かつての日本に存在した、結婚した女性が歯を黒く染める風習のこと。
また、そのしきたりに従って黒く染めた歯のこと。元は日本の貴族の用語。
歴史は古く、古墳時代には既に葬されていた人骨や埴輪にはお歯黒の跡があったり、奈良時代には天平勝宝5年(753年)に鑑真が持参した製法が東大寺の正倉院に現存している。
平安末期には貴族、平氏などの武士、大規模寺院における稚児など男性も行っており、特に皇族や上級貴族は袴着を済ませた少年少女も化粧やお歯黒、引眉を行っていた。(皇室では幕末まで続いた。)
鉄片をお茶や酢などに漬けて作った黒い液体と、ヌルデの虫こぶである五倍子を用いて行われた。
その為か「おはぐろ」の読みに『鉄漿』の字を当てたり、御所では『五倍子水』(ふしみず)、民間では『鉄漿付け』(かねつけ)、『つけがね』とも呼ばれた。
(民間では他に『歯黒め』(はぐろめ)などとも。)
もともとはファッションの一環として行われていたものであり、成人した女性が全て行っていた時期や男性も行っていた時期もあるなど、時代によって行う人が異なっている。
一方で歯科衛生が十分に進歩していなかった時代には、歯並びや変色を隠すだけでなく、口腔内の悪臭・虫歯・歯周病に予防効果があったが、幕末に日本を訪れた多くの欧米人からは『お歯黒は女性を醜悪化する世界に稀にみる悪慣習』と評されている。
その後明治時代に禁止令が出され、大正時代には一般的に廃れていくが、歌舞伎などの演劇用・花柳界・葵祭など祭り用で一時的に使用している。
時代劇では、歴史考証がしっかりしているものであっても、現代人からするとあまりにもグロテスクであるためかまず採用されない。
演劇やコント(主に歯が欠けたように見せるとき)では「トゥースワックス」を使用することも有るが、本式の鉄漿も歴史研究家や歯科技師から成る民間団体「香登お歯黒研究会」が販売している。
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日東酵素株式会社facebook…「香登お歯黒研究会」が販売するお歯黒「ぬれつばめ」の製造元。