概要
青森県津軽地方で話される日本語の方言。
東北弁(東北方言、北奥羽方言のこと)に属し、「し」と「す」・「ち」と「つ」(また、それらの濁音)の区別がつかない「ズーズー弁」の特徴を持つ。
非常に強い訛りと独特な言い回しが多く、難解なことで全国的に有名。 /> 1音で1語になっている会話も多々あり、一種の高速な言語でもある。
例1:「どさ?」「ゆさ」(「(あんた)どこへ行くの」「銭湯」)
例2:「か、け」「は、い(え)」(「ほら、(たんと)食べなさい」「もう 沢山、これ以上いらない」)
10月23日は「津軽弁の日」である。これは記念日であると同時に「津軽弁の日」という津軽弁を題材としたイベントの開催日となっている。方言詩人であった高木恭造の命日に因む。
方言萌えの対象としてよく知られ、頻繁に上位に入る常連方言の一つである。
特徴
青森県全域で話されるわけではなく、八戸市を中心とする南部地方と上北地方は南部弁、下北半島はどちらの特徴も持つ下北弁となる。
これは江戸時代まで津軽藩と南部藩が対立し、関門が存在していたという歴史上の経緯に伴う。事実、平内町狩場沢(津軽藩の領地)と野辺地町馬門(南部藩の領地)は隣接しているにもかかわらず、住民の使う方言がくっきりと切り替わっている。
そのため、青森県内であっても方言が通じない、といったことがたびたびある。
南部弁および下北弁(下北弁は南部弁の一種に含まれることがある)との最大の違いはアクセントである。津軽弁は「低→高」の形でアクセントが置かれ、ある位置からアクセントがつき、そのまま高い状態で発音される、という特徴がある。南部弁は地域によるが「高→低」の関東方言に近い。
例:「雨」→「あ↓め↑」、「飴」→「あ↓め↓っこ↑」
など。
語中・語尾の「が」行、「だ行」に鼻濁音が入るため、イカ(烏賊)は「い(ん)が」、苺は「い(ん)ぢご」のように発音される。また、「ざ行」、「ば行」も同じ傾向があり、「油」は「あ(ん)ぶら」のように、軽い鼻濁音で発音される。
東北方言全体に見られる傾向ではあるが、「あめっこ」、「お茶っこ」のように「〜こ」と語尾につけられることがある。津軽弁以外では「わんこそば」のわん「こ」などが知られている。
他地域への対応
あまりに難解なため、他県出身の医師による誤診を防ぐ目的で弘前大学医学部では方言を学ぶ授業があり、「医療用津軽のことば」というマニュアルが同大学の非常勤講師により作られた。
(参照記事)
さらに2020年には「津軽弁をAIで共通語に翻訳する」プロジェクトが同大学で進められていることも明かされている。
(参照記事)
県外、特に全国放送のテレビ番組などでは「○♪☆×$€+▲〜」のような、まるで宇宙人が話しているような字幕で表現されることがある。また、大きな括りとして「青森弁」と称されることがあり、先述の経緯もあって青森県民からは反発を受けている。
津軽弁を使用する人物
実在の人物
- 吉幾三(旧金木町、現五所川原市出身)…津軽弁ユーザーの代名詞的存在。『俺ら東京さ行ぐだ』のほか、2008年にはアンサーソング『NDA!(んだ!)』を、2019年には全編津軽弁ラップの『TSUGARU』をリリースした。
- 伊奈かっぺい(弘前市出身)…ローカルタレント。元は青森放送(RAB)の社員であるが、1980年代には全国区でタレント活動を行なっていた。「津軽弁の日」の発起人の1人。
- 黒石八郎(黒石市出身)…ローカルタレント、歌手。青森県内では伝説級の芸能人で、現在でもさまざまなテレビ番組やCMに出演している。
- 古坂大魔王(青森市出身)…普段は使わないが、バラエティ番組などで披露することがある。
- 舞の海(鯵ヶ沢町出身)…現舞の海秀平。相手によっては全国区の放送でも津軽弁を使う。
- 新山千春(青森市出身)…バラエティ番組で披露している。
- 三上枝織(五所川原市出身)…普段は使わないが、役によっては活用する場合がある。郷里の言葉なだけあってか精度が高い。
- りんご娘(弘前市を中心に活動)…ローカルアイドル。2018年ごろからラストアイドルに参加していた王林が全国区のテレビ番組に出演するようになり、グループや他のメンバーの知名度も高くなっている。
- 人間椅子…メンバーの和嶋慎治、鈴木研一が弘前市出身。楽曲の歌詞には津軽弁を用いたものが多く、独特の世界観が構成されている。
- 鈴木正幸(弘前市出身)…俳優。『桜中学』シリーズで演じた大森巡査と『宇宙刑事』シリーズで演じた大山小次郎で津軽弁のコミカルなキャラクターが定着。
架空のキャラクターなど
- ふらいんぐうぃっち…舞台が弘前市であることから、多くのキャラクターが津軽弁を使っている。
- ましろのおと…津軽三味線をテーマにした作品で、青森県在住および出身のキャラクターが多数登場し津軽弁を使用する。
- 有栖川凛(みならい女神プルプルんシャルム)…基本的には標準語だが、感情が昂った際やモノローグの一部で津軽弁になる。キャラ設定上の青森県出身ではないが、中の人が青森県出身ということで後付けされた設定だと思われる。
- エペル・フェルミエ(ツイステッドワンダーランド)…感情的になると津軽弁になる。作中には青森県どころか実在の地名すら登場しないが、リンゴモチーフだからだと思われる。
- 峠口鮎美(明日ちゃんのセーラー服)…学校では津軽弁を出さないため標準語で喋っているが、感情的になると津軽弁が出る。なお、アニメでは中の人が青森県出身ということもあり、標準語で喋っていても津軽訛りはそのままである。