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飛び立つ君の背を見上げる

とびたつきみのせをみあげる

武田綾乃による青春小説。同氏の小説『響け!ユーフォニアム』シリーズのスピンオフ作品にあたる。
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概要編集

飛び立つ君の背を見上げる(Looking Up at Your Back as You Leap Up)とは、武田綾乃(たけだ あやの)による青春エンターテインメント小説の名称である。2013年12月より刊行されている『響け!ユーフォニアム』シリーズのスピンオフ外伝)作品にあたる。

『響け!ユーフォニアム』シリーズの主人公、黄前久美子のひとつ上の先輩である中川夏紀の視点で物語が展開されており、吹奏楽部の引退から卒業までのモラトリアム(猶予)期間のなかで親友たちと過ごしたかけがえのない日々、そして出会いから現在に至るまでの軌跡を通して抱いた親友たちへの想いが綴(つづ)られている。

単行本は2021年2月13日に宝島社から発行されており、初回版には書き下ろしの短編を収録した特別冊子『記憶のイルミネーション』が封入されている。また、2023年8月4日には、単行本の初回版特典である短編『記憶のイルミネーション』と、映画『リズと青い鳥』の脚本などを手がけた吉田玲子による解説を収録した文庫本版が新たに発行されている。


なお、作者の武田綾乃は中川夏紀というキャラクターについて、これまで短編(TwitterSS(掌編)も含む)の視点主として彼女を取り上げてこなかったのは、短い文章では彼女の人間性を説明することができない(誤解されてしまう)ためであるとこだわりを明らかにしているほか、彼女には第1巻から最新刊に至るまで一貫してブレない感情の軸が存在していることも語っている。(参考ツイート


作品情報編集

題名飛び立つ君の背を見上げる
作者武田綾乃
イラストアサダニッキ
媒体小説
ジャンル音楽 部活 青春
出版社宝島社
発売日
  • 2021年2月13日(単行本、2021年2月27日第1刷発行)
  • 2023年8月4日(文庫本版)
ISBN
  • 978-4-299-01351-4(単行本)
  • 978-4-299-04598-0(文庫本版)

ストーリー編集

傘木希美鎧塚みぞれ、そして吉川優子

四人で過ごした、最高にいとおしくて、

最高に誇らしかったあの日々────。


北宇治高校三年、中川夏紀

私は今日、吹奏楽部を引退した────。


『響け! ユーフォニアム』シリーズの人気キャラ・中川夏紀の視点で、

傘木希美、鎧塚みぞれ、そして吉川優子をみた物語。

エモさ全開の青春エンターテインメント。


(宝島社公式WEBサイトより引用)


登場人物編集

中川夏紀(なかがわ なつき)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、ユーフォニアムを担当していた。

普段は斜に構えた皮肉屋を気取っているが、それらの振る舞いの裏には他者への気遣いをはじめとした聡明(そうめい)さを隠している。

元々は高校生になってから吹奏楽部を始めた初心者であり、同部の弱小時代と強豪時代を経験した末に副部長に就任するという経歴をたどっている。吹奏楽部を引退した現在ではバーンアウト(燃え尽き症候群)を実感しながら卒業までの時間を漫然と過ごしているが、そんなあるときかつての部の仲間であった菫からライブイベントへの参加の話を持ちかけられる。


吉川優子(よしかわ ゆうこ)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、トランペットを担当していた。

華やかで可愛らしい見た目とは裏腹に勝気な言動の持ち主で、3年生のときには持ち前のリーダーシップを発揮して吹奏楽部の部長を務めていた。

夏紀とはしょっちゅう喧嘩ばかりしている”犬猿の仲”の間柄だが、その一方で彼女からギターの弾き方を教わったりするなど公私ともに親しく接している。卒業を控えた高校3年生の冬に、菫から夏紀とともにライブイベントへの出演を誘われ、彼女とともにツインギターによるツーピースバンドを結成する。


鎧塚みぞれ(よろいづか みぞれ)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、オーボエを担当していた。

表情の変化に乏しく口数も少ないが、吹奏楽部に所属していたころは部内の誰よりも演奏が上手であり、その実力を買われて音楽大学への進学を薦められている。

かつては親友の希美の存在が世界のすべてのように感じていたものの、高校の吹奏楽部での3年間の活動を通して新たな世界に挑戦しようとする想いを身につけるようになる。


傘木希美(かさき のぞみ)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、フルートを担当していた。

天性の明るさを放つ活発な少女で、しばしば無自覚な振る舞いによって周囲を振り回している。

中学時代は吹奏楽部の部長を務めており、進学先である北宇治高校の吹奏楽部を強豪に変えてみせると息巻いていたものの、逆に上級生たちに打ち負かされて退部してしまう。その翌年に、強豪となった北宇治高校の吹奏楽部に無事に復帰を果たし、最後の1年間は部内のトップ奏者としてみぞれとともに華々しい功績を残している。


若井菫(わかい すみれ)

北宇治高校の3年生。かつては吹奏楽部に所属していたが、1年生の夏に退部したことを機に軽音楽部に移ってバンド活動を行っている。

派手な白縁眼鏡が印象に残る顔立ちのほか、立ち止まることを嫌って前に進み続けようとする行動力の持ち主でもある。

中学時代から希美や優子たちとともに吹奏楽部で活動しており、当時からサックスの腕前は一目置かれていた。北宇治高校の吹奏楽部を退部してからは仲間たちとともに軽音楽部でインストバンド『レチクル』を結成し、校内・校外を問わず多くのイベントで活躍している。

自分たちの卒業が控えていることを受けて記念のための卒業ライブイベントを企画しており、そのオープニングアクト(前座)の出演の話を夏紀と優子に持ちかけている。


黄前久美子(おうまえ くみこ)

北宇治高校の2年生。吹奏楽部でユーフォニアムを担当している。

小学生のころからユーフォニアムを吹き続けている優秀な奏者であるものの、優柔不断な性格のために決定力に欠ける一面もある。

夏紀が2年生のとき、吹奏楽コンクールの出場メンバーに夏紀を差し置く形で彼女が選ばれたことがあり、夏紀はその際に過去のトラウマを思い起こしてうろたえる彼女を見かねて元気づけている。以降もさまざまな部内の事件を彼女とともに乗り越えており、いまでは夏紀のもっとも信頼する後輩のひとりとなっている。


田中あすか(たなか あすか)

北宇治高校の卒業生。かつて吹奏楽部に所属し、ユーフォニアムを担当していた。

吹奏楽部に所属していたころは夏紀のひとつ上の先輩であり、卓越した演奏技術や非凡なカリスマ性などによって、夏紀を含めた周囲から畏怖(いふ)の対象として見なされていた。

優子と夏紀が部長と副部長になったのも彼女の推薦によるものであり、夏紀は同職に就任してからもしばしば彼女の先見的かつ周到な人選に感心している。


中世古香織(なかせこ かおり)

北宇治高校の卒業生。かつて吹奏楽部に所属し、トランペットを担当していた。

吹奏楽部に所属していたころは夏紀のひとつ上の先輩であり、善良な慈しみの心や練習に対する真摯(しんし)な姿勢などから、多くの部員たちからの支持を集めていた。

元から不真面目な人間であるという自覚を持つ夏紀にとって、無条件の優しさを他者に与える彼女はまさしく対照的な存在であり、彼女のまとう清廉な空気に少しばかりの苦手意識を覚えている。


滝昇(たき のぼる)

北宇治高校の教師。同校の吹奏楽部の顧問と指揮者を務めている。

夏紀が2年生のときに赴任して吹奏楽部の新しい顧問となり、同部をわずか半年で吹奏楽コンクール全国大会まで導くという並外れた指導を見せつけている。

彼の指導によって部員たちの意識が根本から改革されていくさまは、夏紀のなかでも強烈な体験として記憶に残されている。


川島緑輝(かわしま さふぁいあ)

北宇治高校の2年生。吹奏楽部でコントラバスを担当している。なお、作中に名前は登場していない。

中学時代を吹奏楽部の超強豪校で過ごしており、部内でも指折りの実力と卓越した人間性を兼ね備えている。

夏紀はそんな彼女の演奏する姿に、しばしば才能や経験の差を実感していたたまれない思いを抱いている。


久石奏(ひさいし かなで)

北宇治高校の1年生。吹奏楽部でユーフォニアムを担当している。なお、作中に名前は登場していない。

中学時代から吹奏楽部で活動しており、ユーフォニアムの演奏技術は夏紀よりも高い。しかし、人間味のある夏紀の振る舞いに惹かれるところもあるために、しょっちゅうひねくれた物言いを見せつけている。


長瀬梨子(ながせ りこ)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、チューバを担当していた。なお、作中に名前は登場していない。

争いごとを嫌う温厚な性格の持ち主で、事あるごとに練習をサボったり勝手な行動を起こそうとする夏紀のことをいつも気にかけている。


後藤卓也(ごとう たくや)

北宇治高校の3年生。かつて吹奏楽部に所属し、チューバを担当していた。なお、作中に名前は登場していない。

真面目で穏やかな気質の楽器経験者で、ひねくれた振る舞いの夏紀にも辛抱強く付き合っていた。

同じくチューバを担当していた梨子とはカップルの間柄であり、吹奏楽部に在籍していたころは部内のベストカップルとして夏紀を含めた周囲からもてはやされていた。


用語解説編集

アントワープブルー(あんとわーぷぶるー)

かつて夏紀が気に入ってよく聴いていた日本のロックバンドインディーズ時代は男女2人のツインギターユニットだったが、メジャーデビューを機にベースドラムスを加えた4人組の編成になっている。

インディーズ時代は、デビュー曲『アントワープブルー』をはじめとしたパワフルな曲がメインで、夏紀も「カッコいいが凝縮したイカした曲」と気に入っていたものの、メジャーデビューを果たして映画の主題歌などに抜擢(ばってき)されるようになると路線をがらりと変更し、明るくポップな仕上がりの曲でヒットを叩き出すようになった。

まだあまり世に知られていなかったころからバンドを追いかけていた夏紀は、バンドが人気を得た代償として作風が変化したことに戸惑いを覚え、複雑な胸中を抱いている。


バンドの名前となった「アントワープブルー」(Antwerp Blue)とは、ベルギー北部の都市アントワープで製造・使用されていた青色であり、日本語で「濃紺青」(のうこんじょう)ともいわれている。


さよならアントワープブルー(さよならあんとわーぷぶるー)

菫からの誘いを受けてツインギターユニットを組むことになった夏紀と優子が、自分たちのユニットにつけた名前。

ユニット自体がインディーズ時代の『アントワープブルー』のコピーバンドであることや、夏紀と優子自身も卒業を控えて「当たり前」であったこれまでのいろいろなものに別れを告げなければならないという境遇を味わったことなど、ユニット名にはさまざまな意味合いが含まれている。


レチクル(れちくる)

菫をはじめとする元吹奏楽部の5人のメンバーが、軽音楽部で新たに結成したインストバンド

楽器編成はドラムス、キーボード、サックス、トランペット、トロンボーンとなっており、ジャズをはじめとする曲などを校内・校外問わず演奏している。

メンバーである菫たちが北宇治高校を卒業するにあたり、カフェを貸し切って記念イベントを開催する計画を立てており、夏紀と優子は彼女たちのバンドのオープニングアクト(前座)としてイベントに加わることになる。


バンド名の「レチクル」(Reticle)には顕微鏡双眼鏡などのレンズに刻まれている十字線の意味のほか、南天の星座である「レチクル座」も含まれている。特に後者は日本をはじめとする北半球からは見えない星座のため、「ここからでは見えない星たち」という意味合いをバンド名に乗せていることになる。


関連イラスト編集

センシティブな作品なかよし川

「犬猿の仲」と書いて「なかよし」と読む…?『飛び立つ君の背を見上げる』なんのポーズ?


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外部リンク編集

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