概要
JRAの管理するトレーニングセンター。東日本における競走馬の調教拠点であり、中央・地方問わず、日本国内最大級の規模を誇る。
前史
1970年代までは東京競馬場・中山競馬場及び中山競馬場白井分場(厩舎のみ所在、現在のJRA競馬学校)が調教実施の中心的存在だったが、調教に必要なコースの本数が足りず、難しいやりくりを強いられた。
また、競馬場周辺の市街化で厩舎が手狭になり、匂いなど周辺の環境問題への対応を迫られたため、美浦トレセンが建設された。当初は八王子市の郊外が候補に選定されたが、多摩ニュータウン構想の浮上で十分な敷地が確保できなくなり、最終的に美浦村が選定された。
施設
2600頭以上を収容可能な厩舎、7つのトラック、2000mのウッドチップコースや障害競走馬用調教コース、坂路コース、プール、海外遠征のための検疫厩舎、馬に麻酔をかけて寝かせて行う手術もできる競走馬用診療所などを備え、規模・設備は世界的にもトップクラスとされる。
これだけ大規模な施設が建設された背景として、美浦トレセンの建設当時は中山競馬場の地権者会とJRAの間で関係修復不能寸前に至る深刻なトラブルが生じ、万一の事が起きて中山競馬場を閉鎖・移転しなければならなくなった場合にトレセンを競馬場として活用できるよう設計した事があるからだという。
敷地内には厩務員宿舎、騎手宿舎、独身寮、職員宿舎などトレセン・競馬関係者のための住居も設置され、敷地内で1500世帯5000人が生活している。これは所在地の美浦村の人口のおよそ3割に相当する。
著名な所属調教師
厩舎地区は北と南に分かれている。
北
国枝栄
1990年厩舎開業。
アパパネ、アーモンドアイで牝馬三冠、アパパネの娘アカイトリノムスメで秋華賞など、中央994勝・地方15勝(うちGⅠ22勝)をマーク。
アーモンドアイが牝馬三冠を達成したことにより、初めて三冠を複数達成したJRAの調教師となった。
2004年から2008年まで4年連続で優秀調教師賞(関東)に輝いており、国内でもトップクラスの成績を誇る。
著名な管理馬はアーモンドアイ、アカイトリノムスメ、サークルオブライフなど。
小島茂之
2003年厩舎開業。
ブラックエンブレムで秋華賞、クイーンスプマンテでエリザベス女王杯など中央320勝・地方13勝。
上記のGⅠ2勝ではいずれも11番人気で、三連単100万円越えの特大万馬券を排出している。
著名な管理馬はブラックエンブレム、クイーンスプマンテ、オニャンコポンなど。
和田正一郎
2009年厩舎開業。
「障害界の絶対王者」ことオジュウチョウサンで障害GⅠ9勝の偉業を打ち立てるなど、中央192勝・地方6勝。
父の和田正道も元調教師。
手塚貴久
1999年厩舎開業。
ユーバーレーベンで優駿牝馬を制するなど、中央599勝・地方9勝(うちGⅠ9勝)をマークしている。
所属馬は額に白い「T」のマークが入った青色のメンコを着用することも多い。
主な管理馬はユーバーレーベン、アジアエクスプレス、アサマノイタズラなど・
南
戸田博文
2001年厩舎開業。
キストゥヘヴンで桜花賞、フェノーメノで天皇賞(春)を連覇など中央487勝 地方9勝(うちGⅠ3勝)をマーク。
とてもコワモテかつ常にサングラスをかけているため、新潟でタクシーに乗った際運転手に「競馬場まで」と言ったところ面会に行くヤクザと勘違いされて新潟刑務所に連れていかれたという珍しいエピソードを持つ。
主な管理馬はフェノーメノなど。
鹿戸雄一
2008年厩舎開業。
スクリーンヒーローでジャパンカップを制し、エフフォーリアが皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念を制して2021年の年度代表馬に輝くなど、中央369勝。
厩舎開業前は藤沢和雄厩舎で技術調教師として働いており、ゼンノロブロイのイギリス遠征に帯同した経験もある。