概要
世界中に生息するとても身近な虫であり、市街地やちょっと古いマンションの階段などで見かけることも多いはず。
見た目としては後述の名前の通り大きな蚊のようだが、同じ双翅類とはいえ蚊とは別グループで、蚊の特徴的な針のような口吻もない。
体長はせいぜい数mmから4cmほどだが、脚が極端に細長いため、ミカドガガンボのような大型種だと掌にも収まらないほどで中々インパクトがある。
幼虫は蛆虫状で、タフな表皮とお尻の先にある1対の呼吸用の穴(気門)が特徴。これが頭部より目立つうえで顔にも見えるため、しばしば前後逆さまに見間違えられる。
1万5,000ほどの種が知られ、双翅類の中では種数が最も多い科の一つである。
名前
日本語の名前の由来は「蚊母」から転じたもので、漢字および中国語名にすると「大蚊」となる。
また、地方によってはカトンボ、ショウジハリ、カゲロウとも呼ばれている。
長足の羽虫であることから鳥類の鶴(crane)に連想し、正式の英語名は「crane fly」("鶴蠅")と呼ばれる。
イギリス英語だと「daddy-longlegs」(あしながおじさん)と表現される事もある。
児童文学の方の『あしながおじさん』(Daddy-Long-Legs)はザトウムシのアメリカ英語での呼び名に由来するので関係ないが。
幼虫は表皮が皮革(leather)のようにタフであることから「leatherjacket」と呼ばれている。
学名「Tipulidae」はガガンボ属の学名「Tipula」に因んでいるが、これはラテン語で「ミズグモ」を意味する。
生態など
幼虫は地中や水中で生活する。多くのものは草食で藻類や腐植を餌とするが、他の虫を捕食するものもいる。幼虫期は数週間から1年ほどと長い。
蛹は地表から突き出したような形の繭に覆われ、数週間から数ヶ月後に成虫がその頂点を破り、長い脚を伸ばして羽化する。
成虫は蚊と異なり、オスもメスも主な餌は花の蜜。成虫期は短く、約10日程で尽きる。
成虫はとにかくクソザコな虫として有名。見た目のインパクトも相まってその貧弱さが目立つ。
ちょっと振り払っただけで瀕死に陥る程のダメージを受け、細長い脚や翅はちょっとした衝撃ですぐにもげる。
通常翅は機能的で一応飛行はできるものの、空を飛ぶ姿ですらフラフラと危うい軌道な上にスピードも簡単に捕まえられてしまうレベルで遅いなど、どこまでも頼りない(極稀に飛行能力が強化された種類が存在するが……)。
ガガンボが一体何をしたのだろう?
ここまで貧弱だと子孫を残せる前にすぐ遭難して死にそうだが、意外とそうでもない。
実際、ガガンボの成虫は迅速にその役目を果せる仕組みで、メスは羽化してからお腹が既に成熟した卵を抱えて、短い命の中でさっさとオスと交尾をし、間もなく産卵を済ませるようになっている。
また、ユキガガンボという名前の通り冬の雪の上で活動し、翅が退化して飛べない代わりに寒さに強い種類もいる。
天敵は成虫では鳥やカマキリなどの捕食者、幼虫と蛹では寄生性のハエや冬虫夏草などの菌類が知られている。
人間との関わり
基本は人間に直接害を与える事はないが、草食の幼虫は種類により農作物の根を食べるため、農家の方々からは害虫扱いされる事もある。また、工場ではその成虫の脆い身体が異物混入の恐れがある。