現実のものとなってしまったということである。このことに関し、「むしろハイゼットを生産中止にしてサンバーを残せ!」という発言がしばしば見受けられた。
……と言われるが、実はトヨタにとっては風評被害もいいところ。実はトヨタは筆頭株主になって以来「固定客のいるサンバーを早くフルモデルチェンジしろ!」と言い続けていたらしい。実際にスバルの軽を撤退させたがっていたのは前筆頭株主だった米GMで、当時同じく傘下だったスズキとスズキ主導で統合させたがっていた。
スバルによれば軽自動車事業は赤字体質で、自社で普通車から軽自動車まで開発生産を行うのは難しく、その分の開発資源をアイサイトやグローバルモデルに回す方が良いという経営判断(いわゆる選択と集中)で撤退を決めたとしている、だが。
スバルの体質として軽自動車でもコスト高になっても性能に妥協しない(オーバースペックを与えたがる)傾向があり…………
実はサンバー自体はスズキ・ダイハツの寡占状況にある軽自動車市場でこの部門だけ結構シェア確保率が高く、収益率も悪くなく、とにかく「サンバーの新車オーナーは次も絶対にサンバーを買う」商品だったので、トヨタとしては開発方針にアレコレ口を出しても廃止したくはなかった。
勘違いされがちだが、軽自動車のニーズは車両本体の薄利多売だけにはない。ワゴンRに端を発する軽トールワゴンのヒットとそのラグジュアリー化でも分かる通り、維持費が安いことがミソなのだ(他にも、狭く入り組んだ日本の道路で取り回しやすいという点もある)。この点でスバルは別に不利でもなんでもなかった(それで不利なら他車種でも不利である)。単にカネがなかったのである。
むしろここまでスバル軽が保ったのは、サンバーのかつての僚友レックスが文字通りその身を捧げる形で残してくれた「奇跡の遺児」EN07型エンジンをちょいちょい改良しつつも使い続けてこれたおかげだった。
時折しもリーマンショックから民主党政権下の構造不況、トドメに東日本大震災で主力工場が群馬にあるスバルは地震・津波での直接被害は少なかったものの、福島第一原子力発電所事故も合わさって、交通の混乱・東京電力の太平洋沿岸地区の発電所の被災による電力不安と、最悪の条件になった。
助けようにもトヨタ自身連結赤字の状態ではどうしようもなかった。
歴史にもしがあるとして、サンバー(と言うかスバル軽)が助かる道があるのなら、それはかつて袂を分かったスズキに支援を求める苦渋の道しかなかった。あそこは2009年から2012年の間も年次決算で赤字を出さなかったのだから。しかもこここそ軽としてはどう考えてもオーバースペックのクルマ(当然決して販売価格も安くはない)をモデル末期に度々流れる廃盤デマを踏み潰して製造・販売し続けている。
2011年7月26日にサンバー50周年記念としてWR BLUE LIMITEDが1000台限定で販売された。事実上これがスバルが製造するサンバーでの最後の特別仕様車となった。
そして2012年2月29日、スバル・サンバーは群馬県太田市の本社工場から「スバル最後の軽自動車」として出発していったのだった。
現在はサンバー生産ラインでBRZ/86が生産されている。また、スバル系ディーラーでは軽自動車の販売を継続するために全てダイハツ製の車種を販売しており、このサンバーは7代目以降はハイゼットのOEM車として販売している。
赤帽仕様車はハイゼットのOEMになっても引き続き用意されるが、左サイドミラーをドアではなくフロントフェンダーに装着、収納式パーキングブレーキレバーなどの一部の赤帽専用仕様は廃止されている。
なお、ハイゼットが伝統的に用意してきたデッキバン(スバル呼称オープンデッキ)は2020年1月時点で赤帽仕様として設定されていない。また、バンは四駆のMT車のみが用意され、トラック系で用意されている4速AT車は設定されない。
関連イラスト
- 初代
- 二代目
※運送業者の赤帽は1975年に発足した(詳細はこちら。)が、二代目は2年前に生産中止。
- 三代目サンバー
- 四代目サンバー
- 五代目サンバー
- 六代目サンバー(前期型・後期型)
- 八代目サンバートラック
※2022年にマイナーチェンジされたモデル。
関連タグ
スバル(ブランド)/富士重工業 農道のポルシェ ダイハツ ハイゼット