概要
会話において、話し言葉がなめらかに出ない(非流暢)発話障害の一つ。
俗に「どもる」ともいうが、現在では差別的とされ、放送禁止用語としてみなされている。
ひとえに「なめらかに話せない」と言ってもさまざまな種類があるが、吃音の特徴は大きく分けて以下の3つに分類される。
「おはようございます」という言葉の場合
- 「お、お、おは、おはようございます」というように、(言葉の最初の)音を繰り返して発音してしまう連声、連発。
- 「おーーーーーはようございます」というように、最初の音を引き伸ばしてしまう伸発。
- 「……お(はようございます)……」というように、言葉がうまく出せずに黙ってしまう、あるいは次の音に繋がるまで間が空いてしまう難発、ブロック。
さらに、本人が言葉に詰まってしまうのを気にして、手足を動かす、瞬きするなどの吃音から逃れるために体を動かすことで、動き自体が癖になってしまうという人もいる。話すこと、またそれによる相手の反応などに強い不安・恐怖を感じたり、会話自体を避けたりといった情緒的な症状や、吃音が起こることを避けるために話し方に独特の工夫を加える(例えば「あの」、「えっと」、というようなつなぎの言葉を頻発するなど)、話すのを途中でやめて相手の話を聞く方に専念しようとするなどの特異な会話における癖があると分析されている。
吃音は幼児期に発症する発達性吃音と、青年期以降に発症する獲得性吃音に分けられる。多くは幼児期に発症すると考えられており、また男性に多いとされる。
構音障害と合併している患者も多い。また、発達障害を抱えている患者も多いというデータも存在し、なんらかの関連があると見られている。
その原因ははっきりしておらず、精神的起因、脳の異常、遺伝的なものなど諸説ある。高次脳機能障害などに見られる失語症も吃音に似た症状を示すが、失語症は読む、書く、聞く、話すという言語能力全てに及ぶ障害であるのに対し、吃音はあくまで「話す」ということだけに問題がある障害である。勘違いされがちかもしれないが、滑舌が悪い理由との関連性は不明だが当事者によれば全くの似て非なる別物らしいが、知りたい人は専門家に聞いてみよう。
精神医学の臨床で広く用いられる診断基準であるDSM-4TRにおいては、以下のように定義されている。
A. 正常な会話の流暢さと時間的構成の困難。(その人の年齢に不相応な)で、以下の1つまたはそれ以上のことがしばしば起こることに特徴づけられる。
- 音と音節の繰り返し
- 音の延長
- 間投詞
- 単語が途切れること(例:1 つの単語の中の休止)
- 聞き取れる、または無言の停止(音を伴ったあるいは伴わない会話の休止)
- 遠まわしの言い方(問題の言葉を避けて他の単語を使う)
- 過剰な身体的緊張とともに発せられる言葉
- 単音節の単語の反復(例:て て て てが痛い)
B. 流暢さの障害が学業的または職業的成績、または対人的コミュニケーションを妨害している。
C. 言語-運動または感覚器の欠如が存在する場合,会話の困難がこれらの問題に通常伴うものより過剰である。
治療においては、言語聴覚士による話し方、呼吸法などのトレーニングが行われるほか、精神医学・心理学的アプローチとして認知行動療法などが用いられる。
吃音を持つ人は二次障害として人とのコミュニケーションに不安を感じる社交性不安障害や回避性パーソナリティ障害などを抱えていることも少なくないという。このため、精神的な症状の治療も同時に行われることがある。
吃音を持っていた人物
※順不同。のちに改善した人物は*で補足する
「歌っているとどもりがでにくい」という意見や、たくさん話す機会を設けることによって改善されるという考えから、歌手やアナウンサー、俳優といった、声を出すことを仕事にする人も比較的多い。