概要
宇宙戦艦ヤマト完結編とは1983年春に公開された劇場版アニメである。宇宙戦艦ヤマトIIIの最終回の最後で告知され、当初は1982年夏公開と発表されたが、製作遅延で延期。しかしそれでも間に合わず、ギリギリアウトのタイミングでフィルムを納品した。しかも完成度にも妥協が入っていたので、納得しきれなかった西崎義展は、なんと上映劇場を巡ってフィルムの最後のシーン部分を切って回るという暴挙に及んだと云われている。
それでもなお満足しなかったのか、70mm版という再編集版まで作った。DVD以降のは全部70mm版スコープサイズなので、35mm版や70mm版スタンダードサイズが観たい人はVHSを探そう。
そして、これで完結する…筈だったのが、それから1年過ぎた1984年に「ヤマト復活3ヵ年計画」をぶち立てることに。もっともその第1弾となるべき『オーディーン 光子帆船スターライト』がいきなりこけたので頓挫したが(第2弾のデスラーが主役のスピンオフは観てみたかったという声もちらほら)。
その後は権利関係のいざこざやらなにやらありまくって何度も頓挫した末、2009年末に宇宙戦艦ヤマト復活篇が作られる。が、惨敗に終わる。後にリメイクシリーズが当たったため、こっちの元祖シリーズは放置され未だ沈んだままの状態。
あらすじ
銀河系に別次元の銀河がぶつかるという大惨事が起きた西暦2203年。ヤマトはガルマン・ガミラス帝国の救助へ向かうも失敗。盟友デスラーも死去したと思い、古代進はその死を悼む。そして、ある惑星で1人の少年を救助するが、その星はディンギル星であり、その少年はディンギル星の王子だった。ディンギル星を水没させたのは回遊惑星アクエリアスという水惑星で、地球にも進路を向ける事になる。
一方、弱肉強食を主張するディンギル帝国の生き残りは残存勢力で地球制圧を企み、アクエリアスをワープさせようとしてきた。このままでは地球はディンギル星と同じように水没し、地上の全生命は死滅してしまう。
アクエリアスのワープを阻止するため、ヤマトは再び出撃することになるのだが、古代は先のディンギルとの戦いでの失態からヤマト艦長を辞任。そして後釜にはあの男がやって来た。
登場人物
- 古代進
前作から引き続き艦長だったが、冒頭で判断ミスから乗員を多く死なせてしまい、自責の念から艦長を辞任する。
それでもヤマトへの未練が残り、戦闘班長として復帰する。
古代が辞任した後、ヤマトの新艦長に就任した人物。
ディンギル帝国の王。
ルガール大総統の長子。父から太陽系制圧艦隊の指揮を任される。
ルガール大総統の次子。ディンギル星水没時に見捨てられていたところをヤマトに救われる。
水惑星アクエリアスに宿る女神。
登場勢力
- 地球連邦
6000年後にアクエリアスの襲来を受けるはずだったが、ディンギルがアクエリアスをワープさせたため、危機が十数日後に近づいてしまう。
建国数年も経たずに滅亡とはやり切れなかった。……と思ったら普通に存続していたことが数十年後(現実時間)に明らかに。
登場時点で本星滅亡とはお気の毒、しかし残忍野蛮な勢力で、リアルロボットアニメ全盛の1983年では既に時代遅れに。
長楕円軌道で銀河を回遊する水惑星。
接近した星に引力の干渉で水と生命の素を与えており、生命の無い星にとっては恵みとなり、生命のある星にとっては厄災となる惑星。
メカニック
地球防衛軍
地球を救うべく、最後の航海へと旅立つ。
ヤマトが沈むと言えば沖縄特攻!ならば機体も日本海軍っぽく!ということで完結作にして最初で最後の旧日本海軍機色になった。
相変わらずのチート機だが、中盤には例によって発艦できないというピンチに。
- 戦艦
- 巡洋艦
新型の戦闘艦(たった3年ちょっとの間に何回更新するんだこの艦隊……)。
残念ながらディンギル艦隊のかませ犬としての出番のみとなっている。
- 駆逐艦
こちらも新型。わずかな生き残りがヤマトの出撃に同行し、冥王星でディンギル艦隊相手に奮闘する。
ディンギル帝国
- 都市衛星ウルク
水没するディンギル星から脱出した宇宙要塞。惑星規模の物体をワープさせられる装置を有する。
- 巨大戦艦ガルンボルスト
ディンギル艦隊の大型戦艦。地球の避難船団をハチの巣にした。
- ハイパー放射ミサイル
ディンギルの切り札。
命中した艦の内部に放射性物質を流し込んで乗員を殺すというなかなかえぐい兵器。
乗員が死ぬためダメコンも機能しなくなると思われ、対象はそのまま何もできず破壊されてしまう。
ガルマン・ガミラス帝国
- デスラー艦(2代目)
なぜか2代目。
なぜか駆逐型デストロイヤー艦でなくこちら。
こぼれ話
- 1983年春は角川初の劇場アニメ『幻魔大戦』とサンライズ初のオリジナル劇場アニメ『クラッシャージョウ』と対決となったが、結果は幻魔大戦が1位、ヤマト完結編が2位、クラッシャージョウは3位となったが、クラッシャージョウは興行成績が6億と10億に到達しなかった。
- 年代設定が2205年から2203年に巻き戻ってたり、キャラクター達を雑に殺したりと色々ケチが付けられている本作だが、最大に物議を醸したのが沖田十三の復活で、松本零士は初作で生還させたかったのだが、スタッフの説得で地球到着目前で永眠する結末を受け入れたのに、復活したのだからお怒り奉るのも無理はない。そして、折角蘇った沖田もヤマトと運命を共にし、結局西崎の餌食となってしまった。『宇宙戦艦ヤマト2199でコスモリバースと融合したのはこの展開を阻止する為じゃないのかという人も割といる。
- 公開から2年後の1985年に本作品を題材としたレーザーディスクゲームがタイトーからリリースされた。だが「忍者ハヤテ」と「タイムギャル」とは異なり家庭用ゲーム機への移植はされていない。
- アクエリアスは公開翌年の1984年にコカコーラが同名のスポーツドリンクで商品になってしまったからか、『2199』ではアケーリアスに改名された(ファンサービスで匂わせる程度の登場なのであえて微妙に変えて明言を避けただけかもしれないが)。同じく『2199』でブラックタイガーがコスモファルコンにリメイクされたのも、ブラックタイガーが冷凍エビの通称として浸透してしまったため。