もしかして
概要
北欧神話の魔剣ダーインスレイヴの名を冠する電磁投射砲(レールガン)。
モビルスーツの構造材にも使用されている高硬度レアアロイで製錬された針金のように細い専用弾頭を超高速で発射する。
電磁投射砲ではなく火薬で弾体を発射する形式の物もあるが、電磁投射砲を使用するよりも貫通力、射程等は落ちる事になる。
専用弾頭はその性質上、運動エネルギー弾(KEP)に分類される。
元々は厄祭戦時に対モビルアーマー用として開発された兵器である。
射撃武器でありながら、モビルスーツはおろか軍用の艦船のナノラミネートアーマーを貫くほどの非常に高い威力を持つ。
通常兵器では届かない軌道上から地上施設を攻撃する際にも使用され、その際には衝撃波で着弾地点の地形が大きく変わる程の破壊力を発揮する。
専用弾頭の強度は極めて高く、軌道上からの砲撃で地表に突き刺さった物でも原型を留めている。
厄祭戦終結後も人間同士の戦争で使用されていたが、ナノラミネートアーマーを無力化する威力で多くの人命を奪ったために非人道的とされ、条約で使用禁止となっている。
もっとも、この条約は建前に過ぎず、実際には多くのMSを所持するギャラルホルンが自らの優位性を失わないよう「MSに対抗可能な兵器」の流通を制限しているという面もある。
また、明確に禁止されているのは『専用の弾頭を高出力レールガンで射出すること』であり、高出力レールガン本体のみならば、弾頭を別のものに変えればグレーゾーン扱いで、即座に違反とはならない。
禁止兵器とされた後も、既に製造されていたダインスレイヴや特殊な弾丸、制作に必要な設計図やデータなどが全て破棄されたわけではなく、当のギャラルホルンは使用可能な状態のダインスレイヴや特殊弾丸をかなりの数保有していた。発掘された厄災戦時代のMSに残されていたデータを利用して特殊弾頭が制作された例もある。
形式
ガンダムフラウロス搭載型
ガンダムフラウロスの背面に二門搭載されている、フラウロスの目玉兵装。
ガンダムフレームの機動力、近接戦闘能力を高水準に維持しつつ砲撃が可能となる。
四足の砲撃形態への変形機構が搭載されているが、人型のままでも砲撃していたので、どの程度の必要性があるのかは不明。
タービンズ、鉄華団には特殊弾頭の用意が難しかったため、本来のダインスレイヴの性能を発揮した場面がない機体。
グレイズ搭載型
上下に張り出したパーツを持つ、弓かクロスボウの様な形をしている。
腕部の左右どちらかを丸ごと取り外して発射機と付け換え、頭部カメラも超長距離狙撃専用のものに換装、更にグレイズのシングルリアクターではレールガンの電力を賄えないため、腰部に補助動力を搭載する必要がある。
このため発射台に専念する状態となってしまい、MSとしてはまともに動けず、方向転換もままならない模様。
アニメでは描写しきれていないが、駐退機構を搭載している。発射と同時に砲身が丸ごと後方へスライドし発射の反動を相殺、かつ弓状の部分から帯電・帯熱した冷却材が噴出しマズルブレーキに近い仕組みで命中精度の補正を行っていた。
また後方の撃鉄のようなパーツにより、砲弾尾のロケットモーターが点火し高速で敵に飛翔する。つまりロケット推進と電磁加速の複合兵器であり、近代的な榴弾砲や対戦車火器に見られるロケット補助弾と似た構成になっている。
作中では専ら、多数の機体で戦列を組んで運用されており、ずらっと一列に並ぶ様はガンダムXのGビットを彷彿とさせる。
ガンダムアスタロト搭載型
「バスタード・チョッパー」と呼ばれる火薬式のパイルバンカー。弾頭はダインスレイヴを模したもの。
さすがに本家本元ほどの威力はないようだが、それでもナノラミネートアーマーは貫通できる。
ガンダムキマリスヴィダール搭載型
シールドとランスを接続して使用する合体武器。劇中には登場せず、設定のみ。
左右合わせて八発まで携行し自力装填可能という、他の形式とは一線を画す完成度を誇る武器。
ゲーム作品では使用可能な場合があり、Gジェネレーションクロスレイズだと消費ENは高めなものの、それに見合う高威力長射程を誇る。
ガンダムブレイカー4ではシールドの接続など発射アクションも再現され、発射時には独特な金属音がする。パーツ組み換えが可能なシステム上、どの機体でもダインスレイヴを使用可能。
オルトリンデ搭載型
キマリスヴィダールのように手持ちの発射機構を持っていた。
戦後の使用禁止条約の締結にともなって非搭載となり、発射機構の一部をヴァルキュリアダブルブレードに流用している。
ガンダムバルバタウロス搭載型
こちらはガンダムブレイカーバトローグに登場する機体で、「ラウズダインスレイヴ」という名の本機の必殺技として使用される。
メイン武装のツインブレードを連結させた「電磁投射大弓」を用いて高硬度レアアロイで精錬された専用の「矢」を超高速で放つ。
ガンダムガミジン搭載型
主武装であるリボルバーガンアックスのヘッド部分に内蔵、ゼロ距離仕様ダインスレイヴとして運用される。
欠点
劇中その威力と射程で猛威を奮ったが、完全兵器などではなく相応の欠点も多い。
- 巨大
弾頭のサイズが非常に大きく、作中登場したものはすべて一発ずつの先込め。
格納庫でクレーンを使うか、装填用にMSを用意しなければならず、装填に手間取るので次弾の攻撃までにどうしてもタイムラグができてしまう。
小型化は戦時中から模索されていたが、完成する前に厄祭戦が終わったことで結局は廃案となった。
- 威力が過大
単一の敵機を狙って撃ち抜くのが主な使い道にもかかわらず、破壊力があまりにも高すぎるために周囲にも被害を及ぼし、無計画に使用すると余計な損害が大きくなってしまう。地上なら着弾時の衝撃波に敵を巻き込む事はできるだろうが、それでは肝心の目的である装甲が破れないのでほぼ意味がない。
- 精度不足
上記の扱いにくさや過大な威力とも相性が悪い欠点。特にグレイズ用はMSとしての戦闘能力や機動力がほとんどゼロになるため、安全のためかなりの距離から発射する必要があり、わずかなズレも大きな誤差になる。
とはいえ、通常の砲に比べて特に精度が悪いわけではなく、作中では発射毎にアリアンロッドの敵対者(だけ)に対して確実に甚大な被害を及ぼしているため、遠距離から撃っている割には高い精度が出ている。
- 誘導しない
真っ直ぐ飛ぶだけであり、誘導はしない。いくら速度があるとはいえ、超長距離から撃てば着弾まで若干のラグがある…はずなのだが、描写が無い。弾道と発射タイミングさえわかれば、MSや小型艦のように運動性が高い目標には回避されやすい。
劇中で見せた高い命中率に関しては、グレメカG2017springで小川プロデューサーが「ダインスレイヴが長い間禁止されていた結果、劇中のパイロットたちは時間の流れにより、長距離武器はナノラミネートアーマーに有効な打撃を与えないなどの見解から、今や長距離武器を避ける傾向がほとんどないという認識の変化があった。なかなかこの認識を変えるのは難しい」と解説している。
その後のグレメカG2017summerでは、「一流パイロットならダインスレイヴを難なく避けることができるから、決定打ではない。マクギリスは回避している」として、最終話の三日月もわかっていれば避けられたとしている。同時に、「三日月は局地戦では非常に強いが、そのため視野が狭く戦術的な観点が足りない」という点を指摘した。
- 条約違反
この兵器を使用する事自体が条約違反であるため、表立って使うと世間的な印象は非常に悪くなり政治的には不利な要素ともなる。
劇中の描写からして、所持そのものが違反となるわけではないようだが、政治的立ち位置によっては単に持つだけでもいろいろと不利益を被りかねない。
実際、イオク・クジャンがタービンズ討伐の際に相手の降伏信号を無視し非武装船にもダインスレイヴを使った件はタービンズの上部組織テイワズにとって非常に有利なカードとなり、直後のイオク謹慎だけでなく本編数年後の火星政権再編人事への介入にも影響を及ぼす程となっている。
劇中では、マクギリス派に送り込んだスパイにダインスレイヴを使わせ、それを口実にラスタル派が自分たちの使用を正当化するという策略が描かれている。
現実の国際法だと、こうした「相手が条約を破ったからこちらも破る」という復仇行為には色々な制約が課されていて、すんなり認められる事はないのだが…「禁止条約はギャラルホルンの都合による建前」という面が露呈しているとも言えるか。
- 恐ろしいスペースデブリになる
作中で描写されたわけではないが、視聴者から指摘されている点。
空気抵抗が無い宇宙空間に高速の物体を放り出せば確実に発生するリスクではある。
地球の重力を振り切る速度だった場合、どこに飛んでいくか知れず宇宙船やコロニーに激突する恐れがあるし、衛星軌道に留まって他の衛星や宇宙船の軌道と交差したら重大事故である。低軌道なら微小な空気抵抗でいつか速度を失って地球に落ち、巨大で重い金属の塊が制御されずに落下してくる危険性も孕む。
数メートルの鉄杭は宇宙空間からすれば極小の物体なので直撃する確率自体はかなり低いだろうが、ミリ単位の金属片ですら防護板に大穴を開けるのが宇宙空間における速度差と衝突の危険性であり、それが重くて硬い特殊合金の弾頭となれば大惨事を起こしかねない。
上記の欠点もあり、本来なら設定上は「強力だが慣れれば対処も十分可能な初見殺しに留まる」といった性能なのだが、そこに「滅多なことでは使用できない禁止兵器」という要素が妙に噛み合ってしまった結果、作中での使用回数自体が限られ、マクギリスを除く鉄華団側には適切な対応を練るほどの交戦経験は得られなかった。
その為に最終決戦に至るまで初見殺しが初見殺しのまま機能し続け、カタログスペック以上の戦果を発揮した面があると言える。
また、欠点の一部は「数を用意する」という単純な解決策である程度なら緩和できる点もアリアンロッド側に有利に働いており、フラウロス1機と弾頭1発しか用意できない懐事情を抱えた鉄華団側が運用するには根本的に相性が悪い武装だったとも言える。
なお、これだけの威力を単なる高速での衝突によって生み出しているため核兵器のような汚染の要素が無く、実はクリーンな兵器だったりする。地形も何もかもブッ潰してしまうような威力のものがクリーンか?という点ではリンク先も同じようなものだが…。
作中の運用
発射機の初登場はハシュマル戦。
このときは特殊弾頭ではなく通常弾頭が使用され、直撃した崖を大規模に崩落させる威力を見せつけて視聴者を驚かせた。
弾頭の初登場は、イオクによるタービンズ摘発。
ジャスレイ・ドノミコルスの入れ知恵によりタービンズの貨物へダインスレイヴを紛れ込ませ、これを鉄華団の火星での発射機運用と一緒に突っついてやることで、違法兵器運用の疑いで調査することとなった。
イオクは制止する者がいない事を理由に大々的に運用したのだが、鉄華団の介入によってタービンズの多くが生き残ってしまう。この件を理由にラスタルはテイワズに数々の便宜を図る羽目になった。
次の運用は、地球圏におけるマクギリス派とラスタル派の内部抗争。
マクギリス派に紛れ込んだラスタルの間者がダインスレイヴを運用、相手方が利用したのでその報復にと言う理由で以降ラスタルが大々的に運用し、戦闘の趨勢を決した。
鉄華団側も、タービンズが復元した大型ダインスレイヴ弾頭一発を運用したが、こちらは惜しいところで外れてしまう。
作中最後の登場は、最終決戦に対する支援射撃。仲間を逃がすための殿として大立ち回りを繰り広げるルプスレクスとフルシティに対して軌道上から発射。
8発を発射し内2発直撃、致命打を負わせたものの完全に沈黙させることはできなかった。その後効果確認中に乱戦となってしまったため2射目は行われなかった。
立体物
グレイズが使用したモデルは、プレミアムバンダイにて『HGIBO ギャラルホルン アリアンロッド艦隊コンプリートセット』に同梱される。
セットの内容はグレイズ(イオク機)、レギンレイズ・ジュリア(最終決戦仕様)、グレイズ(ダインスレイヴ装備型)×2。
フラウロスの使用したモデルは、流星号は一般販売となっているが、厄祭戦当時のフラウロスとスーパーギャラクシーキャノンに使用された大型ダインスレイヴ弾頭はプレミアムバンダイとなっており、フラウロスは「ガンダムフラウロス(厄祭戦時)」として単体で販売、大型ダインスレイヴ弾頭は「鉄華団コンプリートセット」に同梱されている。
ガンダムフラウロス(流星号)
ガンダムキマリスヴィダール
ガンダムアスタロトリナシメントは一般販売されている。
特にキマリスヴィダールはシールドからランスへの連結・装填ギミックが劇中未登場とは思えぬクオリティで再現されている。
関連項目
機動戦士ガンダムF91、機動戦士クロスボーンガンダム:デナン・ゾンやクロスボーンガンダムX2等の一部機体がショットランサーという類似した兵装を持つ。