イネ科
いねか
単子葉類イネ目の植物の一群。科レベルでは最も繁栄している植物で、栽培植物としても重要な種が多い。
概要
イネ科(禾本科、poaceae)は被子植物単子葉類イネ目の8000種が属する大きな科。ススキやアシやシバなど、草原を構成する主要な草がイネ科に属する。
現在の地球では繁栄に非常に成功している分類群であり、南極大陸やグリーンランドを含む世界の全ての主要な陸地にイネ科主体の群落を作っている。いくつかの種は人間活動に伴い分布を大きく広げており、スズメノカタビラのように熱帯から南極に至る世界中に分布する汎存種もある。
人類との関わりも大変深く、「世界4大作物」のうち3つ、イネ・コムギ・トウモロコシがイネ科である(あと1つがナス科のジャガイモ)。その他にもライ麦や大麦など、いわゆる「穀物」の多くがイネ科に属し(ソバなどイネ科ではない穀物もある)、穀物の他にもサトウキビやタケなど有用植物が多い。一部の種はC4型光合成という低CO2濃度・乾燥・強光に適応した機構を発達させていて、これがイネ科植物が700万年前ほど前から著しく増加した原因とされている。
生存戦略において同じ単子葉類に属するラン科と好対照をなす分類群である。虫媒花としての進化が著しいラン科植物に対し、イネ科は花粉媒介を風に頼る風媒花に特化する方向に進化したものであり、花は地味。種数はラン科には大きく及ばないものの、一種当たりの個体数が非常に多くなる傾向があり、生体量(バイオマス)では遥かに上回る。カヤツリグサ科は同じ風媒花として進化し、主要な草原の構成種である点でよく似ているが、カヤツリグサ科は形態的な多様性に乏しいことと、人類にとっての利用価値のある種が限られていることから、イネ科に比べ遥かに注目されることが少ない。