概要
イネ(稲)は、単子葉類イネ目イネ科イネ属の植物。20数種があるが、食用として栽培されるのはアジアイネOryza sativaとアフリカイネOryza glaberrimaの2種だけである。
種子を収穫したものを米(お米、コメ)と呼ぶ。小麦・トウモロコシと並ぶ世界三大穀物のひとつである。
アジアイネ
世界で栽培されているほとんどのイネはアジアイネOryza sativaである(アフリカイネはアフリカの西部でごくわずかに生産されているだけ)。
多年生草本としての性質を持っているが、二年目以降は収穫が激減するため、栽培作物としては一年で作付けから収穫まで終えるのが一般的。日本でも刈り取った稲のひこばえから小さな穂を実らすことがある。
多くの種類があるが、大別すると、耐寒性があり粒が短く炊くと粘りが出るジャポニカ、粒が短く大きいジャバニカ(ジャポニカに含まれることがある)、粒が長く炊いた後もパラパラしており主に熱帯で栽培されるインディカの3系統がある。それぞれもち種とうるち種がある。
世界的にはインディカ米の生産量が多く、南アジアや東南アジア、中東の大半で栽培されるのは主にインディカ米である。ただし、ジャポニカが圧倒的主流の日本や韓国ではほとんど流通がない(輸入されたインディカ米はもっぱら加工用に回される)。
ジャポニカは日本や朝鮮半島、台湾のほか、アメリカ合衆国西海岸や、オーストラリア、北イタリアの一部などで栽培される。ジャポニカ米を普段食べない地域でも寿司用などとして広く出回っている。
ジャバニカは遺伝的にはジャポニカ種そのものと言ってもいい(このため分類学上はジャポニカに含まれる)のだが、調理手法や食感はインディカに近いので栽培上区別される。このジャバニカはインドネシアのジャワ島で栽培されるほか、一定の耐寒性があるためヨーロッパでも作られる。中南米でも広く作付けされる。リゾットやパエリアに使われるのがこのジャバニカ米である(ジャポニカやインディカも使われる)。
中国は南部でインディカ、北部でジャポニカを栽培していたが、近年では中国全域でジャポニカが主流になりつつある。
日本のイネ
日本で栽培されているイネは全てジャポニカである。
日本は豊富な降水と温暖な気候に恵まれ、一部の離島や北海道の道東地方を除き、ほぼ日本全国どこでも作られている。栽培には夏の気候が重要で、夏に長雨などに祟られ気温が上がらないと、酷いときは全滅することもある。
ただし、日本で栽培されている耐寒性の強いジャポニカ種の場合は夏場暑すぎるのもよくなく、収量が落ち、米の品質が悪くなる。地球温暖化に伴い、暑さに強い品種の開発が進められている。
日本在来のジャポニカ稲には多数の品種があるが、近年は日本人の好みや栽培しやすさなどの都合からコシヒカリの系統の品種ばかりとなり、遺伝的多様性の面から懸念されている。