MacOS
まっくおーえす
Appleから出荷された、Mac OSの名を冠したオペレーティングシステムには次の3システムがある。
1.Classic Mac OS(1984年~2001年)
➝ System、漢字Talk(日本語版)、Mac OSなどと呼ばれたOS。基本的にMacintosh専用だが互換メーカーにライセンスされていた事がある。ClassicMacOSを参照。
2.Mac OS X Server 1.x(1999年~2000年)
→ Appleが買収したNeXT社の製品であるBSD系UNIX、OPENSTEPの見た目をMac風に変更し、Classic Mac OS互換環境とサーバ機能を追加したもの。Mac OS X10.0のリリースに先駆けて暫定的に出荷されたものである。
3.macOS(2001年~)
➝ OPENSTEPの技術を中心にAppleが作ったBSD系UNIX。Classic Mac OSの後継システム。当初の呼称はMac OS X。のちOSXを経て現在のmacOSに呼称を変更された。
概要
macOS(マックオーエス)は、Apple Inc.のMacintoshパソコン用の現行オペレーティングシステム (OS) である。最新バージョンはmacOS 14 Sonoma。10.7 LionまではMac OS X、10.8 Mountain Lionから10.11 El CapitanまではOSXと称した。
OSの系譜としてはUNIX系であり、BSDの子孫の一つである。正式な認証を受けたUNIXとしては最もユーザー数が多い。
v10.6まではサーバー版がMac OS X Serverとして販売されていた。ただし、Mac OS Xの発売前(1999年〜2001年)にアップルから販売されていたMac OS X Server1.xは基本的に全くの別システムである(後述)。
バージョンの変遷
v10.8までのOS Xにはネコ科猛獣のコードネームが当てられていたが、v10.9以降はカリフォルニア州の地名がコードネームとしてつけられている。v10.2 Jaguarから(日本ではv10.3 Pantherから)は商品名にもなっている。
v10.12以降はmacOSと名を改めたが、ピクシブ百科事典の仕様上大文字と小文字を区別できず、この項目名を作成できないため本項目で引き続き取り扱う。
バージョン | コードネーム | バージョンの概要 |
---|---|---|
Public Beta | Siam | ベータ版だが開発者以外も有償で購入できた |
Mac OS X v10.0 | Cheetah | 開発環境のCD-ROMが付属 |
Mac OS X v10.1 | Puma | v10.0ユーザーには無料提供 |
Mac OS X v10.2 | Jaguar | このバージョン以降のコードネームは商品名でもある |
Mac OS X v10.3 | Panther | Safariが標準ブラウザに |
Mac OS X v10.4 | Tiger | このバージョンの途中からIntelに対応した |
Mac OS X v10.5 | Leopard | PowerPC対応の最後のバージョン |
Mac OS X v10.6 | Snow Leopard | 64ビットに本格対応。カーネルは32ビットのままである |
OS X v10.7 | Lion | ダウンロード販売に移行 |
OS X v10.8 | Mountain Lion | カーネルが64ビット化。32ビット機には対応しなくなった |
OS X v10.9 | Mavericks | ダウンロード無償化 |
OS X v10.10 | Yosemite | ことえり廃止、新たな日本語入力プログラムに移行 |
OS X v10.11 | El Capitan | Metal搭載 |
macOS v10.12 | Sierra | Siri搭載 |
macOS v10.13 | High Sierra | APFSを本格実装 |
macOS v10.14 | Mojave | 32ビットアプリを動かせる最後のバージョン |
macOS v10.15 | Catalina | iTunes撤廃、Carbon API廃止、Sidecar(iPadを2台目のディスプレイとして使う)実装 |
macOS 11 | Big Sur | Appleシリコン対応、WebP対応、iOSに似た外見にリデザイン |
macOS 12 | Monterey | Live Text対応(英語のみ)、ユニバーサルコントロール実装(12.3から) |
macOS 13 | Ventura | Live Textが日本語対応、AVIF対応、ステージマネージャ実装 |
macOS 14 | Sonoma | ウィジェットのデスクトップ配置に対応 |
特徴
Macintosh専用のUNIX互換OS。このOSからiPhoneやiPadなどAppleのモバイル製品に搭載されるiOSが派生している(後にiPad向けはiPadOSとして独立)。
1996年にアップルが買収したNeXT社の技術をベースに、バージョン9まで続いたそれまでのClassicMacOSの後継として開発され、2001年からリリースされている。
UNIXベースとなり、比較的容易な移植でBSDやLinuxなど他のUNIX系OSで開発されたソフトウェア資産を使うことができる(Mac Portsというリポジトリサービスを使うのが一般的)。またWineという互換環境をインストールすれば制限はあるがWindows向けソフトウェアも一応使うことができる。IntelMacなら、Boot Campという機能を使ってWindowsそのものをインストールしてデュアルブートもできる。また、.net Frameworkランタイムmonoを導入すれば同FW準拠で書かれた大半のWindowsソフトは動作する。多言語対応に力を入れており、最初のバージョンから標準インストールで複数の言語がサポートされている。そのため、言語別パッケージという概念がなく、同じバージョンならばどの国で買っても同じパッケージである。
また、OSの刷新に合わせて完全なプリエンプティブ・マルチタスクやメモリ保護を実装し、安定性は従来のClassic Mac OSとは比べものにならないほど向上した。ちなみにシステムエラー時に出てくる爆弾アイコンは廃止されている。
v10.4までのPowerPC版はClassic環境と呼ばれるClassic Mac OS互換機能を持っていた。
Mac OS Xの開発はNEXTSTEPに従来のMac OS(両者は全く異質なシステムである)を統合する形で進められた。1997~1998年ごろに開発されていたもの(コードネームRhapsody)は「Macっぽい見た目のNEXTSTEP」という具合だったが、開発者の支持を得られなかったため、実際に製品化されたMac OS Xは、両OSに由来するテクノロジーが深い部分まで密接に統合された全くの新システムとなった。
NEXTSTEPから受け継いだ機能
- Darwinカーネル - Mach 3.0マイクロカーネルをハイブリッドカーネル化して実装。ドライバモデルはNEXTSTEPで採用されたObjective-CベースのDriverKitを機能限定版のC++で実装したI/OKitに置き換えている。
- BSDサブシステム - OSXのUNIX互換機能を担う。FreeBSDと密接な関係がある。
- Cocoaと開発環境 - Objective-Cベースのオブジェクト指向API。OSXのメインのAPIだが、従来のMacのToolbox APIとは全く異なる。iOSのAPIもこれである。JavaやPythonなどとの言語ブリッジも用意されており、後に開発言語にSwiftが加わった。
- Dock - 基本的に「Macらしさ」の色濃いOSXのGUIの中で、NeXT色を強く感じさせる部分。NEXTSTEPとMacOS Xに特有のGUI要素だったが、Windows7以降のWIndowsのタスクバーはこれに似た機能をそなえている。
- レインボーカーソル - Macユーザーにはおなじみの、処理待ち中にカーソルが虹色の丸になってクルクル回るあれ。Classic Mac OS時代は「腕時計」だった。
- プロパティリスト - オブジェクト直列化のためのプロトコル。ただし、フォーマットはNeXTと異なる。
- NetInfo - ディレクトリサービス。v10.4で後継のOpen Directoryに置き換えられた。
Classic Mac OSから受け継いだ機能
- Carbon - Classic Mac OSのToolbox API をOSX向けに再設計したもの。C/C++ベース。Cocoaの浸透により徐々にフェードアウトし、macOSの完全64ビット化に伴い廃された。
- Finder - デスクトップシェル。macOSの「顔」の部分。Classic Mac OS由来なので初期はCarbonベースだったが、v10.6でCocoaベースに作りなおされた。
- 画面上部固定のメニューバー - 初代Macから現在まで、Macのアイデンティティとして脈々と受け継がれている。
- デスクトップ - NeXTにはデスクトップという概念が無く、Dockはこれを補うための要素であったと考えられる。
- HFS+-Apple独自のファイルシステム(Mac OS拡張フォーマットともいう)。NEXTSTEP(というかUNIX)由来のファイルシステムであるUFSも初期バージョンからサポートしているがあまり使われず、v10.5でUFS でフォーマットされたボリュームにインストールできなくなった。v.10.13で後継のAPFSが実装された。
- QuickTIme - Carbonベースのマルチメディア環境。v10.6のQuickTimeXを経て後継のAVFoundationに置き換えられた。
- AppleScript - OS標準のマクロ言語。後にCocoaフレームワークとのブリッジも用意された。
- ATSUI - テキストのレイアウトエンジン。後に後継のCore Textに置き換えられた。
- ことえり - インプットメソッド。v10.10でiOSのインプットメソッド(固有の名前は与えられていない)に置き換えられた。
このほか、QuickDrawやリソースフォークなどもサポートされたが、基本的に従来のMacの機能を移植するために用意されたレガシーな機能であり、徐々に廃された。
完全に新規に開発された機能
- Quartz -PDFベースの描画エンジン。機能的にはほぼNeXTのDisplay PostScriptの上位互換だが、Classic Mac OS由来のQuickDrawを効率的にサポートするために新規に開発された。
主要な付属アプリケーション
主要なユーティリティ
- Automator(操作の自動化)
- スクリプトエディタ
- ColorSync
- DigitalColor Meter
- FileVault(ホームディレクトリを暗号化)
- Grapher(グラフ計算機)
- VoiceOverユーティリティ(音声認識)
- アクティビティモニタ
- キーチェーンアクセス
- 移行アシスタント
- Time Machine