概要
ストルガツキー兄弟によるSF小説作品。
異星人らしき存在が「来訪」した影響で危険地帯と化した地域「ゾーン」を舞台に、
彼らの遺留物を収集・売買する「ストーカー」と呼ばれる者たちの営み、
そして「あらゆる願いを叶える」と噂される物体「願望機」の謎を描いた物語である。
物語の主人公はベテランストーカー・レドリック・シュハルト(通称:レッド)であり、
彼の視点からゾーンやその周囲に住む人々の生活が描かれる。
第三章のみストーカーを監視する立場にあるリチャード・H・ヌーナンの視点となり、
異星人の目的やゾーンの与える影響についての考察が語られる。
なお、原題は「路傍のピクニック」だが、
日本では後述の映画版のタイトル「ストーカー」として早川書房から出版されている。
内容
地球に来訪した後、地球人と接触することなく去っていった異星の超文明。それらが地球に残したのは、何が起こるかだれにも予測できない謎の地帯「ゾーン」だった。
ゾーン内部は、重力場の異常があちこちに発生する危険地帯だった。しかもそれらは目視どころか感知も出来ず、接触すれば致死的な、予測できない状況に陥るものばかりであった。
更に、内部には地球上の科学では解明できない、未知の理論と概念で成立した遺物が無数に残されていた。
ゾーンの謎を探るべく、ゾーンが存在する国内では、国際地球外文化研究所が設立。ゾーンの管理と研究が始められた。
だが警戒厳重なゾーンに不法侵入し、異星文明が残していった奇妙な遺物を命がけで持ちだす者たち、「ストーカー」が現われた。
登場人物
- レドリック
本編の主な語り手。通称「レッド」。幾度か逮捕と釈放を繰り返している熟練のストーカー。恋人グータとの間に娘・モンキーをもうけ、生ける死者と化した父を含む家族4人で暮らしているが、そのために苦悩する。ゾーンの存在する街の出身者。
- キリール
研究所の職員。レッドの数少ない友人。『空罐』に関する新発見に迫りつつあったが、サンプル不足のため研究に行き詰まっていた。レッドの提案を受け『空罐』回収のためゾーンに赴く。
- バーブリッジ
熟練のストーカー。自分勝手な性格で、過去幾人かのストーカーを見殺しにしたといわれる。ゾーンで両足を失った自分を救ったレッドを信頼する一方、彼からは苦々しく思われている。かつて『黄金の玉』に接触したと自称する。
- ヌーナン
第3章における語り手。研究所の職員でありストーカー達の管理を担当する一方、レッドの友人として彼の家族を見守っている。ゾーンに関わる中で、その存在を空恐ろしく感じている。
- モンキー
レッドとグータの間に生まれた娘。ストーカーの子供には奇形が多いとされる通り、徐々にサルのような状態へ変貌を遂げつつある。
- アーサー
バーブリッジの息子。父親に似ず優秀で生真面目な美男子であり、その理想故にレッドと共に『黄金の玉』を求めてゾーンへ赴く。
映像化
1977年、チェコスロバキアのテレビ局が『NávštěvazVesmíru』(宇宙からの訪問)のタイトルでミニシリーズを作った。しかし当時の政権を恐れたスタッフはテープを破棄した。現時点ではテープの所在は不明である。
1979年にソ連でアンドレイ・タルコフスキーによって「ストーカー」として映画化され、
後に映画版の脚本をもとにした小説『願望機』が発表された。恐らく映像化作品としては、この映画が最も有名と思われる。
2000年には映画会社コロンビア ピクチャーズは、「After the Visitation」のタイトルで映画を作る意向を発表した。監督、脚本はグレン・モーガンとジェームズ・ウォンだと報じられた。
2006年には、監督のデビッド・ジェイコブソンが彼らの代わりにこのプロジェクトに選ばれた。同時に、ジョン・トラボルタが役の1つを演じるという情報が発表された。
しかしその後、このプロジェクトの記録がIMDB.comから削除され、正式に中止となった。
2015年にアメリカでテレビドラマ化されると報じられたが、パイロット版の製作後にテレビシリーズ化は見送られている。
近年ロシアでテレビドラマ化される予定。
余談
ゲーム「S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL」は、
本作に類似した世界観を有し、チェルノブイリ一帯を舞台としているが、
小説や映画を原作にしているとは明言されていない。
なお、本作における「ストーカー」は「密猟者」を意味している為、変質者とは関係ない。
本作、特に映画版の世界観はチェルノブイリ原子力発電所事故と、
事故後のチェルノブイリの状態を予言していたと評価する声もある。
ゾーン内の遺留物(アーティファクト)
ソーン内部では、物理的法則に当てはまらない超常現象が発生し、ストーカーたちはその法則を理解して、細心の注意を払い侵入。ゾーン内に残る遺留物(ブツ)を回収しては、高額で様々な人間に売買する。
アーティファクトは様々な名称のものが劇中には出てくるものの、それが具体的にどのような形状なのか、どういうものなのか、どういった作用があるのかは、ほとんど描写されていない。
登場する主なアーティファクトの名称は、以下の通り。
「空罐」:作中最初の章で、レドリックが回収したもの。抱えるほど大きなものから、手提げかばんに入る小さなサイズのものなど、数種が存在する。
:劇中での描写(49P)
(前略)愛おしい、汚れないさらの<空罐>が目の前にある。その胴の肌に陽の光が戯れており、二枚の銅板の間で青い色をしたものが、鈍い光沢を放ってゆっくりとうねっていた。こうして見ると、こいつは<空罐>なんかじゃなくて、青いシロップが入ったガラス瓶の容器かなんかのようだ。(後略)
「黒い飛沫」:様々な大きさの、黒いガラス玉のようなもの。別名「K-23」。装飾品に使われている。光線を当てると、少し時間が経ってから光を反射する。玉の大きさ、重量、その他いくつかの理由で、反射の遅れは違っている。反射光線の周波数は常に、入射光線のそれより小さい。この内部は、巨大な空間が圧縮されているという説がある。
「ムズムズ」:指先で摘まめるほどの大きさらしい。扱いが悪いと鼻血を出す。うまく用いれば、犬が遠吠えをあげ、周囲の人間たちが転げまわるほど大変な事態を起こせる。
「リング」:指で引っかけ回すと、一分以上回転し続ける。
「魔女のジェリー」:ゾーン外の研究所で研究中に、容器からあふれ出し大変な事になったらしい。また、これの沼に足がハマったストーカー(バーブリッジ)は、足が使い物にならなくなった。
「死のランプ」:「地球の有機体に致命的な作用を及ぼす光線放射システム」らしい。
「ブレスレット」:生命過程に刺激を与える。医学的に有益なため、これをはめている者もいる。
「適量」:黒く丸い棒状の永久電池。機械の動力源になる。条件によっては、分裂して増殖する。
「黄金の玉」:ストーカー達の中でも半ば伝説となっている、『願望器』。あらゆる願いをかなえる力を有するという。
「電池」
「スポンジ」
「炭酸粘土」
「エビガニの目」
「大きな音を出すナプキン」
「ピン」
「白いミズスマシ」
「鳥のガラガラ」
「白い輪」
関連タグ
S.T.A.L.K.E.R. DARKER_THAN_BLACK
スパイラルゾーン - 本作の設定をモチーフにしたメディアミックス企画。
裏世界ピクニック - 本作をモチーフにしたSFホラー小説。
真・女神転生Ⅱ - 悪魔の襲来と洪水によって壊滅した東京の遺物を回収して暮らすメッセンジャー「ストーカー」として登場。