※原作86~89話、163話及び月島の卒業後の進路に関する一部ネタバレを含みます。
未読勢はご注意ください。
概要
梟谷高校バレー部主将の木兎光太郎が森然高校第3体育館で烏野高校バレー部1年の月島蛍に送った、『ハイキュー!!』屈指の名言の一つ。
月島の過去とこのセリフ前の山口との会話についてはこちらを参照。
89話 理由
山口からの言葉に衝撃を受けるものの、まだ心の中では納得しきれておらず、自分の中で折り合いをつけるために月島は、第3体育館に一人向かう。
そこには音駒3年の黒尾と梟谷2年の赤葦、そして3年の木兎が自主練していた。
月島は3人にこう質問した。
「僕は純粋に疑問なんですが、どうしてそんなに必死にやるんですか?」
月島にとってバレーとはたかが部活で、せいぜい履歴書に「部活を頑張りました」と書けるぐらいのことでしかなかった。それでも夜遅くまで残って自主練する他の仲間たちや上記の三者たちを理解しきることができず、この質問をしたのだ。
それに対して木兎は、逆にこう質問した。
「バレーボール楽しい?」
その質問に「特には」と答える月島に対して、木兎は「ヘタクソだからじゃない?」と(悪気無く)言った。木兎は「俺は3年で全国にも行っている。お前より断然うまい」と言葉をつづけるが、意外なことに「バレーが楽しいと思うようになったのは最近」とも言った。
というのも木兎、元々得意だったクロス打ち(レフト側から相手コートの右側に打つスパイク)しか打てず、大会で対戦相手にクロスを徹底マークされ、その試合は散々だった模様。
そこで木兎はストレート打ち(まっすく打つスパイク)を練習しまくり、試合で使えるレベルにまで仕上げた。そして次の大会、同じ対戦相手・同じブロック相手に対してストレート打ちを炸裂し、まったく触らせることなく得点することに成功。
その時は「俺の時代キターーーーーー」と思うほどうれしかったらしく、思い返した時には大笑いしていた。
「その瞬間があるかないかだ」
「将来がどーだとか、次の試合で勝てるかどーだとか、ひとまずどーでもいい!」
「目の前のヤツぶっ潰すこととッ!」
「自分の力が120%発揮されたときの快感がすべてッ!!」
その自分が考えもしなかったことと彼の迫力に圧倒され、何も言うことができない月島。
一応、木兎も月島の「たかが部活」という考えも間違ってはいないと言い、月島の意見を否定はしなかった。しかし、木兎は最後にこの言葉を贈った。
「もしもその瞬間が来たら、」
「それが、お前がバレーにハマる瞬間だ!!」
この一連の出来事は月島のバレーへの向き合い方が大きく変わった出来事となっており、その後の彼は黒尾のアドバイスもありリードブロッカーとしての才能を開花。翌日の梟谷との試合では木兎のセットアップ時にその迫力から咄嗟にフェイントを選択させるブロックを見せるなど、今後の活躍が期待できるストーリーとなっていた。
163話 月の輪
※アニメでの描写をメインに記入します
時は流れて、春の高校バレー宮城県代表戦決勝。
及川徹有する青葉城西を打ち破り、決勝に立ちはだかるは全国三大エースの一角・牛島若利を有する最強の敵・白鳥沢。
牛島の超パワーサウスポーやチーム全体のパワーに押され、第1セットは落とすものの、その1セット掛けて牛島の左打ちに適応した西谷と、チーム全体で完成させるトータルディフェンスによって、牛島のスパイクをブロックはできずともレシーブで上げることができるようになった。
さらに月島は相手セッター白布へストレスを与え続けるため、リードブロックを徹底。得点自体は拮抗しながら試合は進むものの、白鳥沢は気持ちよく点が決まる場面というのが減ってきて、白布にストレスが溜まる。
そして、第2セット終盤。30-29で烏野がマッチポイントを迎えた場面。
牛島に決めさせるためか、ほんの少しネットに近く、低いトスを上げた白布。
「ほんの僅か」
「いらだちと焦りを含んだ綻びを」
「まってたよ」
月島は東峰と二人で牛島のブロックに入る。あえてウシワカが撃ち抜けるくらいの、ボール1.5球分の隙間を作って。牛島はその隙間を撃ち抜くように、スパイクを放つ。
瞬間、月島はそのコースに腕を移動。牛島のスパイクを”ドシャっと”ブロックしたのだ。
その様子をベンチで見ていた山口は、試合前日の月島との会話を思い出していた。
月島「僕がウシワカに勝てるわけないじゃん」
月島「ただ……」
山口「……」
月島「何本かは止めてやろうと思ってるだけ」
会場は、騒然として湧き上がっていた。
それもそのはず。月島は烏野のスタメンに入っていて読者にはよく覚えてもらってはいるだろうが、作中では無名の選手と言っても差し支えない選手である。その証拠に観客から「誰だあいつ!?」と驚かれるだけでなく、白鳥沢の他選手はおろか、止められた牛島本人が目を見開いて驚いている様子が描かれていた。その無名選手にあの全国三大エースの一角と謳われた牛島が今、ブロックされたのである。
湧き上がる会場や仲間たち、動揺する相手選手たちをよそに、彼はその瞬間に立ち合い、あの言葉を思い返していた。
「たかがブロック1本」
「たかが25点中の1点」
「たかが……部活」
「もしもその瞬間が来たら、」
「それが、お前がバレーにハマる瞬間だ!!」
余談
- 『163話 月の輪』で紹介したこのワンプレーは『ハイキュー!!』という作品の中でも特に人気の高いシーンであったようであり、2019年に開催された『ハイキュー!!ベストエピソード』の投票では、同試合終盤の5人全員シンクロ攻撃やその前の試合の青城戦終盤で及川が見せた超ロングセットアップを差し置いて、堂々の1位を獲得した。該当ツイート
- さらに言えば前述のとおり彼がバレーボールにハマる瞬間、つまり彼の人生にバレーボールが深く刻まれた瞬間でもあり、高校卒業後もバレーを続け、大学卒業後には宮城の仙台市博物館に勤務しながらVリーグ Division2 仙台フロッグスに所属することが内定している。
- ちなみに月島が牛島をブロックすることができた理由を影山は「相手セッターの上げたトスがほんの少しネットに近く、低かったため、牛島の助走距離・ジャンプを確保できなかったから」と推測している。
関連動画
TVアニメ『ハイキュー!!』ベストエピソード第1位