田中あすか
たなかあすか
北宇治高校の3年生で、吹奏楽部に所属。ユーフォニアムを担当し、吹奏楽部の副部長と低音パートのリーダーを務めている。
艶やかな長い黒髪が特徴の眼鏡っ娘であり、長身かつ良好なスタイルの持ち主。一見してクールで知的な雰囲気を漂わせているように見えるものの、繰り出されるノリはかなり軽く、時として周りを呆れさせるほどの雄弁家でもある。また、担当楽器であるユーフォニアムの腕前は部内でも屈指の上手さを誇る域にあり、日々のたゆまぬ練習の積み重ねと楽器へのあふれる熱意がそれを強力に支えている。
彼女は容姿端麗、頭脳明晰、卓越した演奏技術など、非の打ちどころがない完璧超人のような要素を備えており、周囲のあらゆる部員たちから「特別」な存在として見られている。その一方で、彼女自身は音楽を追求するあまり周囲の有象無象に対して一切の関心を抱かず、他人のことを心の底からどうでもいいと断じるような冷徹な一面も秘めており、表面上の賑やかさと相まってミステリアスな人間性を形作っている。そんな彼女は、吹奏楽部の副部長として激変していく部を表と裏の両方から動かしていくとともに、黄前久美子や加藤葉月、川島緑輝といった次代を担う後輩たちと関わっていくことになる。
容姿
肩に流れる艶やかな黒髪と、理知的な印象を与える赤縁の眼鏡が特徴的な、あふれんばかりの美貌と抜群のプロポーションを誇る長身の女子生徒(原作1巻、35ページ、39ページ)。長い睫毛(まつげ)に縁取られた彼女の明眸(めいぼう)は、ポーカーフェイスじみた軽薄な笑みとともに柔らかに細められており、そこから彼女自身の本来の感情をうかがい知ることはできない。(原作1巻、289ページ、原作2巻、138ページ、短編集1巻、60ページ)
部内ではトランペットパートの3年生である中世古香織と双璧をなす美人として君臨しており、可憐な印象を与える香織とは対極の、時に女性らしさを通り越して「イケメン」と称されるほどの凛々しさを振りまいている(原作1巻、117ページ)。また、彼女は女子にしてはやや低いしっとりとした落ち着いた声色をしており、その声音は聞く者をドキマギさせるような艶めきを秘めている。(原作1巻、39ページ、97ページ、232ページ)
性格
理知的な印象とは裏腹に明るく愉快に振る舞うことを常としており、しばしば突拍子もない発言やお茶目な戯言(たわごと)によって周囲を振り回している。彼女は吹奏楽関連の事柄、とりわけ自身の担当楽器であるユーフォニアムの話になると、ウィキペディアも真っ青の膨大な知識をマシンガントークのごとく披露するため、後輩の久美子たちからは「何とかしてほしい」「美人だけど中身が残念だ」などといった思いが漏れている。(原作1巻、79ページ、原作2巻、17ページ、原作3巻、13ページ、短編集1巻、16ページ)
また、それらの騒々しい振る舞いの基盤である彼女の頭の回転の速さや知識量は、ほかに並び立つ者がいないほど卓越しており、周囲からは「本物の天才」「私たちとは別次元で頭を使っている」などといった特別視のもとに見られている(原作1巻、166ページ、短編集1巻、49ページ、55ページ)。合理的でシンプルな視点のもとに状況を俯瞰(ふかん)する彼女の明晰な頭脳は、部内における調整能力や人心掌握術といった副部長としての仕事にも余すところなく活かされており、気弱な部長の小笠原晴香を強力に支える”最強のナンバー2”として部員の皆から認められるまでになっている。(原作1巻、130~131ページ、161ページ、短編集1巻、56ページ、夏紀編、54ページ)
そんな彼女は、抜群の美貌とノリのよさを前面に押し出して他者との距離をグイグイと詰めることは多々あるものの、逆に他者からの干渉に対しては一切踏み込んでくることを許さず、のらりくらりとした冗談混じりの振る舞いによって頑なに本心をはぐらかしている。先述した他者との距離感の近さも、実際には対人関係や部内の環境における自身の立ち位置を優位にするために意図的に用いている手段のひとつに過ぎないものである。(原作2巻、199ページ、原作3巻、94ページ、265ページ)
軽薄な振る舞いによって本心を覆い隠す彼女の「分厚い仮面」の下には、他者のことを「心の底からどうでもいい」と見下すような無関心が隠されており、自身を取り巻く他者を有能か無能かの二択で評価したり、部内で巻き起こるトラブルに関してもそれが自身にとって有益か無益かどうかで介入を決めたりするなど、冷徹で利己的な素顔が存在している(原作1巻、209~211ページ、244~245ページ、290ページ、原作2巻、200ページ、原作3巻、95~96ページ)。そして、他者を意識の外に置く自己中心的な図太さと、状況を見定めてもっとも合理的な答えを導き出すことのできる聡明(そうめい)さを持ち合わせた彼女には、自身の収まるべき立ち位置や進むべき道を理解してそこに従おうとする「諦め」に近い感情もまた見え隠れしており、時にはそのために自分自身の人生さえも犠牲にしてしまうような易(やす)きに流れる一幕も見せている。(原作3巻、215ページ、228~230ページ、236~237ページ、244ページ)
なお、TVシリーズであすかの声を担当した寿美菜子は、陽気さと冷徹さの二面性を持ち合わせたあすかの複雑な人物像に際して、「今までにないくらい自分に近いキャラクターである」というシンパシーを覚えるとともに、周りの部員たちから見たあすかはストーリーの始終を通して「よくわからない人」というような謎めいた存在だったのではないかという見立ても行なっている。(TVアニメ版1期オフィシャルファンブック、42ページ、『響け!ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部 入部ブック』、67ページ)
生活環境
父親はあすかが幼いころに離婚しており、現在は母親の田中明美と二人で暮らしている。(原作3巻、226ページ)
あすかの家はやや年季の入った和風建築の一軒家であり、北宇治高校の西門からほど近い、宇治川の流域に建てられている。その木造の古い家の2階にある彼女の自室には、難関大学の参考書がずらりと並べられた本棚と勉強のためのちゃぶ台、そしてケースに収められた自身の楽器しか置かれておらず、およそ女子高生のものとは思えないほどこざっぱりとした空間を形作っている。(原作3巻、211〜214ページ、219~220ページ、229~230ページ)
母親は仕事で忙しいため家にはほとんどおらず、あすかは昔から夕食の支度といった諸々の家事をこなすことで母親を助けている(原作3巻、160ページ、243ページ)。また、彼女はそのような暮らしのなかでも自分自身のための時間を確保するために毎朝4時に起きており、決して多くはないその時間を勉強や楽器の練習などに精一杯活用している。(原作2巻、218ページ、原作3巻、222~223ページ)
あすかは学校以外で楽器の練習をする際には、決まって家の近くを流れている川の堤防を訪れ、そこにある水管橋のたもとに腰を据えて取り組んでいる。この練習場所は彼女にとって昔から慣れ親しんだものであり、彼女はサンダルを履いてそのままスタスタと歩み出るような気軽さで通っている。(原作3巻、240~241ページ、TVアニメ版2期9話)
その他
- 普段の学生としての生活では進学クラスに属しており、入学から3年間つねに学校1位の成績を獲り続けている。また、経済的な理由から予備校にも通っておらず、授業と部活を差し引いた少ない時間を自習に費やしているものの、それでも彼女自身は「その程度の時間の差で、自分がほかのやつらに負けるとは思わんから」という絶対的な自信を抱いている。(短編集1巻、51ページ、55~57ページ、短編集2巻、43ページ)
- 彼女が普段の勉強でまとめているノートや日々持ち歩いているスクールバッグなどは、徹底してシンプルであることを追求しており、それらの日用品から彼女の無駄を嫌う効率的な姿勢をうかがい知ることができる。(原作3巻、211ページ、短編集1巻、59ページ)
- チョコチップの練り込まれたバタークッキーがお気に入りであり、しばしばお茶菓子としてつまんでいるシーンが登場している。また、あすかと交わりの深い香織も、そのチョコチップクッキーを「彼女の好物」として認識している。(原作3巻、225~227ページ、最終楽章後編、301ページ)
部内の誰よりも自身の楽器であるユーフォニアムを愛し、圧倒的な練習量と演奏経験に裏付けされた実力を誇る、部内でも一二を争うほどの卓越した技量の持ち主。(原作1巻、74ページ、244~245ページ、第二楽章前編、31ページ)
彼女が持っている白銀のユーフォニアムはいわゆるマイ楽器(私物)であり、父親が趣味用に買ったユーフォニアムを小学校1年生のときに譲り受けたものである(原作1巻、62ページ、原作3巻、原作3巻、9~11ページ、231~232ページ、242ページ)。父親から楽器を貰ってからは、当時近所にあった楽器屋の店員に吹き方を教わったり、独学で研鑽(けんさん)を積むなどして練習を行っていた。(原作3巻、232ページ、TVアニメ版2期9話)
そのため、彼女の高校3年生現在での楽器経験年数はおよそ12年にもなり、実に人生の半分以上を父親から貰ったユーフォニアムとともに過ごしていることになる。
あすかのユーフォニアムに対する情熱には計り知れないものがあり、楽器の練習を毎日欠かさず行っている。その練習の積み重ねによって奏でられる音色は、同じ担当楽器の後輩である久美子をして「まさしくユーフォニアムの真骨頂」と言わせるほどのものであり、聴く人の心を安らかにさせるような美しくしっとりとした響きをはらんでいる(原作2巻、217ページ、219ページ、222ページ、原作3巻、242ページ、第二楽章後編、218ページ)。そんな彼女の音色は、日本が世界に誇るユーフォニアム奏者である進藤正和の吹くそれとよく似ており、彼の演奏から大いに影響を受けている可能性をうかがうことができる。(原作3巻、159~160ページ)
また、音色の美しさのみならず、細かいパッセージを吹ききる技巧(テクニック)も相当なものであり、吹奏楽コンクールの課題曲や自由曲で指定された難解な譜面の連続も、何食わぬ顔をしながらさらっと吹ききっている。これは楽譜を見てすぐさまその音楽を再現できるほどにユーフォニアムを知り尽くしていることに対する、ひとつの証であるともいえる。(原作1巻、175ページ、原作3巻、145ページ、TVアニメ版1期12話)
余談だが、低音パートの1年生である緑輝から「あすか先輩は彼氏いるんですか?」と聞かれた際には、「いるわけないじゃない! 私の恋人はユーフォニアムさんただひとり!」と返答している。(原作1巻、191~192ページ、TVアニメ版1期8話)
あすかの持っているユーフォニアムのモデル(型番)は、YAMAHA YEP-621S。主人公の黄前久美子の担当楽器であるYEP-621(クリアラッカー仕上げ)の銀メッキ仕様にあたる。
(なお、一般にクリアラッカー仕上げ(金色)の楽器はソリッドな音でフォルテの音抜けが良く、銀メッキの楽器は柔らかく明るめの音で、より細かなニュアンスが出せるなど音色に微妙な違いが出るとされている)
幼少期~中学生時代
あすかは進藤正和と田中明美の子供として生まれたものの、彼女が2歳のころに父親である進藤が離婚したため、物心がついたころからずっと女手ひとつで育てられてきた。そのため、あすか自身は父親のことを顔立ちも含めてほとんど覚えておらず、たまに耳にする名前程度でしか存在を知らなかった。(原作3巻、9ページ、225~226ページ)
そのような環境のもとで育った小学校1年生の夏休みのある日、家でひとりで過ごしていたあすかのもとに、元父親である進藤から楽器ケースと一冊の古いノートが宅配で送られてくる。自分の名前で宛てられたそれらの贈り物を受け取ったあすかは、そこで初めて自身の楽器となるユーフォニアムとの対面を果たすとともに、贈られてきたその楽器を以後の自身の人生における「特別な宝物」として大切にするようになる。(原作3巻、9~11ページ、231~232ページ)
しかしながら、母親の明美はあすかが父親から贈られた楽器を吹くことに対して強い嫌悪感を示しており、あすかが中学への進学を機に吹奏楽部への入部を希望した際など、事あるごとに彼女と衝突して大喧嘩を繰り広げている。あすかはそのような母親を納得させるために、学業でよい成績を獲り続けることを条件として提示しており、自身がユーフォニアムを吹く環境を守るという明確な目的のもとに勉学に励み続けるという過去を歩んできている。(原作3巻、65ページ、232~233ページ)
高校1年生時
あすかは高校に進学するにあたり、学力的にはもっと上位の学校に入れるにもかかわらず、「いちばん家から近い」というシンプルな理由から北宇治高校を進学先に選んでいる(短編集1巻、56ページ)。北宇治高校の入学式では学力の優秀さを買われる形で新入生代表に選ばれ、壇上で挨拶を述べるという華々しい大役を任されており、進学クラスの期待の新星として鮮やかな高校生活を始めている。(短編集1巻、52ページ、短編集2巻、43ページ)
所属する部活動には中学から引き続いて吹奏楽部を選んでおり、彼女は3人の1年生とともに低音パートの一員になっている。当時の北宇治高校吹奏楽部は向上心とはほど遠いだらけきった雰囲気が蔓延(まんえん)しており、あすか以外の3人の同級生たちは部内のよどんだ空気に耐えきれず「思ってたのと違った」「ここにいる価値がない」などと早々に見切りをつけて退部してしまったものの、あすかはそのような部内の情勢や辞めていく同級生たちを気にも留めず、ただ自身のユーフォニアムの練習だけに向き合っている。(原作3巻、174ページ、短編集2巻、42ページ)
また、入部した当初から類まれなる頭脳や飛び抜けた演奏技術を誇っていたあすかの存在は、上級生を含むすべての部員たちから異質なものとして認識され、憧れや警戒といったさまざまな感情を向けられる対象になっていた。時には自身の持つそのような強い影響力を部の改革のために使ってみてはどうかという問いかけを受けることもあったものの、あすか自身は「あほくさ。なんでうちがそんなことしなあかんの」と一笑し、あくまで演奏者として部活に関わりたいという利己的な思いを明かしている。(短編集2巻、46ページ、48ページ)
高校2年生時
2年生に進級し、あすかいわく「とがった無能」な上級生たちによる新年度が始まって以降は、彼女は低音パートの新入生指導係として中川夏紀をはじめとする3人の後輩たちの指導にあたることになる(短編集1巻、127ページ、夏紀編、54ページ)。当時の低音パートには3年生の先輩もいたものの、実質的にパートを動かしていたのはあすかであり、そのような現状を知る周りの部員たちからは低音パートを指して「田中王国」「田中あすかの縄張り」などと揶揄(やゆ)されていた。(原作1巻、73ページ、原作2巻、153ページ、夏紀編、63ページ)
「ただ楽器が吹ければそれでいい」というスタンスを掲げるあすかは、現状のだらけた雰囲気に満足している上級生と、そんな部内の空気に不満をあらわにする新1年生の一派のどちらにも与(くみ)さず、境界線を引いて中立の姿勢を保っていた(原作1巻、244ページ、夏紀編、63~64ページ、73ページ、76ページ、80ページ)。ただし、その境界線を誰かが踏み越えて介入してきたり、彼女自身にとって不利益になるような事態が起こった場合には、正論や含みたっぷりの京言葉を容赦なく畳みかけ、相手を完膚なきまでに打ち負かしている。(原作2巻、153ページ、232ページ、夏紀編、97~99ページ)
また、あすか自身も当時の3年生部員の無能ぶりに対して「アホが上に立つとマジでめんどいな!」というような不満を覚えていたものの、それを大っぴらに明かすことは決してせず、あくまで表面上は聞き分けのいい利口な後輩という体面を取り繕っている(原作2巻、153~154ページ、夏紀編、101ページ)。そして、部内のだらけた雰囲気を変えようとする1年生部員の一派の方針についても、真正面から対決するだけでは勝てる見込みはないという他人事のような見立てを行ったうえで「集団ってのはパンドラの箱。こじ開けるつもりなら、そのあとどうなるかの覚悟もしとかんとね?」という冷笑じみた評価を下している。(夏紀編、73~75ページ)
3年生部員たちが引退して代替わりを迎えると、あすかは先代の部長からその並外れた能力を買われて新たな部長に就くように薦められている。その後の役職会議においても、あすかの部長就任を支持する声が多く挙がったものの、彼女自身は「面倒だから」とその指示に対して拒否権を発動して断り、最終的に練習熱心で人柄もいい小笠原晴香に部長職を譲る形で副部長の座に落ち着くことになる。(原作1巻、121ページ、短編集1巻、54ページ、219~220ページ)
新体制が始まって間もなく行われた定期演奏会では、あすかは持ち前のハキハキとした語り口を活かす形で司会進行役を受け持っている。また、同演奏会では選曲の段階から彼女が深く関わっており、彼女の好みを反映して低音楽器が活躍する曲がプログラムの多数を占める形になっている。(原作公式ガイドブック、13ページ、24ページ、44ページ)
高校3年生進級~吹奏楽コンクール京都大会
4月になって新年度を迎えた小笠原・田中体制の北宇治高校吹奏楽部は、新たに赴任してきた男性教師・滝昇を顧問に迎えたことをきっかけとして、その活動方針を大きく変えていくことになる。部員たちの多数決で決まった「本気で全国大会を目指す」という部内目標に基づいた滝による改革とそれによる混乱が巻き起こるなか、あすかは副部長や低音パートのリーダー、ドラムメジャーといったさまざまな役職を通して部員たちをまとめ上げ、滝の断行による部内改革や部長である晴香の舵取りを強力に支えることになる。(原作1巻、53~54ページ、89ページ、130~131ページ、原作3巻、81ページ)
あすかは副部長として全般を掌握し、ときには部内に生じた摩擦を事細かに調整して解消したりするなど、リーダーとしてもマネージャーとしても優秀な働きぶりを見せている(原作3巻、79ページ)。その一方で、部の運営に影響のない部員たち一人ひとりの個人的な問題ごとには一切の関心を示さず、また、部員たちから私的な領域に踏み込まれることも断じて許していない。彼女の部活へのモチベーション(意欲)はあくまで「ただ自分のためだけに楽器を吹き、自分が楽器を吹けたらそれだけで満足」というものであり、副部長として数々の仕事をこなすのはそれを守るための手段に過ぎない。そのため、後輩の演奏が下手だったり練習をサボっていようが、吹奏楽コンクールへの挑戦の前にテナーサックスの部員がひとり抜けようが、自由曲のソロパートを3年生と1年生のどちらが吹こうが、終始一貫して「正直言って、心の底からどうでもいいよ」という利己的な無関心のもとに静観している。(短編集2巻、42~43ページ)
また、コンクールシーズンを迎えて以降は、彼女は次第に大学受験を控えた高校3年生という自身の時期的な特性を鑑みるようになり、吹奏楽コンクールへの挑戦の終わりに自身の引退、すなわちユーフォニアムとの別れを重ねて寂寥(せきりょう)感を募(つの)らせ、「ずっとこのまま夏が続けばいいのに」というような想いをちらつかせるようになっている。(原作1巻、307~308ページ、TVアニメ版1期13話)
吹奏楽コンクール関西大会
滝の指導によって様変わりした吹奏楽部が吹奏楽コンクール京都大会(府大会)で金賞を受賞し、より上の大会である関西大会(支部大会)への進出を決めると、あすかはここからさらに先、吹奏楽コンクール全国大会へ出場する可能性をわずかながら見いだすようになる。そして、その可能性を少しでも高めるために、部内唯一のオーボエ担当である鎧塚みぞれを守るべく、彼女のトラウマの原因となっている傘木希美が部に復帰することを拒否するなどの動きを見せるようになる。(原作2巻、192~193ページ、原作3巻、235~236ページ、TVアニメ版2期1話~2期4話)
また、お盆休み明けに部が2泊3日の強化合宿を行った際には、あすかは強度の高い練習が行われるなかでも各パートリーダーを交えて夜遅くまで会議を行い、演奏の完成度をより高くするための方向性をまとめている(原作2巻、183ページ)。彼女はそのような密度の高い練習や打ち合わせに取り組むかたわら、自身のための時間もしっかりと確保しており、起床時間前の早朝にたったひとりで楽器を持って合宿場の中庭を訪れ、そこでかつて父親から貰ったノートに書かれていた「秘密の曲」を演奏している。(原作2巻、218~219ページ、TVアニメ版2期3話)
紆余曲折を経てみぞれと希美の問題が解決し、吹奏楽部が万全の構えで関西大会の本番に臨めるようになると、あすかは部員たちの前に立ち「私は”関西に来られてよかった”で終わりにしたくない。ここまで来た以上、何としてでも次へ進んで、北宇治の音を全国に響かせたい」と自身の意志をはっきりと誇示し、本番の演奏に向けて部全体の心をひとつにまとめ上げている。(原作2巻、288ページ、TVアニメ版2期5話)
退部の危機~吹奏楽コンクール全国大会
北宇治高校吹奏楽部は関西大会において大阪府の強豪校を退け、栄えある吹奏楽コンクール全国大会への出場権を獲得する。しかし、それは同時に3年生部員の引退が10月末まで延びることも意味していた。
この事実を突きつけられたあすかの母親である明美は、大学受験を理由としてあすかに退部を迫るとともに、北宇治高校の教頭と吹奏楽部顧問の滝の二人を相手取って退部のための直談判に乗り出している。母親に逆らうことができないあすかは表立った反抗を見せる様子もなく、副部長として部の支柱を担ってきたあすかが退部するという噂は部全体の士気を急速に下落させることになる(原作3巻、78~79ページ、108~109ページ、TVアニメ版2期7話)。あすかは自身の退部騒動のせいで部の士気を落としていることを自覚し、事あるごとに歯がゆい表情を浮かべているものの、他者からの介入については頑なに拒(こば)み、一連の退部騒動をたったひとりで抱え込もうとしていた。(原作3巻、93〜95ページ、129ページ、214~215ページ)
吹奏楽部での活動を止められてしまったあすかは、働いている母親に黙ってこっそりと練習に参加する一方で、万が一の事態を考えて夏紀に自身の代役として備えてほしいと指示を出している(原作3巻、95ページ、101~103ページ、176ページ)。そののち、母親に練習に参加していることが知られ、いよいよ全面的に練習に出れなくなってしまうと(原作3巻、160~161ページ)、あすかは信頼の置ける後輩である久美子を勉強会という名目で自宅に呼び寄せ、そこでこれまで頑なに伏せていた自身の秘密を彼女に打ち明けている。自身の父親が世界的に有名なユーフォニアム奏者・進藤正和であることや、母親に逆らうことができないのは自身がこれまでに受けた「借り」のためであること、そして今年の吹奏楽コンクール全国大会の審査員のひとりに進藤が選ばれており、全国大会に出られれば父親に自身の演奏を聴かせることができることなど、自身のこれまでの計らいの裏にあった本当の想いを明かしたあすかは、その終わりに父親から貰ったノートに書かれていた「秘密の曲」にも触れ、久美子とともに家の近くにある河川敷を訪れてその曲を披露している。(原作3巻、221~243ページ)
久美子との勉強会の後日、あすかは自身の教室を訪ねてきた彼女から部活復帰のための説得を切り出される。もとより事態を打破する糸口が見いだせず、母親に従うことが残された最善の道であると自身を納得させていたあすかは、力説する久美子の主張をことごとく跳ね返すとともに、「私がこのままフェードアウトすることがベストなの」という確固な持論と鋭い弁舌を次々と突き立て、相対する彼女の意志を粉々に打ち砕いている(原作3巻、258~264ページ)。しかしながら、晴香や夏紀といった部員たち、そして姉である黄前麻美子の「後悔しないよう生きるべきだった」という想いに背中を押された久美子が理屈や正論とはほど遠い「想いの強さ」だけで詰め寄ってくると、あすかはその純粋な言葉たちに心を衝き動かされることになり、照れ隠しで顔は見せないながら「でも、嬉しいよ。嬉しいな……」という素直な感謝の気持ちを口にしている。そして、タイミングよく返ってきた模擬試験の結果が良好だったことも相まって、あすかは自身の「後悔しない生き方」のためにもう一度母親に立ち向かうことを心に決めるようになる。(原作3巻、264~271ページ、274~275ページ)
久美子から受け取った想いの強さと、全国30位以内の好成績を収めた模擬試験の結果を武器に母親に部活復帰のための説得をしたあすかは、頬を引っぱたかれるなどの難攻の末に母親から復帰の了承を得ることに成功し、全国大会の出場メンバーが決まるギリギリのタイミングで吹奏楽部への復帰を果たしている(原作3巻、280~284ページ)。部の核心となっていた彼女が全国大会に出られるようになったことで北宇治高校吹奏楽部は一丸となって盛り上がり、正規の55名のメンバーそれぞれがベストの状態で本番当日を迎えている。あすかは全国大会の舞台に立つにあたり、部員たちを前にして自身の退部騒動で部に迷惑をかけたことを詫びるとともに、「今日は絶対に無様な姿をさらしたくない」という、本番の演奏と審査員である父親の両方に対する決意の言葉を告げ、部員たちを大いに奮い立たせている。(原作3巻、332~333ページ)
並みいる全国常連・常勝校との実力差もあってか、北宇治高校吹奏楽部は吹奏楽コンクール全国大会において惜しくも銅賞という結果に終わってしまう。それでも、あすかは滝の赴任から半年で様変わりした部員たちの成長ぶりを褒めたたえるとともに、来年度のコンクールにおけるさらなる飛躍を託すなど、副部長として皆を元気づけている(原作3巻、364~365ページ)。また、審査員のひとりである進藤は実の娘の演奏をしっかりと見届けており、顧問の滝を通して「よくここまで続けてきたね。美しい音色だったよ」というメッセージをあすかへと送り届けている。その言葉を受け止めたあすかは、これまで一度たりとも見せたことのなかった屈託のない笑顔を浮かべながら「やったぁ! ユーフォ褒められちゃったぁ!!」と久美子を強く抱きしめるとともに、彼女に対して「黄前ちゃん、ユーフォ好き?」という純粋な問いを投げかけ、互いに笑い合っている。(原作3巻、369~373ページ)
引退後~卒業式
コンクールシーズンの終了によって部活を引退したあすかは、一転して受験勉強に本腰を入れるなかでも、ときおり「息抜き」と称して新体制の吹奏楽部の活動状況を晴香や香織とともに見に来ている。彼女たちが訪れた際には部はちょうど定期演奏会の企画を練っており、あすかは持ち前の豊富な知識を活かして演奏会用の曲を薦めたり、曲選びに悩む後輩たちに「好きなように曲を決めちゃえばいい」と背中を押したりするなど、軽いフットワークならではのアドバイスをしている(原作公式ガイドブック、41~46ページ、50~53ページ)。なお、あすかは後輩たちの演奏会の企画にはノリノリで顔を突っ込んでいたものの、彼女自身は国立大学を受験する関係上、その日を最後に試験が終わるまでのあいだ一切部活に関わらなくなっている。(原作公式ガイドブック、47ページ、108ページ、135~136ページ)
3月に行われた卒業式では、あすかは卒業生代表として壇上に立ち、教員や在校生を前にして答辞を述べている(TVアニメ版2期13話)。彼女はその後の在校生との懇談には顔を出さず、そのままひとりで母校を立ち去ろうとしていたものの、校門を出ようとしたところで1年生の後輩である久美子に声をかけられる。あすかへの正負入り混じった想いを洗いざらい打ち明ける久美子に対し、あすかは自身の鞄に忍ばせていた一冊の古いノートを手渡す。そのノートが示すものが何であるかを悟り、「さよならって言いたくないです!」と涙を浮かべた久美子の言葉を遮ったあすかは、「じゃあ、言わない」と笑みを浮かべて約束すると、去り際に「またね!」と力強い一言を残している。
あすかが久美子に渡した一冊の古いノートは、かつて自身が父親から楽器とともに託され、彼の手による秘密の曲『響け!ユーフォニアム』が書き記されたものであった。彼女はそのノートと『響け!ユーフォニアム』を久美子に託すことによって、父親である進藤や自身が感じていたユーフォニアムに対する誇りを次代へとつなぐ役目を果たしている。(原作3巻、376~382ページ)
また、卒業式後の3月中に行われた立華高校との合同演奏会では、彼女はバトントワラーとして電飾のついたバトンを手に取り、立華高校の元ドラムメジャーである神田南と並んで活躍している(原作公式ガイドブック、162~163ページ、178~180ページ)。あすかは当初、立華高校を訪れてバトンの練習を行っていたものの、北宇治高校の後輩たちを驚かせるためにその参加については秘密にし、周囲の関係者たちにもそのための協力を頼んでいた(原作公式ガイドブック、129ページ、157ページ、160~161ページ)。卒業式後の練習において合同演奏会への参加を明かしたあすかは、自身が楽器を吹かない代わりに久美子と夏紀の演奏に対してマンツーマンの指導を行っており、彼女たちの特性にあわせた的確なアドバイスを行っている。(原作公式ガイドブック、164~167ページ)
あわせて、あすかは新生活までの猶予(ゆうよ)期間内において、元吹奏楽部の有志が企画した卒業旅行にも参加しており、1泊2日の日程でスノーボードやソリ、温泉などを満喫している。彼女は晴香や香織たちと安らかなひとときを過ごすなかで、晴香たちに新体制の主要メンバー決めの裏側を明かしたり、逆に晴香から「せっかくの記念」としてひまわりの描かれた絵葉書を買うことを薦められたりしている。(短編集2巻、91~107ページ)
卒業後
北宇治高校を卒業して大学生になったあすかは、高校時代からの親友である香織とともに新たにルームシェアを始めている。もとより、あすかは束縛の強い母親のもとから離れたいと思っていたこともあり、あすかと一緒に暮らしたい香織と利害が一致したことが決め手となっている。(短編集2巻、52ページ、106ページ、最終楽章後編、295~296ページ、300~301ページ)
二人は京都府京都市左京区(TVシリーズでは上京区)の出町柳駅を最寄り駅とする学生街の一角にあるマンションに部屋を借り、それぞれの部屋を持ちながら生活費を出し合ったり買い出しをするような暮らしを送っている(最終楽章後編、292~293ページ、295ページ、301~302ページ、TVアニメ版3期8話、3期10話)。また、ダイニングのテレビ台の上には卒業旅行で撮ったあすかと晴香、香織の3人組の写真を飾っており、彼女たちが高校生活を人生の節目としてとらえている様子がうかがえる。(最終楽章後編、296ページ)
あすかは自身のキャンパスライフを送るかたわら、北宇治高校吹奏楽部の卒業生として彼らの応援にも訪ねている。コンクールシーズンの関西大会当日には、香織とともにコンクール会場まで足を運び、その大人びた美貌で後輩部員たちを釘付けにしている(第二楽章後編、316ページ)。また、彼女は卒業旅行の際に購入した絵葉書に自分たちのマンションの住所を記入し、「困ったときに一度だけ助けてくれる魔法のチケット」と称して2年生になった久美子に手渡している。(第二楽章後編、315~316ページ、最終楽章後編、292~293ページ)
中世古香織
トランペットパートのリーダーを担当している同級生。3年生。
あすかは香織のことを「香織」と呼んでおり、対する香織は「あすか」と呼んでいる。
北宇治高校の吹奏楽部に入部してから知り合った二人は、互いに家が近いこともあって部活終わりに一緒に帰ったりするなど、1年生のころからよく一緒に過ごす親密な間柄であった(短編集2巻、41ページ)。以降も3年間の学生生活を通して一緒に昼食をとったり、あがた祭りやプールなどにそろって遊びに出かけたりしており、部の皆からは「並ぶと絵になる二人」というような仲のいい美女コンビとして認知されるようになっている。(原作1巻、188ページ、原作2巻、138ページ、短編集1巻、65ページ、原作公式ガイドブック、168ページ)
あすかは何かと世話を焼いてくる香織に対して、わざと茶化したりおどけたような振る舞いを見せて、彼女のむくれるような反応を楽しんでいる(原作1巻、265ページ、短編集2巻、40ページ、44ページ、50ページ)。また、あすかは香織から「あすかの一番になりたい」という熱烈な想いを向けられていることを理解しているものの、その想いに真摯(しんし)に向き合って応えることはせず、「かわいいでしょ、香織って」と彼女の手綱を握りながらその心を巧みにもてあそぶ、いわゆる駆け引きのような関わりを見せている。(原作3巻、217~218ページ、短編集2巻、47~50ページ)
高校卒業後に始めた香織とのルームシェアでは、あすかはおそろいのゴールドのピンキーリングを香織とともに小指にはめており、二人そろっての外出の際にさり気なくペア感をアピールしている(第二楽章後編、314~315ページ)。また、彼女は束縛の強い母親のもとから解放され、気心の知れた親友と二人だけの空間にいることもあって、ときおり香織に対して「いじわる反対!」「香織が反抗期ぃ」などといった子供っぽい甘えも寄せるようになっている。(最終楽章後編、308~309ページ)
黄前久美子
低音パートでユーフォニアムを担当しているふたつ下の後輩。1年生。
あすかは久美子を「黄前ちゃん」(原作小説では「久美子ちゃん」)と呼んでおり、対する久美子は「あすか先輩」と呼んでいる。
4月に行われた新入部員の楽器決めにおいて、自身の楽器を決めかねていた久美子の様子を目ざとく見つけたのが関わるきっかけとなっており、あすかは当初から彼女の楽器経験者としての技量の高さと素直な心根の人間性に期待を寄せている(原作1巻、41~43ページ、49~50ページ、短編集2巻、97ページ)。また、同じパートで一緒に過ごすうちに彼女に流されやすい一面があることを知ったあすかは、久美子のことを「有能だが人の領域まで踏み込んでこない後輩」として認め、吹奏楽部を裏から操る自身の思惑や、一個人としての私的な感情を彼女の前で明かすようになっている。(原作1巻、289~290ページ、307~308ページ、原作2巻、199~200ページ、274~277ページ)
とりわけ、全国大会を前にしてあすかが退部を迫られ、自身に打つ手がないことを悟った際には、自身と同じユーフォニアムの経験者である久美子を呼び寄せ、彼女だけに自身のプライベートな境遇を打ち明けている。あすかとしては部を去る前の一番最後に久美子に真実を告げようという諦めのような思いがあったものの、あすかの真実を知った久美子が正論や理屈を度外視してまで手を差し伸べてくれたことで、彼女への感謝とともに現状に打ち勝とうとする勇気を抱くことになる。
久美子の後押しによって退部の危機を乗り越えたあすかは、彼女を後輩として以上に一人前のユーフォニアム奏者として見るようになったほか、彼女に対して見栄や偽りのない本当の想いで向き合えるようになっている(原作公式ガイドブック、161~162ページ、164~165ページ、第二楽章後編、314~315ページ)。そして、あすかは久美子であれば自身が抱く「ユーフォニアムへの誇り」を継いでくれるだろうという確かな信頼のもとに、自身が父親から貰った秘密の曲『響け!ユーフォニアム』が記されたノートを彼女に託している。
また、あすかは大学2年生のある日(原作小説では秋、TVシリーズでは夏)に、高校3年生になった久美子から自身のマンションを訪ねられ、そこで彼女から部の運営に関する相談事を持ちかけられている。あすかはその際に、久美子と北宇治高校吹奏楽部のそれぞれを取り巻く問題を分析してその解決の筋道を示すとともに、そのための手立てとして久美子自身の秘める「理屈や正論ではない想いの強さ」を前面に押し出して部員たちと向き合うことを彼女に勧めている。(最終楽章後編、301〜310ページ、TVアニメ版3期10話)
中川夏紀
低音パートでユーフォニアムを担当しているひとつ下の後輩。2年生。
あすかは夏紀のことを「夏紀」と呼んでおり、対する夏紀は「あすか先輩」と呼んでいる。
高校生になってから楽器を始めた夏紀に対して、あすかは演奏技術の面では彼女をあてにしていないものの、彼女が人情の機微に聡(さと)く周りとの調整能力に長けているという特性を持っていることもまた認識しており、その「緩衝材として優秀」という評価を基にして、のちの新体制の役職決めの際に彼女を副部長に強く推している。(短編集2巻、97ページ、夏紀編、138~146ページ)
また、全国大会の前に自身が退部の危機に直面した際には、あすかは夏紀の演奏技術が自身に到底及ばないものであることを承知の上で、万が一の配置換えを見越して彼女にA編成部門出場のための練習を指示している。その指示についても、結局は夏紀の人のよさに付け込んだものであることをあすか自身も認識していたため、あすかは晴れて部活に復帰できた際に夏紀に向かって「夏紀、うちアンタには───」と謝罪の言葉を告げようとしている。しかしながら、その謝罪を遮った夏紀が、あすかの思惑など関係なくただ純粋に彼女の帰りを待っていたと答えたことにより、その想いに心を打たれたあすかは夏紀の前で涙を流している(原作3巻、283~284ページ)。あわせて、TVアニメ版2期11話ではその後日譚にあたるオリジナルエピソードが挿入されており、衰えてしまった演奏技術を取り戻すことを誓うあすかと、それを見守る夏紀とのあいだにある信頼の一端を垣間見ることができる。
加藤葉月
低音パートでチューバを担当しているふたつ下の後輩。1年生。
あすかは葉月のことを「葉月ちゃん」(TVアニメ版では「加トちゃん」)と呼んでおり、対する葉月は「あすか先輩」と呼んでいる。
新入生の楽器決めの際にトランペットの体験をしていた葉月の姿を見つけ、彼女の肺活量に目をつけたのが関わるきっかけとなっている(原作1巻、48~49ページ)。さらにTVシリーズでは、あすかは葉月を低音パートのブースに招いたのち、彼女が持っていたマウスピースをチューバに挿し込ませることにより、彼女にとっての「運命の出会い」も演出している。(TVアニメ版1期2話)
あすかは吹奏楽初心者である葉月に対して、音の出し方やリップスラーの解説、チューバが吹奏楽のなかで果たすべき役割といった基礎的な事項を教えており、彼女が一人前の奏者になれるような力添えをしている(原作1巻、110~111ページ、短編集1巻、20~21ページ、25ページ、101~103ページ)。ただし、部がコンクールシーズンを迎えてあすか自身が難度の高い練習を要求されたり、音楽の演奏とは関係ない内容でつまづいているような場合には自ら進んで葉月を助けるようなことはせず、他者のフォローに任せっぱなしになっている。(原作1巻、191ページ、209~211ページ)
川島緑輝
低音パートでコントラバスを担当しているふたつ下の後輩。1年生。
あすかは緑輝のことを「緑ちゃん」(TVアニメ版では「サファイア川島」)と呼んでおり、対する緑輝は「あすか先輩」と呼んでいる。
新入部員の楽器決めにおいてコントラバスの経験者を確認した際に、挙手をした緑輝を低音パートに誘い入れたのが関わるきっかけとなっている。あすかは彼女を配下のように使って久美子や葉月を低音パートに誘い入れており、その際の彼女の人のよさや利口ぶりから「この子、使えるな」と有能な後輩であると確信している。(原作1巻、38~39ページ、43ページ、48~49ページ)
あすかはその後も、部内唯一のコントラバス奏者でありながら堂々とした演奏を披露したり、本番の前に緊張することなく楽しもうとする緑輝の姿に際して、その都度「さすが緑ちゃん、ほんま頼もしいわ」というような感心を口にしている(原作1巻、307ページ、原作2巻、30ページ、64ページ、原作3巻、24ページ)。そして、あすかは自身が部活から引退する折に緑輝を呼び出し、彼女に「低音パートの伝統」と称して音楽や楽曲に関する説明を披露する役目を託している。緑輝自身もまた、尊敬するあすかから重大な役目を受け継いだことを光栄に思っており、代替わり以降の練習のなかでも、たびたびあすかをリスペクトした赤縁の伊達眼鏡をかけながら楽曲解説を披露している。(原作公式ガイドブック、115~118ページ、第二楽章前編、87ページ、227ページ、短編集2巻、211ページ)
高坂麗奈
トランペットパートに所属しているふたつ下の後輩。1年生。
あすかは麗奈のことを「高坂さん」と呼んでおり、対する麗奈は「あすか先輩」と呼んでいる。
麗奈が香織をしのぐほどの演奏技術を持っていることについて、香織の親友であるあすかは関心を示していたものの、その楽器の上手さがもたらす部内のいさかいについては興味の外に置いていた(原作1巻、287~289ページ)。また、あすかは演奏は上手である一方で人づきあいが下手という麗奈の特性もまた認識しており、顧問の滝にラブの感情を向けてひとりで舞い上がっている彼女の様子を見てニヤニヤと面白がったり、あからさまに怪訝(けげん)そうな表情を向けられているにもかかわらず仰々しく彼女の手をとったりするなど、事あるごとにちょっかいを出して楽しむような様子を見せている。(原作3巻、366~367ページ、短編集1巻、190~192ページ、最終楽章後編、303ページ)
小笠原晴香
吹奏楽部の部長とサックスパートのリーダーを務めている同級生。3年生。
あすかは晴香のことを「晴香」と呼んでおり、対する晴香は「あすか」と呼んでいる。
あすかと晴香は吹奏楽部を束ねる部長と副部長のコンビとして、部の集合・解散といった結節時や各種のミーティングなどで二人そろって部員たちの前に立っている。お調子者のあすかとそれをたしなめる真面目な晴香のコンビは、しばしば堅苦しい場の空気を和らげており、部員たちにとっても親しみやすいものとなっている。(原作1巻、36~38ページ、原作2巻、288~289ページ、原作3巻、331~332ページ、364ページ)
また、あすかは気弱な晴香に代わって、ドラムメジャーのような身体を張る仕事や緊急的な指示を進んで受け持つなど、運営面で晴香の手が届かないところをカバーするような一幕も見せている。しかしながら、その仕事ぶりがあまりに達者すぎるために、晴香本人からは「これではどっちが部長かわからない」というようなコンプレックス(劣等感)を一方的に抱かれるようになっている。(原作1巻、89ページ、原作2巻、87~89ページ、短編集1巻、53ページ)
斎藤葵
サックスパートでテナーサックスを担当している同級生。3年生。
あすかは葵のことを「葵」と呼んでおり、対する葵は「あすか」と呼んでいる。
あすかと葵は互いに進学クラスに3年間続けて所属しているクラスメイト同士でもあり、あすかはそんな葵のことを自身には及ばないものの「秀才」と認識している(短編集1巻、51ページ、56~57ページ)。あすかはときおり、葵から自身の持つ才能の高さを羨まれることがあるものの、刺激を回避する意図も含めて「それはないものねだりってやつ」などと、足りない才能を立ち回りで補っているだけに過ぎないと謙遜(けんそん)している。(短編集1巻、54~58ページ)
また、葵がコンクールシーズンの前に自主退部を決めた際には、あすかはサックスパートにおけるテナーサックスの部員数を鑑みて十分カバー可能であるという判断をしており、特に悔やんだり惜しんだりすることもなく「勉強、頑張ってな」と彼女の判断を後押しするに留まっている(短編集1巻、59~60ページ)。コンクールシーズン以降は部活でのつながりはなくなってしまう一方で、進学クラスのなかでは葵が行方をくらましたあすかのことを探しに来てくれたり、全国大会が終わって部活を引退したあとに一緒に下校をしたりと、そこそこ良好な関わりを見ることができる。(原作3巻、269~271ページ、TVアニメ版2期13話)
吉川優子
トランペットパートに所属しているひとつ下の後輩。2年生。
あすかは優子のことを「優子」と呼んでおり、対する優子は「あすか先輩」と呼んでいる。
あすかは副部長としての最後の1年間を通して、優子の人柄やそれが周囲に及ぼす影響を冷静に分析しており、「あの子は部長以外やれないでしょ」とよくも悪くもリーダーの強い素質を持っていることを見抜いている。そして、あすかは優子を部長に指名した場合にもっとも強力に機能する人員配置もあわせて考えており、そのお陰もあって代替わり以降の部活運営は組織力のバックアップのもとに優子のカリスマ性が最大限発揮される形になっている。(第二楽章後編、356ページ、短編集2巻、96~98ページ、夏紀編、138~144ページ、244ページ)
鎧塚みぞれ
ダブルリードパートでオーボエを担当しているひとつ下の後輩。2年生。
あすかはみぞれのことを「みぞれちゃん」と呼んでおり、対するみぞれは「あすか先輩」と呼んでいる。
みぞれが部内唯一のオーボエ奏者であることや、一年前に起こった集団退部事件の際にトラウマを負っていることを知っていたあすかは、コンクールシーズン中にみぞれがパニックになって演奏できなるなることでコンクール自体の結果に影響が出ることを危惧(きぐ)し、彼女のトラウマの原因となっている希美が部活に復帰することを阻止したり、みぞれのメンタルケアを定期的に診たりしている(原作2巻、56ページ、192~193ページ、197~198ページ、原作3巻、235~236ページ、原作公式ガイドブック、215ページ)。しかしながら、問題の解決を先延ばしにするというあすかの判断は、本番前日になってみぞれと希美が偶発的に対面し、その結果みぞれが逃げ出してしまういう最悪の結果を招くことになってしまい、あすかは一刻も早い事態の収拾を余儀なくされることになる(原作2巻、249~250ページ、252~253ページ)。あすかは優子や久美子の協力も用いつつ、希美に再度みぞれと対面してもらうというショック療法によって事態を強引に解決しようと試み、実際に彼女たちの活躍もあって事態を収めることに成功している。
あすかは、みぞれの内向的な性格の裏に他人に甘える一面があることを見抜いており、関西大会前のトラブルが収拾したのちにそれを口にしている(原作2巻、275~276ページ)。また、あすかはみぞれの長所である驚異的な集中力に対しても舌を巻くような感心を見せており、彼女のことを褒める際に積極的に活用している。(原作公式ガイドブック、54ページ)
傘木希美
かつてフルートパートに所属していたひとつ下の後輩。2年生。
あすかは希美のことを「希美ちゃん」と呼んでおり、対する希美は「あすか先輩」と呼んでいる。
あすかは希美が入部してきた当初から、彼女が良好な演奏技術を持っていることは認めつつも、現体制に不満を表して改革しようとする彼女の姿勢については「勝手によその方針を持ち込んで主張しても失敗するだけ」と愚かな行為として見ていた(夏紀編、73~74ページ)。そののち、部を改革することを諦めた希美が退部届を出した際にも、あすかは彼女の様子を見に現れているものの、あすか自身は「優秀な奏者が辞めるのは部にとっての損失になる」という損得勘定でしか希美を見ておらず、結局希美の衝動を抑えることなく彼女を野放しにしてしまう。(原作2巻、153~155ページ、200ページ)
それから1年後、様変わりした北宇治高校吹奏楽部を見た希美は復帰をしようと部に戻ってくるようになるものの、あすかは先述のようにみぞれのトラウマ再発を防ぐために希美の復帰を頑なに拒んでいる。もっとも、その拒否には希美に対する悪意は挟まれておらず、あくまで部の目的を達成するために希美を犠牲にせざるを得ないという側面が見受けられる。(原作2巻、197~198ページ、208ページ)
また、あすかは代替わりにおける役職決めの際に、後輩である夏紀から希美を部の中核に配置することを薦められている。しかしながら、あすかは希美が北宇治高校吹奏楽部の大改革を直接経験していないがゆえに、周囲からの人望がほかの2年生よりも薄いことを挙げるとともに(あすか自身はこれを「軌道に乗ってから戻ってきただけのよそ者」と称している)、南中学校と北宇治高校とでは部の空気感が違うということを指摘し、彼女を部の中核に置くのは運営上不適であると答えている。(夏紀編、144~145ページ)
田中明美
あすかの母親。
あすかは明美のことを「お母さん」「あの人」と呼んでおり、対する明美は「あすか」と呼んでいる。
明美はあすかの父親である進藤正和が離婚のために家を去って以降、十数年間女手ひとつであすかを育ててくれており、あすかはそんな母親の身体的・心的負担や経済的な苦労を目にして深い感謝の念(あすか自身が感じている母親からの束縛を加味すれば「借り」というニュアンスに近い)を抱いている(原作3巻、228~229ページ)。しかしながら、あすかはそれと同時に母親が「自身の理想像」のなかにあすかのことを入れ込もうとし、そのために強い束縛を科していることもあわせて認識しており、彼女にとって母親という存在は一生外せない枷(かせ)のようなものであるというやるせない思いを抱くまでに至っている。(原作3巻、62ページ、230ページ)
それらの複雑な境遇がまとまった結果として、あすかは母親に対して「ここまで来ると、好きとか嫌いとか、もうそういうんじゃないねんなあ」という、確執や恩義、そして愚かな人間性に対する憐憫(れんびん)がごちゃ混ぜになった思いを抱いており、しょっちゅうヒステリーを起こす母親を侮蔑(ぶべつ)しながらもそれに従うしかないという相反した生き方を送っている。(原作3巻、227~230ページ、244ページ)
あすかは高校を卒業すると香織とともにルームシェアを始めており、実質的に母親のもとを離れて自立した生活を送るようになっている。また、その少し前に参加した卒業旅行では土産物を選ぶ一幕が登場しているものの、あすか自身は「うちはやっぱ土産いらんわ。買いたい人もおらんし」と意図的に母親を意識の外に置いている様子を見ることができる。(短編集2巻、106ページ)
進藤正和
あすかの元父親であり、世界的に有名なプロのユーフォニアム奏者。
あすかは進藤のことを「進藤サン」と呼んでいる。
あすかが2歳のころに父親である進藤が離婚して家を去ったために、あすか自身は父親のことをほとんど覚えていない。しかしながら、あすかが小学校1年生のころに父親から楽器とノートを宅配で送られ、彼女はそれをきっかけにしてユーフォニアム奏者というもうひとつの顔を持つ父親に興味を抱くことになる。あすかは父親の演奏が収録されているCDを集めてこれを聴き込み、自身の演奏の上達の参考にするとともに、父親から贈られたノートに書かれていた曲を自身だけの「秘密の曲」にして宝物のように大切に扱っている。(原作2巻、217~219ページ、原作3巻、159~160ページ、237~240ページ)
時が流れて高校3年生になったあすかは、あるとき当年度の吹奏楽コンクールの全国大会の審査員に自身の父親が選ばれていることを知る。京都大会のころまでは会えるかどうかは未知数程度に思っていたものの、関西大会に進出するようになると父親に会える可能性が現実味を帯びてきたため、「お父さんに自分の演奏を聴かせたい」という自身の純粋な原動力をもとにして、それを叶えるための状況を意図的に作為するようになっている(なお、あすか自身はこれを「そのために、うちは部活を利用した」という形で明かしている。※原作3巻、234~236ページ)。一時は退部騒動によってその可能性が潰えそうになってしまうものの、あすかはこれを何とか乗り越えて、無事に全国大会の舞台で父親に自身の演奏を送り届けている。
その終演後、すべてを出し切っていたところに顧問伝いに父親からのメッセージを受け取ったあすかは、そのひと言ですべてが報われたような喜びを実感し、これまで見せたことのないようなとびきりの笑顔を浮かべている。同時に、彼女はこれまでずっと自身の人生のそばにあったユーフォニアムという存在から解き放たれたような思いもあわせて抱いており、久美子のようなごく一部の親しい者もまた、あすかのそのような心情の変化をうすうすと感じ取っている。(原作3巻、378~379ページ、原作公式ガイドブック、108~109ページ)
冬制服
夏制服
ドラムメジャー(サンライズフェスティバル)
水着姿
コート&マフラー姿
ワンピース姿(大学1年生時)
私服姿(大学2年生時)
小学生時代
黄前久美子 - 低音パートでユーフォニアムを担当しているふたつ下の後輩。癖毛の1年生。
加藤葉月 - 低音パートでチューバを担当しているふたつ下の後輩。ショートヘアの1年生。
川島緑輝 - 低音パートでコントラバスを担当しているふたつ下の後輩。小柄な1年生。
中川夏紀 - 低音パートでユーフォニアムを担当しているひとつ下の後輩。2年生。
後藤卓也 - 低音パートでチューバを担当しているひとつ下の後輩。寡黙な男子部員の2年生。
長瀬梨子 - 低音パートでチューバを担当しているひとつ下の後輩。温厚な2年生。
小笠原晴香 - サックスパートに所属している同級生。北宇治高校吹奏楽部の部長を務めている3年生。
斎藤葵 - サックスパートに所属している同級生。あすかのことを心の隅で羨んでいる節のある3年生。
中世古香織 - トランペットパートに所属している同級生。皆の憧れを集めている3年生。
ジョイナス先輩 - TVアニメ版1期1話のセリフを基にしたファンからの愛称。
あすくみ - 黄前久美子とのカップリング(コンビ)タグ。
あすはる - 小笠原晴香とのカップリング(コンビ)タグ。
あすかおり - 中世古香織とのカップリング(コンビ)タグ。
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久美子が高校3年生の2月下旬。受験が終わった久美子は吹奏楽部の定期演奏会で卒業生の先輩達に再会するも、一番会いたかった先輩には会えなかった。そこで──。 ※ 原作3巻のネタバレを含みますのでご注意ください。 ※ このSSでは、定期演奏会にOB・OGの有志も参加している、という設定です。 アニメのあすかは色々端折られているからか、原作と少し違う印象を受けるところもありますが、これから本格的に話が進むと思うので、どう描かれるのか楽しみです。4,272文字pixiv小説作品 - Ogni nuovo viaggio
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春の空に響く音
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響け♪ユーフォの夏合宿 その8(使い魔)
アニメ 響け!ユーフォニアム13話以降、関西大会までの間の2次創作です。 シリーズ物、その1~その7を先にお読み下さい。 くみれい要素多め、百合描写は? メロディのスキンシップです 登場人物:黄前久美子、高坂麗奈、加藤葉月、川島緑輝、中川夏紀、吉川優子、田中あすか、中世古香織、小笠原晴香、塚本秀一、滝先生、松本美知恵先生、後藤卓也、長瀬梨子、高久ちえり、吉沢秋子、瞳ララ、森田しのぶ、その他 「脱がないでください。もうこれ以上面倒事はごめんです」 注:アニメにも原作小説にもない解釈を含みます。個人的解釈が苦手な方はご遠慮ください。5,255文字pixiv小説作品