吉川優子
よしかわゆうこ
プロフィール
概要
北宇治高校の2年生で、吹奏楽部に所属。トランペットを担当している。
勝気な性格の持ち主で、そのストレートな物言いによって部内でも大きな影響力を持っている。また、自身よりも部の仲間を思いやる姿勢や、裏表のない純粋な心根ゆえに、周りの部員たちからの信頼は厚い。
フルートパートの傘木希美やダブルリードパート(オーボエ担当)の鎧塚みぞれたちと同じく、それなり以上の吹奏楽部の強豪校である南中学校の出身。中学時代に吹奏楽コンクールで苦い経験を味わったり、高校の部活を始めた当初も先輩たちの意識の低さに頭を悩ませるなど多くの困難に直面してきたものの、折れることなく今日まで吹奏楽部を続けている。現在では、パートリーダーの中世古香織を熱烈に応援するかたわら、低音パートの同級生である中川夏紀と”犬猿の仲”の騒々しい喧嘩を繰り広げるなど、休まることのない賑やかな日々を送っている。
人物
容姿
きちんとセットした茶色を帯びた髪をふわりとなびかせた、可愛らしい容貌が魅力的な女子生徒(原作2巻、260ページ、短編集1巻、124ページ、最終楽章後編、80ページ、84ページ、夏紀編、234ページ)。また、TVアニメ版(短編集2巻の表紙イラストを含む)では頭の上に黄色のうさ耳リボンをつけており、ファンの一部からは「デカリボン先輩」の愛称で呼ばれている(なお、これは公式にはねじりヘアバンドとしてデザインされている。※TVアニメ版1期ファンブック、94ページ)。
彼女の黒目がちな瞳は生まれ持っての意志の強さを宿して勝気に光っており、溌溂(はつらつ)としたよく通る声音と相まって、可愛らしい容姿とのギャップ(意外性)を形作っている。(原作公式ガイドブック、110ページ、第二楽章前編、26ページ、69ページ、第二楽章後編、48ページ、214ページ、333ページ、最終楽章後編、83ページ)
なお、普段着ている学生服以外の私服の趣味についても、もこもこ素材のパーカーやパステルカラーのルームウェア、白のブラウスとピンクのプリーツスカートなど、可愛らしさを追求したガーリーなものを好んでいる。(原作2巻、170ページ、212ページ、短編集1巻、131ページ、第二楽章後編、125ページ、199ページ、最終楽章後編、41ページ、77ページ、夏紀編、31〜32ページ)
性格
明るく活発な性格で、ハキハキとしていて誰に対しても物怖じせず、自分自身の意志をはっきりと伝えるタイプ。(短編集1巻、125ページ、167~168ページ)
負けず嫌いな面も併せ持っており、自身が信じるものを阻む相手に対しては敢然(かんぜん)と立ち向かおうとする行動力も身につけている(原作2巻、272ページ、第二楽章前編、173ページ、短編集2巻、96ページ)。さらに面倒見もよく、空気を読むことに長けており、かつ人情の機微にも敏感である。(短編集1巻、245ページ、第二楽章前編、251ページ、夏紀編、17ページ)
自身が信じる正義を貫こうとするあまり、やたら短気になったり冷静さを失う面もしばしば見受けられ、そのために黄前久美子をはじめとする周りの部員たちから「感情的で恐い人」と思われることも少なくない(原作2巻、211ページ、216ページ)。しかし、基本的には裏表のない素直で律義な性格の持ち主であり、そのような人柄とそれに基づいた行動を重ねてきた彼女に対する周囲の信頼は厚い。また、リーダーシップやイニシアチブ(掌握術)にも秀でているため(短編集1巻、219ページ、原作公式ガイドブック、30ページ、夏紀編、138ページ)、のちには吹奏楽部の部長にも指名されている。
その他
- 好きな食べ物はコロッケ。さつまいもが入ったものがお気に入りであるほか、夏紀といがみ合うきっかけを作ったのも購買で売られていたコロッケサンドであった。(短編集1巻、131ページ、第二楽章前編、44ページ)
- 好きな色は黄色とピンク。Tシャツやスニーカー、シュシュといった彼女の身につけるファッションにもその好みが表れているほか、部活を引退した際に後輩たちから手渡された花束もその2色でまとめられている。(夏紀編、5ページ、22ページ、54ページ)
- 辛党の夏紀とは対照的に甘党であり、炭酸飲料や紅茶系の飲み物を好んだり、「甘味がマッチする」という理由から目玉焼きにソースを合わせたり、彼女の好みを知る夏紀の悪ノリによって特盛のいちごクレープを差し出されるなどといったシーンがしばしば登場している。(原作2巻、209ページ、短編集1巻、123ページ、183~184ページ、夏紀編、31ページ、190ページ)
- 定期演奏会の希望曲を部員たちから募(つの)った際には、『ヤングマン』や『学園天国』といったJポップの吹奏楽編曲版を推している。(原作公式ガイドブック、31ページ)
- 優子のキャラクターボイスを担当している山岡ゆりも中学時代から高校時代にかけて吹奏楽部に所属しており、トランペットを担当していた。Webラジオ(『境界の彼方 ふゆかいラジオ』ニコニコ生放送スペシャル 2013年12月30日放送分)でも素晴らしい腕前を披露している。ちなみに、彼女は中学時代は吹奏楽部の部長を務め、高校時代には吹奏楽コンクールの全国大会に出場し、同大会で金賞を受賞した経験がある。(NHK『沼にハマってきいてみた』 2019年3月20日放送分)
演奏技術
トランペット
京都府内でも名の知れた吹奏楽の強豪団体・南中学校の吹奏楽部でトランペットを担当していた楽器経験者であり、当時からパートリーダーとして活躍していた(夏紀編、55〜56ページ)。北宇治高校の吹奏楽部に入部した当初は、その実力の高さから先輩部員たちから目をつけられていたものの、直属の先輩であった香織がかばってくれたこともあって退部には至らず、以降は彼女とともに真面目な練習を継続している。その翌年に就任した新任顧問・滝昇が課したオーディションに合格し、吹奏楽コンクールA編成部門のメンバーとして選出されたことからも、それ相応の実力を持っていることがうかがえる。
また、優子は同級生たちが次々と退部していった1年生時代の当時、自身と同じく部に残った鎧塚みぞれに対して「トランペットを吹くことが好き」と胸中を明かしているほか、重ねて「高校卒業しても、大学行っても、楽器は続けたいと思ってる」と述べている。(短編集1巻、170ページ)
彼女が使用するトランペットのモデル(型番)は、YAMAHA YTR-850S。先輩の香織が使用しているYTR-850と同シリーズの銀メッキ仕様で、癖のないサウンドと快適な吹奏感によってジャンルを問わず愛用されている人気モデルである。(『「響け!ユーフォニアム」北宇治高校吹奏楽部 体験ブック』、10ページ)
エレキギター
吹奏楽部での活動のほかにも趣味でエレキギターを嗜(たしな)んでおり、同級生の夏紀から弾き方を教えてもらっている。
高校1年生の夏に希美をはじめとする同級生たちが一斉に退部した際に「部活を辞めることがそのまま楽器を辞めることにつながるのではないか」と危惧(きぐ)し、頼るものを分散化しようと新たな趣味を探していた折に夏紀がギターを弾けることを思い出し、そのまま彼女に「ギター教えてよ」と頼み込んだのが始めるきっかけとなっている(夏紀編、83ページ、110〜111ページ、236〜238ページ)。優子はその勢いで夏紀と一緒に楽器店に行き、彼女の薦めるギターとその付属品一式を自身のお年玉貯金を崩して即決で購入している。(夏紀編、112〜113ページ)
ギターの腕前については購入した当時はたどたどしかったものの、夏紀によるマンツーマンの指導と元来の音楽センスによる助けを経て、3年生の冬を迎えるころにはすっかり一人前になっている(夏紀編、113ページ、206ページ)。優子は趣味のカラオケに行くたびにギターを持ち込んでおり、カラオケの締めに機器にギターをつないでかき鳴らすことを毎度の楽しみにしているほか、大学進学以降はギターを本命に据(す)えようと心に決めている。(夏紀編、111ページ、113ページ、115〜116ページ)
彼女の所持しているエレキギターのモデルは、YAMAHA PACIFICA112V VW(ヴィンテージホワイト)。アイボリーをメインカラーとしたデザインで、夏紀の持つモデルの色違いにあたる。(夏紀編、112ページ)
経歴
中学生時代
南中学校に入学した折に何か楽器をやってみたいと思い立った優子は、軽音楽部と迷った末に吹奏楽部を選び、「なんとなくカッコいい」という理由でトランペットを選んでいる。もともとみんなを巻き込んで何かをやるのが好きだった優子にとって吹奏楽部での活動は性に合っており、この選択が後々の彼女の人物像を形作ることになる。(夏紀編、235ページ)
同校の吹奏楽部は京都府内でもそこそこ名の知れた強豪団体であり、優子は3年間の活動を通して楽しさや自由さを追求した魅力ある音楽づくりを行いつつ、吹奏楽コンクール関西大会(支部大会)で金賞や銀賞を獲得するなどといった精力的な活動に勤しんでいた(原作2巻、12ページ、90~91ページ)。しかし、中学3年生のときの夏、吹奏楽コンクールの自由曲に高難度の大曲(原作小説では『ダフニスとクロエ』第2組曲、TVアニメ版では『ダッタン人の踊り』)を選んで挑戦した南中学校は、部員たちの意気込みもむなしく京都大会(府大会)の銀賞という結果に終わってしまうことになる。この理不尽な結果を前にした優子は、これまで曲につぎ込んできた懸命な努力が報われなかったために深い落胆を覚え、テレビ番組などで自由曲のメロディが流れただけでチャンネルを切り替えてしまうような忌避(きひ)感に苦しめられている。(原作2巻、213~215ページ)
高校1年生時
そのような想いを抱えたまま北宇治高校に進学した優子は、中学からの流れに乗って吹奏楽部を続けることを決め、これまでと同じくトランペットを担当楽器として希望している(短編集1巻、126ページ)。同パートのメンバーとして活動を始めた優子だったが、中学のころとは打って変わってだらけた雰囲気の活動と、無能な上級生たちが優れた下級生たちの頭を押さえるような年功序列制を目の当たりにして、次第に不満を覚えるようになる(夏紀編、54〜55ページ、66〜67ページ)。なお、優子自身はこの現状について不満は覚えつつも「郷に入れば郷に従えっていうから文句言うだけで我慢してる。こればっかりは集団の宿命だからしゃあない」と、一歩引いて情勢の推移を見極めるようなスタンスをとっている。(夏紀編、64〜65ページ)
優子は同じ南中学校の出身である傘木希美や若井菫たちに加わるようにして上級生たちに対する反感をあらわにするものの、結局は部内の空気を覆すには至らず、見限りをつけた希美や菫たちが退部したことを機として現体制の空気に屈してしまう。一時はそのまま彼女たちとともに退部することも検討していた優子だったが、パートの先輩である中世古香織の引き止めや、自身の担当楽器であるトランペットへの意気込みなどによって、「ここで辞めてもなんにもならんし」と自身を奮い立たせながら部活を続けることを決めている(原作2巻、151ページ、212ページ、短編集1巻、169ページ)。以降は、希美が勝手に退部したことによって深く傷ついてしまった鎧塚みぞれを気遣って彼女に寄り添ったり、自身と同じくトランペットパートに残った同級生の加部友恵と「香織親衛隊」を結成するなど、彼女なりの過ごし方で日々の活動にあたっている。(夏紀編、103〜104ページ)
高校2年生進級~吹奏楽コンクール京都大会
小笠原晴香と田中あすかのツートップによる新体制のもとに4月からの新年度を迎えた優子は、新入生たちの入部と時を同じくして就任した新顧問・滝昇の手による激烈な部内改革に振り回されることになる。あわせて、新たなパートメンバーになった1年生の高坂麗奈の実力がパートリーダーの香織を凌駕(りょうが)しうる域にあることを見抜き、「香織先輩のポジションが彼女に乗っ取られてしまうのではないか」という警戒心から彼女に対して厳しい目を向けるようになっている。(TVアニメ版1期7話)
吹奏楽コンクールへの挑戦に先駆けて行われたメンバー選抜のためのオーディションにおいて、自由曲のトランペットソロ(原作小説ではコルネットのソロ)の座は1年生の麗奈が担当することになった(原作1巻、252ページ、TVアニメ版1期9話)。この結果を知った優子は、自身が敬愛する香織のたどってきた過去やこれまでの部内の基準であった年功序列制、さらには麗奈と顧問の滝とのあいだにある背後関係まで持ち出して徹底抗戦の構えをとっている。オーディションの絶対的な正当性を主張する麗奈の「香織先輩より、私のほうが上手いからです!」という不敬な発言に、「アンタねえ! 己惚(うぬぼ)れるのもいい加減にしなさいよ!」などと感情を爆発させて詰め寄るような一幕もあったものの、いさかいを好まない香織の想いを察したことによって麗奈との衝突はひとまず沈静化することになる。(TVアニメ版1期10話)
顧問の滝の提案で再オーディションの実施の話が持ち上がり、香織が自身の意志で名乗りを上げてからも、優子は麗奈に対して土下座を含めた説得を試みるなど、香織を擁護(ようご)する立場から独自の行動をとっている(なお、原作小説では本番前日のホール練習で香織が突発的に再オーディションを希望したために、優子の影の働きかけは登場していない)。しかし、迎えた再オーディションの本番において、麗奈の実力が香織のそれよりも別次元にあることと、香織が自身のトランペットに対する潔い矜持(きょうじ)を明かしたことを受けて、優子は彼女の想いに胸を打たれて号泣するとともに、麗奈のソロでコンクールに挑むことを認めるようになっている。(原作2巻、216ページ、TVアニメ版1期11話)
吹奏楽コンクール関西大会以降
滝の指導と部員たちの努力の結果、北宇治高校吹奏楽部が吹奏楽コンクール京都大会において金賞と関西大会への出場権を獲得すると、優子は「頑張ってきてよかったって、そう思った。うちらの努力は無駄やなかったんやって」と、頑張れば報われるという言葉が現実になったことに強い喜びを感じている(原作2巻、263ページ)。これを機として士気高く関西大会への練習に取り組む優子は、同時にかつての同級生である希美の部活復帰に関する騒動に対しても深く関わることになる。自身の親友であるみぞれが希美に対してトラウマを抱いていることを知っている優子は、希美の復帰を支えようとする夏紀と口論を起こしたり(TVアニメ版2期3話)、偶発的にみぞれと接触して彼女をパニックに陥らせてしまった希美に対して「何もしてない…… だから怒ってるの!」と、みぞれに何の誘いもかけないまま部を去って彼女に強いトラウマを植えつけてしまった希美への憤りをあらわにするなどしている(原作2巻、251ページ)。そして、パニックを起こした末に引きこもってすべてを拒絶しようとするみぞれに対しても、親友だからこそのまっすぐな想いを突きつけて激しく叱りつけるとともに、先の京都大会における躍進を例に挙げながら吹奏楽部を続けてきたことの喜びを説き、彼女が勇気を出して希美と向き合うためのきっかけを与えている(原作2巻、259~264ページ)。こうしてみぞれと希美の問題を解決に導く一助となった優子は、これまでみぞれに対して寄せていた献身やまっすぐな行動力などによって、夏紀やあすかといった部の仲間たちから「優子がいなかったら、こうは上手くいかなかった」というような高い評価を受けるようになっている。(原作2巻、273~275ページ)
また、TVアニメ版の吹奏楽コンクール関西大会の本番前には、舞台袖で”全国常勝”レベルの実力を誇る明静工科高校吹奏楽部の演奏を目の当たりにして圧倒されたパートリーダーの香織に対して、「違います! ここで終わりじゃありません! 私たちが目指しているのは全国です! 私たちは香織先輩と一緒に全国に行くんです!!」と右手を高らかに掲げながら勇気づけ、周りの部員たちも巻き込みながらパートのメンバーたちの意気を高める姿が登場している。(TVアニメ版2期5話)
北宇治高校吹奏楽部が百回に一回起こるかどうかの”奇跡の演奏”によって吹奏楽コンクール全国大会への出場を決め、同大会へ向けた練習を始めるようになると、副部長であるあすかが受験を理由に突然退部を迫られるようになる。部の精神的支柱であるあすかを失って意気消沈する部を前にした部長の晴香は、自身が頼りない部長であることを念頭に置きつつも一緒についてきてほしいと部員たちに語りかけるが、その彼女の意思表示を受けた優子は「うちらのこと、あんま舐めんとってください」とあからさまに不満をあらわにするとともに、「そんなこといまさら言われんでも、うちらは三年についていくつもりです。だいたい、全国大会が見えてきた時点で、皆本気なんですよ」と、あすかという支えを失ってもなお前を向こうとする部員たちの総意を率先して告げている。この優子の応じをきっかけとして吹奏楽部はふたたび活力を取り戻したほか、1年生の塚本秀一をはじめとする後輩たちからも「こういうの、さらっと言える人って強いな」と深い感心と信頼を寄せられるようになっている。(原作3巻、81~83ページ、第二楽章後編、293ページ、TVアニメ版2期7話)
部長就任
吹奏楽コンクール全国大会が終わり、晴香やあすかたちの代(3年生)が引退するのと時を同じくして、優子は先代の意向を受ける形で新たな部長に指名される。ほどなくして行われた2年生たちの役職会議において優子は自身が部長に選ばれた旨を発表するが、ほかの2年生の部員たちも彼女が卓越したリーダーシップや熱い意志を持っていることを理解しているためにその決定に賛同し、優子は正式に新体制の部長に就任することになった(短編集1巻、219~220ページ、TVアニメ版2期13話)。なお、先代の副部長であるあすかは、優子を部長に指名したことについて表面上は「副部長の夏紀とコンビを組ませるのがおもしろいから」と語っているものの(短編集1巻、221~222ページ)、実際には彼女の持つ高い調整能力や演奏技術、フォローに徹してくれる仲間がいることなどの点を評価しており、さらには彼女をほかの役職に配置しても持ち前のカリスマ性が作用してトップが機能しなくなるという可能性も加味して(あすかはこれを「無自覚の部活クラッシャー」と称している)、「あの子は部長以外やれないでしょ」という見極めのもとに指名した形となっている。(第二楽章後編、378ページ、短編集2巻、96ページ、98ページ)
部長としての優子は大人数の部員の統率に腐心し、そのために険しい表情を浮かべることも多くなったものの、一方で優れた統率力を発揮し、部内会議の議事進行も円滑に進めている。久美子をはじめとする部の仲間たちもまた、新体制発足から間もなく始められた定期演奏会や卒業式後に行われた立華高校との合同演奏会などの活動を通して、優子の部長としての活躍ぶりが板についてきたことを認めている(原作公式ガイドブック、107ページ、177~178ページ、第二楽章前編、29ページ)。そのような優子が掲げる新たな部の目標は「全国大会金賞」の獲得というものであり、この目標を単なるスローガンとして終わらせないように懸命に職務に励んでいる。また、優子の同級生であるみぞれは、日々の仕事を精一杯頑張る優子の姿を高く評価しており、先代の中心的存在であった晴香や香織たちに「優子は頑張ってます。すごく」「安心して、大丈夫です」などと熱心に語っている。(原作公式ガイドブック、48ページ)
高校3年生進級
4月になって新年度が本格的に始動すると、優子は新入生を交えたなかで改めて「全国大会金賞」を部の目標として示し、この目標を口先だけのものにしないように部員たちに一致団結を呼びかけている(第二楽章前編、72~76ページ)。また、彼女は部長としての仕事以外にも、座奏ではトランペットパートのリーダーとしてメンバーたちに指示を出しているほか(第二楽章前編、44ページ)、5月に行われたサンライズフェスティバルではドラムメジャーを担当し、パレードの本隊を先導するなどしている。(第二楽章前編、172ページ、219ページ、劇場版『誓いのフィナーレ』)
しかし、これらの華々しい活躍の裏では、周囲に頼ることをよしとしない性格が災いし、部長としてあらゆる仕事を抱え込んでしまうという負の面も次第に顕在化するようになっている(第二楽章前編、286ページ、第二楽章後編、209~211ページ、213ページ、夏紀編、249〜250ページ)。副部長である夏紀や新入生指導係の友恵たちはそのような優子を心配しており、夏紀は口頭注意と実力行使による彼女の舵取りを、友恵は「優子が抱えている仕事をぶんどってこようかな」と役職の新たな役割分担を模索する形でそれぞれ動きを見せている。
上記の通り、部の目標として「全国大会金賞」を掲げているものの、前年度のコンクールシーズンにおける上級生と下級生の対立などの反省を踏まえたことにより、今年度は部内の融和を重視し、部員の一人ひとりが無理をせずストレスがない形でのベストな状態を実現しようとしている(第二楽章後編、178~179ページ)。その結果として、局地的なトラブルはあるものの、前年度のように部内に決定的な亀裂が走る事態は起こらず、部員たちはあまりストレスを感じることなく活動できている(夏紀編、236ページ、238ページ)。しかし、上記の部内の状態について麗奈は「いまの北宇治は、少しずつの妥協が積み重なっている」と不安を感じており、また、久美子もこれまで見てきた部長としての優子の働きぶりから、ほかの部員たちが負うべき負担も優子がたったひとりで背負っているのではないかと危惧している。(第二楽章後編、213ページ)
コンクールシーズン
競争ではなく融和をもとに団結を図った北宇治高校吹奏楽部は、順調に京都大会を勝ち進んだ末、万全の体制のもとに関西大会の本番を迎える。しかし、部員の誰しもが完璧な演奏であったと確信を抱いたその演奏は、コンクールの審査員たちから「金賞」と評されるものであったものの、”全国常勝”の雄である明静工科高校と秀塔大学附属高校、そして今年度に特別顧問を迎え入れた新興勢力である龍聖学園高等部の演奏にはあと一歩及ばず、部員たちの想いもむなしく全国大会への代表枠から外れてしまうことになる(第二楽章後編、328ページ、330ページ)。明確に突きつけられた「ダメ金」という現実に、部長である優子はショックのあまり表彰授与式ののちに泣き崩れてしまうが(第二楽章後編、356ページ)、部長として皆の前に立ってからはそのような顔を一切見せず、「何落ち込んでんの? 私らはあの瞬間、間違いなく最高の演奏をした。そうやろう?」とうなだれる部員たちに発破をかけ、「北宇治は、ここで終わりなんかじゃない。たったいま、今日という日は、来年のコンクールに向けての一日目。明日からの練習は、切り替えてやっていきましょう!」と、部員たち一人ひとりを未来に向けて強く奮い立たせている。(第二楽章後編、333~334ページ、最終楽章後編、367ページ)
関西大会から数週間後、優子は改めて部員たちの前に立ち、北宇治高校吹奏楽部が全国大会に進めなかった要因をまとめ上げる。新興勢力である龍聖学園高等部の成長速度を甘く見て、今年は全国大会の枠に絡むことはないだろうと高をくくっていたこと、カリスマ的指導者である滝の統率力を過信し、今年もまた全国大会に出れるだろうと無意識のうちに安心しきっていたこと、そして、融和を重視するあまり対立や競争を潰し、結果として全国大会を目指すという「バチバチとした貪欲(どんよく)さ」を部全体と部員たち一人ひとりの双方が忘れてしまったことの3点を主要な反省点として挙げた優子は、これまで指導者と練習環境に恵まれていたためにあまり目を向けていなかった「部員一人ひとりの実力」に着目し、この底上げを図るために部としてアンサンブルコンテストに出場することを部長としての最後の活動方針として定めている。(第二楽章後編、340~345ページ)
また、新体制の発足からコンクールシーズンまでを駆け抜けた彼女の部長としての評価は非常に高いものとなっており、久美子や麗奈、秀一などといった次代を担う後輩たちから「あんだけ上手いことやれる部長は、この先なかなか出てこないだろう」といった尊敬とともに心の底からの感謝を送られているほか(第二楽章後編、349ページ、356ページ)、中学以来の仲間である希美からも「引退するその瞬間まで、彼女は理想的な部長だった」と純粋な好評を抱かれるようになっている。(短編集2巻、136ページ)
引退後
コンクールシーズンの終了からほどなくして行われた植物園での演奏会を最後に部を引退した優子は、その日の夜に低音パートの後輩である久美子に次代の部長職を託し、副部長の夏紀や卒業生のあすかなどの意見も参考にしながら「チーム黄前」体制の構想を組み上げている。(第二楽章後編、375~379ページ、386ページ)
そののちは推薦受験という形で大学入試に心力を注ぎ、無事にかねてから決めていた夏紀と希美のふたりと同じ私立大学に推薦枠で合格している。一般入試組よりも早く進学先が決まったことで卒業までの時間の自由を手に入れた優子は、さっそく「チーム黄前」体制下の部に顔を出しており、アンサンブルコンテストの部内予選に向けて腕を磨く下級生たちの技術指導を兼ねて本選出場に絡まない管打六重奏を組んで練習にあたっている。(短編集2巻、229~236ページ、242~244ページ)
また、年が明けてからは、かつての吹奏楽部仲間で現在は軽音楽部でインストバンドを組んでいる菫から卒業ライブの前座の話を持ちかけられており、これを引き受けた優子は夏紀とともにツインギターのツーピースバンド『さよならアントワープブルー』を結成して公演に向けた練習に取り組んでいる(夏紀編、120〜121ページ、146〜150ページ)。あわせて、みぞれが音楽大学に合格したことを受けてふたたび仲良しの4人組で行動するようにもなっており、遊園地でのアトラクション巡りや『さよならアントワープブルー』の看板づくりを兼ねたピクニックなどを通して楽しいひとときを満喫している。(夏紀編、166ページ、232ページ)
北宇治高校を卒業してからは、夏紀と希美と同じ大学に通うかたわら、自宅を出てひとり暮らしを始めている(短編集2巻、12ページ)。また、夏紀や他校出身の吹奏楽部経験者を誘う形で4人組のガールズバンドを結成しており、ギター兼ボーカル担当としてフロントに立ちつつ、ベース担当の夏紀と音楽性の違いでしょっちゅう揉め合うような賑やかな日々を送っている。(最終楽章後編、78~79ページ)
中世古香織との関係
トランペットパートのリーダーを務めているひとつ上の先輩。3年生。
優子は香織のことを「香織先輩」と呼んでおり、対する香織は「優子ちゃん」と呼んでいる。
優子は「信者」を自称するほどに香織を一途に心酔しており(原作2巻、212ページ、夏紀編、62ページ、68ページ)、同じパートの同級生である加部友恵と一緒になって「香織親衛隊」というファンクラブを結成している(『響け!ユーフォニアム』DVD&BD7巻ブックレット、5ページ)。彼女への心酔ぶりを示す一例として、新しく入ってきた新入部員に対して楽器紹介をする香織を見ながら「香織先輩、今日もチョー美人!」と両頬を押さえながら悶(もだ)えたり(TVアニメ版1期2話)、サンライズフェスティバルにおけるパレード用のコスチュームを配られた際に「きゃあああああ! 先輩可愛いいいい! マジエンジェル!」と絶叫し、一緒に写真を撮るよう懇願(こんがん)するなどしている(原作1巻、116ページ、TVアニメ版1期5話)。さらには、吹奏楽コンクールに向けて自由曲のソリストの座をオーディションで決める際に、1年生の麗奈との実力差を自覚してためらう香織に向けて「絶対、香織先輩がソロをすべきです!」と地団太を踏みながら応援したり、香織に対して不遜(ふそん)な態度を取る麗奈に「香織先輩がアンタにどれだけ気ぃ遣ったと思ってんのよ!!」などと癇癪(かんしゃく)を爆発させるなど、香織を思いやるあまり過激な振る舞いを見せることもある。(原作1巻、181~182ページ、251~252ページ、TVアニメ版1期10話)
それらの熱狂的な言動などから誤解されがちであるが、優子が香織を好きなのは、ただ外見が愛らしいからというだけではなく、実際はもっと深い理由によるものである。 主人公である久美子たちが入部する1年前、やる気のある当時の1年生(今の2年生)のグループが当時の3年生(いまの卒業生)たちと衝突を起こし、次々と退部する事件が起きた。優子もその「やる気のある1年生のグループ」のひとりであり、同じグループの同級生たちが当時の部の状況に失望し、見限りをつけて次々と辞めていくなかで、優子自身も辞めるかどうかで悩みを抱えていた。そしてそのときに「部活続けようよ」と引き留めて応援してくれたのが、当時2年生だった香織であった(原作2巻、212ページ、夏紀編、103ページ)。また、香織は当時の怠惰(たいだ)な3年生部員たちに対して「1年生を無視するのをやめてください」と頭を下げるなど部内の環境調整にも奔走しており、その部活に対する自己犠牲的な姿勢もまた、優子が香織に強く惹き込まれる一因となっている。(TVアニメ版1期10話)
そのため、優子の香織に対する敬愛の念は物語を通して決してブレることはなく、また、香織がいかに優れた人物であるかを他者に伝えることにも何ら抵抗は持っていない。(短編集1巻、169ページ)
香織が部を引退してからも彼女への心酔ぶりは醒(さ)めることはなく、新体制発足後の定期演奏会のパフォーマンスに際して乙姫の衣装を着た優子は、香織の乙姫姿を想像して頬を赤らめている(原作公式ガイドブック、90ページ)。また、定期演奏会や立華高校との合同演奏会の本番当日、さらには新年度の吹奏楽コンクール関西大会において香織が部を訪れた際には、「うそ、香織先輩! キャー、今日も素敵すぎぃ!」などと部長という立場を忘れて黄色い悲鳴を上げており、彼女が香織の熱烈な支持者であるという事実を部員たちに思い出させている。(原作公式ガイドブック、106~107ページ、176~178ページ、第二楽章後編、313ページ、劇場版『誓いのフィナーレ』)
吹奏楽部に在籍していたときはそのような熱狂ぶりが板についていた優子だったものの、自身が部を引退して卒業を控える立場になると、看護学校での新たな生活を通して大人になった香織の変わりぶりが自然と目につくようになっている。優子は香織の成長ぶりとそれを感じ取るに至った自身の身の上の変化から「そりゃ香織先輩はずっと見目麗しいけど、そういうことじゃなくて、中身が違ったというかさ。もう高校生じゃなかった。大人やった。それがなんか、寂しいなって」というような感傷に浸っている。(夏紀編、211〜213ページ)
中川夏紀との関係
低音パートでユーフォニアムを担当している同級生。2年生。
優子と夏紀は普段は互いに「アンタ」「アイツ(コイツ)」などと呼び合っているものの、面と向かい合わなければならない場合には「夏紀」「優子」と名前呼びを用いている。
出身中学校は同じであるものの、互いに知り合ったのは北宇治高校へ進学して吹奏楽部に入部してからになる。新入部員たちの楽器決めを行った日の昼、購買で優子の好物であるコロッケサンドを先に手に取った夏紀が「アンタにだけはイヤ」などと意地悪をして譲らなかったことがきっかけで張り合いの意識を向けるようになり(短編集1巻、131~134ページ)、以降の学生生活を通して自他ともに認める”犬猿の仲”として騒々しいやり取りを繰り広げることになる。(原作2巻、172ページ、短編集1巻、123~124ページ、TVアニメ版1期7話)
普段から互いに反りが合わないと断言する優子は、夏紀の繰り出すくだらないちょっかいに騒がしく反応したり、あからさまに嫌そうな雰囲気をあらわにしながら彼女をあしらったりしているものの(原作公式ガイドブック、33ページ、第二楽章前編、284ページ、第二楽章後編、88ページ)、その一方で、肝心なところで互いの考えや行動がぴったりとそろっていたり、彼女に対して気を許して本心を明かしたり認めたりするような一幕も見せている(原作2巻、272~273ページ、短編集2巻、19ページ、TVアニメ版ドラマCD『喧嘩するほど……?』)。また、優子が自身の意地っ張りな性格のもとに過剰に負担を抱え込もうとした際にも、夏紀は真正面から向き合って全力で止めにかかっており、そのような彼女の義理堅さと優しさに対しても深い感謝を覚えている。(第二楽章後編、210~211ページ、213~214ページ、318ページ、短編集2巻、296ページ、夏紀編、242〜250ページ、286〜287ページ)
喧嘩腰の会話によって互いの本音と親愛ぶりを確かめ、かつくだらないやり取りそれ自体を楽しんでいるふたりの関係は、総じて”喧嘩するほど仲がいい”というものであり(第二楽章後編、308~309ページ、短編集2巻、16ページ、136ページ)、同級生の長瀬梨子をはじめとする部の仲間たちからも日々のやり取りを温かい目で見守られている(短編集1巻、134~135ページ、225~226ページ、原作公式ガイドブック、31ページ、178ページ)。優子自身もまた、自身の高校卒業に際して、高校生活の3年間を通していちばん近くにいた夏紀に対して手紙を綴(つづ)っており、いつもどおりの喧嘩腰の調子はそのままに、「素直に認めるのもシャクで、いままであんま言わんかったけど、アンタが思ってる以上にこっちは感謝してるぞ!」などといった素直な想いをしたためている。(短編集2巻、287~288ページ、296~297ページ)
その他の主要キャラクターとの関係
高坂麗奈
トランペットパートに所属しているひとつ下の後輩。1年生。
優子は麗奈のことを「高坂」と呼んでおり、対する麗奈は「優子先輩」と呼んでいる。
高校2年生時の吹奏楽コンクール京都大会(府大会)の前にソロパートの担当の件で、上記の通り優子は麗奈とひと悶着(もんちゃく)を起こした。麗奈がソロパートを吹くことに決着し、無事に京都大会を乗り越えて以降も、表立った関係についてはしばらく微妙な空気が漂っていた。実際に、ふたりのあいだに漂う雰囲気を感じ取ったみぞれから「仲が悪いの?」と問われた際には、「そうなんですか? 先輩」「さあ? どうなんだろうね、後輩」と答えを交わした上で笑い合うという心理戦を展開している(原作2巻、84~85ページ、TVアニメ版2期2話)。ただし、優子は麗奈の持つ高い実力についてはソロパートの座の騒動のときから認めており、彼女の同級生である久美子に対しては「本気で全国行こうと思うんだったら、上手い人が吹くべきだと思う」とその内情を明かしている。(原作2巻、216ページ、TVアニメ版2期3話)
その後のコンクールシーズンにおける活動のなかでは、優子は顧問の滝に妻がいたことを知ってショックを受ける麗奈に向けて「何かあるなら話してよ。私じゃ、話しにくいかも知れないけど」と励ましたり(TVアニメ版2期11話)、吹奏楽コンクール全国大会の表彰式における指揮者賞の授与の際に、声援を決めかねていた周りの部員たちに先立って滝へのメッセージを叫んだ麗奈に「高坂、いまのはマジ、ファインプレーやった。ありがとう」と礼を述べるなど(原作3巻、355~357ページ、TVアニメ版2期12話)、次第に苦楽をわかちあった仲間としての信頼を寄せるようになっている。
翌年4月以降の新年度においては、優子と麗奈は良好な先輩・後輩の関係を築いており、新入生部員に対するパート紹介の際には、自身の代わりにトランペットの説明を一任するなどしている(第二楽章前編、26ページ、45~46ページ)。なお、頭脳明晰でストレートな性格の持ち主である麗奈とは部のあり方をめぐって意見が対立することもしばしばあり、パートメンバーの小日向夢の配置をめぐる議論などに際して互いのスタンス(姿勢)をぶつけ合っている(第二楽章後編、168~169ページ、178~179ページ)。しかし、前年度の場合とは異なり互いに相手の考えや器量についても理解を示しており、麗奈の持つ音楽的な実力を高く評価している優子は、次年度の部活運営体制の構想に際して「彼女を部内の人間関係に悩ませることなく、音楽に専念させるようなポジションにつかせたい」と明かしている。(第二楽章後編、377ページ、最終楽章前編、188ページ)
このような先輩・後輩同士の信頼感は優子が高校を卒業しても健在であり、お盆休みを控えた北宇治高校吹奏楽部にOG(卒業生)となった優子が顔を出した際にも、気兼ねない様子で部の運営を気にかけたり、逆に麗奈の本心からの返答に際して照れ隠しを見せるといった丸くなったやり取りを交わしている。(最終楽章後編、43~45ページ)
鎧塚みぞれ
ダブルリードパートでオーボエを担当している同級生。2年生。
優子はみぞれのことを「みぞれ」と呼んでおり、対するみぞれは「優子」と呼んでいる。
中学時代から同じ吹奏楽部で活動していたものの、互いに親しくなったのは高校1年生のときの大量退部事件の後であった。退部組の中心的存在であった希美の友達であり、彼女から何も声をかけられずに置いていかれてしまったみぞれのことを気にかけた優子は、ひとりぼっちのみぞれを助けるために「友達」としての和やかな付き合いを始めるようになる(短編集1巻、167~172ページ、短編集2巻、291ページ、夏紀編、103〜108ページ)。その後は、椅子に座るみぞれの頭に顎を乗せるなどのスキンシップをとったり、他者に興味を示さないなみぞれのマイペースさに呆れながらも、「まあ、そこがアンタのええとこなんやけどさ」と彼女の人となりに理解を示すといった関わりを見せている。(原作2巻、55ページ、85~86ページ、TVアニメ版2期1話)
希美との偶発的な対面によってみぞれがパニックに陥った際には、彼女を心配してすぐさま校舎中を駆け回り、捜索の末に見つけたみぞれを強く叱りながら励ましている。その折に、みぞれから「優子は私がかわいそうだから優しくしてくれただけ」と告げられた優子は、「バカ! アンタマジでバカじゃないの!? 誰が好き好んで嫌いなやつと行動するのよ! 私がそんな器用なことできるわけがないでしょ!?」と声を荒らげ、自身のまっすぐな想いを余すところなくぶつけている(原作2巻、260~262ページ、TVアニメ版2期4話)。また、みぞれが希美と和解し、かつての親密な関係に戻ったことを認めた際には、「希美には勝てないんだなあ。一年も一緒にいたのに」と彼女の一番になれなかったことの悔しさと寂しさを冗談めかしながら語っている。(原作2巻、271~272ページ)
以降は、夏紀と希美も交えた4人組の関係を構築するなかで、定期演奏会係やコンクール自由曲のソロのかけ合いに挑戦するみぞれを影日向に支えている。みぞれにとっての一番が希美であることを知っている優子は、過度に介入することなく後ろからそっと心配するような姿勢を貫いていたものの、卒業式の日にみぞれがこれまで助けてくれたことをお礼として述べたことで、「届いていたのかと、ただそれだけを思った」と胸がいっぱいになるほどの嬉しさを実感している。(短編集2巻、292~293ページ)
総じて、優子はみぞれが見せる物寂しそうな雰囲気に自身のお節介な性格が引っかかるとともに、彼女の放つ非凡な才能の高みに魅了されており、彼女の特別になりたいとあがくなかで「とにかく報われてほしい」という強い応援の気持ちを向けるようにしている。(夏紀編、141ページ、158〜160ページ)
傘木希美
高校1年生のときに吹奏楽部を退部し、その後、高校2年生の夏に復帰を果たしたフルート担当の同級生。2年生。
優子は希美のことを「希美」と呼んでおり、対する希美は「優子」と呼んでいる。
優子と希美は中学時代からともに吹奏楽部の活動に励んできた仲で、高校1年生の当時は「やる気のある1年生グループ」のメンバー同士でもあった。しかし、希美が吹奏楽部を退部する際に親友であるはずのみぞれにそのことを告げず、かつ、関西大会直前に騒動を起こすまでみぞれのことを放置していたことにより、優子は希美に対して「何もしてない…… だから怒ってるの!」などと彼女の無頓着さからくる強い怒りを感じていた(原作2巻、251ページ、271~272ページ、夏紀編、108ページ、TVアニメ版2期4話)。なお、そのほかの彼女の律義な面やフレンドリーな交友ぶりについては認めており、夏紀の「希美はアンタの100倍いい子」という冗談に対しても「そんなもん、言われんでもわかってるわ」や「夏紀の500倍はいい子かも」などと肩をすくめながら同意を示している。(原作2巻、272~273ページ、TVアニメ版2期4話)
みぞれと希美の騒動が解決したのちには、夏紀とみぞれも交えた元南中学校出身の同級生4人組で行動をともにすることがたびたび見られるようになる。しかし、優子はみぞれのことを気にかける立場から、翌年度のコンクール自由曲『リズと青い鳥』のソロのかけ合いなどに際して、しばしば軽率な行動をとる希美に対して剣呑(けんのん)な意識を向けている。(第二楽章前編、286ページ、第二楽章後編、24ページ、短編集2巻、233~234ページ、夏紀編、156ページ、映画『リズと青い鳥』)
加部友恵
トランペットパートに所属している同級生。2年生。
優子は友恵のことを「友恵」と呼んでおり、対する友恵は「優子」と呼んでいる。
北宇治高校の吹奏楽部に入部した当初、優子は右も左も分からない初心者の友恵のために、先輩である香織と一緒になって面倒を見ていた(第二楽章前編、251ページ)。現在では、部活の内外を問わず優子とよく遊ぶ間柄となっており(第二楽章前編、107ページ、109ページ、TVアニメ版1期8話、2期1話、2期2話)、とくに優子が部長になって以降は、新たにマネージャーを引き受けて部を支えるとともに「北宇治高校吹奏楽部の演奏は本当に素晴らしかった」と心から語った彼女の姿に際して、嗚咽交じりの号泣をするほどに強く胸を打たれている。(第二楽章後編、368ページ)
黄前久美子
低音パートでユーフォニアムを担当しているひとつ下の後輩。1年生。
優子は久美子のことを「アンタ」または「黄前(黄前さん)」と呼んでおり、対する久美子は「優子先輩」と呼んでいる。
高校2年生時のオーディションを通して麗奈と一悶着あったこともあり、彼女の友人であった久美子に対しても当初は身構えたような意識を向けていた。そのために部活前の朝練習や夏合宿において不意に顔を合わせた際には「……げ」などとあからさまに顔をしかめている(原作2巻、84ページ、209ページ)。しかし、夏合宿の夜に久美子と出会った優子は、彼女にジュースをおごるついでにみぞれの人となりや自身が香織を慕うようになった理由、吹奏楽コンクールに対する意識の持ち方といったさまざまなエピソードを明かし、話を聞いてくれた久美子に興味を抱くようになる(原作2巻、209~217ページ、TVアニメ版2期3話)。それ以降、優子は彼女のことを「みぞれのよき理解者」や「機転の利く後輩」として認め、希美と鉢合わせて逃げ出したみぞれを探し出すよう協力を求めたり(原作2巻、251~252ページ、TVアニメ版2期4話)、定期演奏会に向けた準備の補佐役に直々に指名するなどしている。(原作公式ガイドブック、6~9ページ)
翌年4月以降の新年度においても、優子は引き続き久美子に目をかけており、彼女に新入生指導係を任せるかたわら、悩みを抱える新1年生たちに対しても彼女のもとを頼るように誘導するなどしている(第二楽章前編、151ページ)。こうして自身が部長として率いた1年間の活動を通し、久美子の人間面・演奏面の双方の成長ぶりを認めた優子は、自身の部活からの引退に際して晴れて久美子を新たな部長にすることを告げるとともに、これまでの彼女の役職配置がすべて部長指名に至る伏線であることを明かしている。(第二楽章後編、374~380ページ)
田中あすか
吹奏楽部の副部長とユーフォニアムを担当しているひとつ上の先輩。3年生。
優子はあすかのことを「あすか先輩」と呼んでおり、対するあすかは「優子」(TVアニメ版では「優子ちゃん」)と呼んでいる。
パートが異なることから直接の絡みはないものの、優子は吹奏楽部での活動を通してあすかの卓越したカリスマ性やリーダーシップを目にしており、のちに自身が部長になった際にも、彼女の振る舞いから着想を得た人心掌握術や部活運営を実践している(短編集1巻、223ページ、第二楽章前編、282~283ページ)。その姿勢の裏には、あすかという有能なリーダーに対するコンプレックス(劣等感)が存在しており、それが優子自身の意地っ張りな性格と重なった結果として、次第に「あすか先輩ほど、うちは働いてへんし」と自身に対して無理強いを課す(希美はこれを「あすか先輩の呪い」と称している)ようになってしまっている。(第二楽章前編、282~283ページ、第二楽章後編、210~213ページ)
長瀬梨子
低音パートでチューバを担当している同級生。2年生。
優子は梨子のことを「梨子」と呼んでおり、対する梨子は「優子」と呼んでいる。
北宇治高校に進学してからの友達であり、吹奏楽部の新入部員に対する楽器振り分けの日に、優子が屈託なく声をかけたことが知り合ったきっかけである(短編集1巻、125ページ)。その日の昼休みに、購買において夏紀とのコロッケサンドの取り合いを仲裁してもらって以降、現在に至るまで親しい関係を続けており、部活の内外を問わず一緒に遊びに出かける間柄として登場している。(短編集1巻、135ページ、TVアニメ版ドラマCD『喧嘩するほど……?』)
若井菫
かつてサックスパートに所属していた同級生。2年生。
優子は菫のことを「菫」と呼んでおり、対する菫は「優子」と呼んでいる。
南中学校の吹奏楽部に所属していたころから一緒に活動に励んでおり、入部当時の北宇治高校吹奏楽部のだらけた雰囲気に反感を覚えた仲でもある。しかし、積極的に行動を起こそうとする菫とは異なり、優子は機を待とうとするなど必ずしも両者のスタンスは一致しておらず、菫たちが部を去ろうと盛り上がるなかでも優子は「うちは考える」と慎重に応じている。(夏紀編、80ページ、82ページ)
結果として菫は吹奏楽部を退部して軽音楽部に移ってしまうものの、優子との関わりは退部以降も引き続き保たれており、3年生になった優子が部を引退してフリーになった際には卒業ライブの前座の話を彼女から持ちかけている。その際に、優子は夏紀との仲をいじってくる菫に対してさり気なくあしらったり、彼女からの提案に目をぱちくりさせるといった気兼ねないやり取りを見せている。(夏紀編、118〜123ページ)
トランペットパートのメンバー一覧(原作第二楽章版)
関連イラスト
冬制服
夏制服
ドラムメジャー(サンライズフェスティバル)
Tシャツ姿
部屋着(夏合宿)
関連タグ
中世古香織 - トランペットパートのリーダーを務めるひとつ上の先輩。優子が一途に心酔している3年生。
中川夏紀 - 低音パートでユーフォニアムを担当する同級生。犬猿の仲の2年生。
高坂麗奈 - トランペットパートのひとつ下の後輩。1年生。
鎧塚みぞれ - オーボエ・ファゴットパートの同級生。優子が何かと気にかけている2年生。
傘木希美 - フルートパートの同級生。一度吹奏楽部を退部していた2年生。
加部友恵 - トランペットパートの同級生。明るく気さくな2年生。
小日向夢 - トランペットパートのふたつ下の後輩。自分に自信がない新1年生。
なかよし川 - 中川夏紀とのコンビ(カップリング)タグ。
優みぞ - 鎧塚みぞれとのコンビ(カップリング)タグ。
南中カルテット - 中川夏紀、鎧塚みぞれ、傘木希美とのカルテット(グループ)タグ。
香織先輩マジ天使 - 彼女がこのタグの発祥である。