概要
北陸方面の特急で運用中であった681系の改良型・増備車として2001年に登場。
681系と共にそれまで「雷鳥」「はくたか」「しらさぎ」「加越(~2003年3月)」で運用されていた485系の後継車両となった。
2011年に「雷鳥」の485系を完全に置き換え、北陸方面で運用される全ての特急車両の新型化を完了。これによりJRが独自に設計・製造したいわゆるJR世代の特急形車両として最多の車両数となった。(製造総数270両)
最高速度は130km/hだが、160km/h運転対応の準備工事がなされており、また8000番台は北越急行時代にほくほく線内において160km/h運転を行っていた。
681系と同じく、集電装置や主変圧器・主整流器を搭載する682形と、制御装置や主電動機・補機類を搭載するモハ683形・クモハ683形とでユニットを組む方式のため、パンタグラフを搭載する車両=電動車という構成ではない。
営業最高速度 | 130km/h、160km/h(8000番台・ほくほく線内) |
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設計最高速度 | 160km/h |
起動加速度 | 1.8km/h/s |
減速度 | 4.6km/h/s(常用最大)、5.2km/h/s(非常) |
歯車比 | 18:94=1:5.22 |
駆動装置 | 平行カルダン駆動・歯車継手方式 |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 ※出力は1時間定格
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制御方式 | 3レベル電圧形PWMインバータによるVVVF・ベクトル制御
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台車 | 軸梁式ボルスタレス台車
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製造所 | 近畿車輛・川崎重工業・日立製作所・日本車輌製造・新潟トランシス |
681系との相違点
683系は外観や内装、基本的な設計は681系に準じているが、以下のような変更点が存在する。
- 非貫通形先頭車の先頭部デザインを変更、連結器カバーを廃止、681系と比較してライト周りが精悍なデザインとなった
- 鋼製車体からアルミダブルスキン構造に変更、これに伴い側面窓を連続窓構造から独立窓構造に変更
- 付属3両編成の先頭車は両端とも高運転台貫通構造に変更、12連の組成が可能に
- 従来のGTOサイリスタによるVVVFインバータに代わり、IGBT素子を使用した補助電源装置一体型の車両制御装置を採用
- 主整流装置を他励式サイリスタ位相制御コンバータから、IGBT素子による自励式3レベルPWMコンバータに変更
- 新幹線のように、空気シリンダで客用ドアを外側に押し付ける機構を標準装備
- 電動車の車輪ディスクブレーキを省略(8000番台除く)、160km/h運転対応を準備工事扱いとし車番が元番号+1000とされている
- 空気ばね高さを引き下げ、ホームと床面の段差を低減
- 荷棚下の補助照明を廃止し、代わりに荷棚に読書灯を設置
- 主電動機出力の向上(定格220kW→245kWまたは255kW)
- ドアチャイムの追加
- プチカフェテリアの廃止
番台区分
0番台
「サンダーバード」用。54両が製造された。登場当初は金沢総合車両所に所属し、現在は吹田総合車両所京都支所に所属。6両編成・3両編成が6本ずつ在籍。
2001年3月のダイヤ改正で運用を開始し、485系「スーパー雷鳥」を置き換えた。その後追加増備が行われ、置き換えられた681系によって485系の「はくたか」を置き換えた。
2000番台
「しらさぎ」用5+3両編成と「サンダーバード」用3両増結編成の2種類87両が製造された。
前者は2015年3月に「しらさぎ」の運用を離脱、直流化改造を受け形式を289系に変更の上、関西地区の特急に転用された。後に289系化された3両編成の一部が2019年に683系に復帰している。
乗降の利便性を考慮して、ドア位置が見直されている。最前列の座席には、大型テーブルとコンセントを装備。クロ682形には展望に優れたフリースペースがあった。
現在の683系2000番台は専ら増結編成として運用。
4000番台
「サンダーバード」用、9両編成。12本108両(T41-T52)が所属、本形式の最多勢力でもある。この番台の登場で雷鳥として運用されていた485系が引退し、全列車がサンダーバードへ移行した。
先頭車は両端とも貫通形であり、クロ683側は貫通扉を準備工事とした。パンタグラフがシングルアーム式に変更されたほか、衝突対策のため車体強度の向上がなされた。ドア位置は2000番台に準じている。
内装では、座席が新型となり、後に287系や223系Aシートにも採用された。グリーン車の飾り照明を廃止。また、サハ682形のデッキには扉付きのフリースペースが設けられた。
また全ての編成のグリーン車座席へのモバイルコンセントを設置、バリアフリー法施行を受け車いす対応を視野に入れた便所や多目的室の大型化など時代に合わせた設計変更が行われている。
非貫通型先頭車を持たないなど他の番台と異なる特徴を持つため、4000番台にならい一部の人々からは「ヨンダーバード」と呼ばれることも。
8000番台
元「はくたか」用で、元北越急行所属車。9両のみの製造であり6両編成・3両編成が1本ずつ在籍。同社所属の681系と共に運用されていたが、検査はJR西日本への委託となっていた。また683系で唯一、160km/h運転に対応し実際に同速度で運行されていた。
登場は2000番台よりも後だが、内装は0番台に準じておりコンセントが省略されている。
2015年の北陸新幹線開業により、本車両を含む「はくたか」用の北越急行所属車はJR西日本へ売却された。現在はJR西日本の所属となっており、「しらさぎ」用681系と共通で運用されている。私鉄車両がJRに売却された例としては209系3100番台(元東京臨海高速鉄道70-000形)、キハ125形400番台(元高千穂鉄道TR400形)に次いで3例目となる。
なお本番台は新潟トランシス(車体の構体製造のみ川崎重工業が担当)製造という特急電車としてはかなり珍しい出自である。
(新潟トランシスは気動車が主力の車両製造会社であり、特急型電車を製造したのは本車のみ)
これは納入先の北越急行が同社の前身である新潟鐵工所が製造した近郊型電車(こちらも珍しい存在である)を導入していた経緯もあったものと思われる。
運用
JR西日本の金沢発着の特急(サンダーバード、しらさぎ、能登かがり火、ダイナスター)などで使用されている。また、「しらさぎ」は列車の半数が米原~名古屋間のJR東海区間に乗り入れている。
また平日朝の時間帯にはJR西日本の通勤特急「びわこエクスプレス」にも使われる。(米原駅発着便担当:683系4000番台を使用)
またJR東海の「ホームライナー大垣」にも使用される事がある。(主に681系使用ではあるが683系8000番台も運用に入る)
サンダーバード用の編成は2015年以降、リニューアル改造と塗装変更を実施している。
廃車
683系2000番台のうち「しらさぎ」用5+3両編成を289系として転用改造する際、編成の組み換えで余剰中間車が2両発生した。この2両は以下の手順を踏んで廃車となった。
製造日付 | 2003年6月27日 | 2003年6月27日 |
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竣工当時の車号 | サハ683-2509 | サハ683-2510 |
289系化 | 改造なし | 2015年4月24日 |
廃車当時の車号 | サハ683-2509 | サハ289-2510 |
廃車日付 | 2016年7月11日 | 2016年7月11日 |
余談
683系の中でも最初に新造されたクロ683-1は製造工場である日立製作所笠戸工場での性能確認試験中にブレーキが故障。車止めに激突して車体が大きく歪んでしまい廃棄された。
この事故の直後、現場には慌てて衝突試験と書かれた看板を建てたと言う噂。
JRへはクロ683-1を除く8両を先に引き渡し、8両で試運転を行ったが交流区間に入った途端電動車2ユニットが故障し、電動車1両、付随車(故障した電動車2両含む)7両で車庫まで自走して戻った。
クロ683の代替新造が完了したためJRに先に引き渡されていた8両はもう一度日立製作所へ入場。
2代目クロ683-1を連結して何食わぬ顔で再度出場した。
しかしクロだけ妙に綺麗で一部の人達にはバレバレであった。
現在の時点では北陸本線の主力を受け持っている車両であるが、2022年度末に敦賀までの延伸開業が予定されている北陸新幹線の状況において、その開業時に大きな変動を受けるものと予想されている。
関連イラスト
関連タグ
287系 - 2010年に登場した683系の直流専用バージョン
289系 - 683系の改造車