概要
主に日本のプロ野球において、MLBへの国外移籍などで用いられる移籍制度。
1998年にサンディエゴ・パドレスが当時ロッテに所属していた伊良部秀輝の獲得を狙うも、ニューヨーク・ヤンキースへの移籍を望んでいた伊良部側がゴネ倒したために獲得に至らず(結局伊良部はパドレスとの三角トレードという方法を経てヤンキースに入団)、それを教訓に生み出された制度である。
一定のキャリア経て所得出来るFAとは違い、それに関係なく移籍を望む選手に適応、金銭トレードに競売をかける形で行われ、より高い移籍料を日本側の球団が受諾した時点で成立、選手とアメリカ側の球団の入団交渉を経て移籍へ至る。
かつてはアメリカ側が支払う移籍料と選手が雇う代理人との年俸交渉が高騰し、文字通り、天井知らずとなったが、最近では海を渡る選手に条件に見合う活躍が見られないこともあって、日本の球団に支払う移籍料は2000万ドルを上限として、資金力のない球団でも参加できるよう改定された。
また、中島裕之内野手(現・オリックスバファローズ)は、2011年当時、所属していた西武ライオンズの許可を得てポスティングによりメジャー移籍を目指し、ニューヨーク・ヤンキースからの入札により入団交渉が行ったが条件が折り合わず決裂、残留した中島選手は翌2012年、FAの権利を得てようやくオークランド・アスレチックスに移籍した。
問題点
有原式FA
NPBでは、ポスティングを利用してメジャー挑戦をした後、日本球界に復帰する際に選手側が古巣以外の任意のチームと入団交渉することが認められている。このため、このポスティングシステムを利用すれば、本来であれば国内FA権すら取得していない稼働年数であっても海外移籍を挟むことによりNPB他球団へと移籍が出来てしまうという制度上の抜け道がある。
特に、有原航平(現福岡ソフトバンクホークス)が行った事例が有名であることから“有原式FA”と呼ばれている。
2020年オフに有原がポスティングを利用して日本ハムファイターズからテキサス・レンジャーズに移籍するも通用せず、2年後の2022年オフに自由契約となり日本球界に戻ることになった。その際日ハムは有原にオファーを出したが、より高額な年俸を提示したソフトバンクへと移籍したという経緯である。
こうした経緯があったことから、当然ながら日ハムファンから顰蹙(と怒り)を買うことになった。
加えて、ソフトバンクは球団方針としてポスティングシステムの行使を認めていない。それにもかかわらずポスティングを利用して海外から戻ってきた選手は積極的に獲得しようとする動きを見せる傾向にあり、これもファンから「自分たちの都合がいいようにポスティングを利用している」と反発を買う原因となってしまったと言える。
2024年オフには上沢直之が有原式FAを再現しようとする動きを見せており、ポスティングからの移籍期間が1年と有原の2年よりも短い期間で有原式FAを再現しようとしていることから「上沢式FA」に上書きされる可能性が出ている。
申請の条件の曖昧さ
日本球界では、ポスティング申請をできるようになる条件が特に設定されておらず、そのため発展途上の選手や球団に対する十分な貢献ができていないにもかかわらずポスティング申請によるメジャー挑戦を表明してファンから疑念の声が上がることも少なくない(上記の有原の一件以降は特にそれが絵顕著になっている)。
特に、2024年に佐々木朗希がメジャー挑戦を表明した際には(所謂25歳ルールの適用により所属球団に満足な譲渡金を残せなかったこともあり)ファンや球界OBから大きな反発の声が上がった。
対策など
2024年現在、これら諸問題への対策は一切なされていない。
海外では
KBOにも同様のシステムはあるが、こちらは国外のリーグから韓国球界に復帰する際には必ず古巣の球団に戻らなければならない決まりとなっているため、所謂“有原式FA”は使えない。さらに、申請できる条件も一軍で7シーズン以上プレーした25歳以上の選手と厳格に規定されている。
このため、日本球界のような大きなトラブルは起きていない模様。
関連項目
大谷翔平 ダルビッシュ有:ポスティングでメジャーに渡り成功を収めた筆頭選手。
松坂大輔 岩村明憲 井川慶:ポスティングでメジャーに渡り数年後に元所属球団ではなく他球団に移籍した選手達。こちらは元所属球団から獲得オファーが出ていなかった。
有原航平:有原式FAの生みの親
札幌ドーム:有原式FAを生みだした遠因