概要
アメリカ海軍が20世紀末に構想し、建造を予定していた戦闘艦。
艦橋や大砲といった従来の戦闘艦には必然とされる装備をしておらず、扁平した外見をもつただひたすらミサイルを発射するだけの、まさしくミサイル母艦ともいえる艦である。大火力・大型の船体からか、「21世紀の戦艦」、というキャッチコピーもあった。空母機動艦隊の整備費用・維持費用が非常に高騰したことからもちあがった部分もある。
ミサイルの管制などは随伴する友軍艦によって行われ、アーセナルシップはミサイルの発射のみを行う。複雑な大型レーダーや格納庫といった部分を持たず(着艦用ヘリパッドはあるが)、また運用する人数も50人程度とかなり少なく、これにより建造費や人員の大幅な削減などが期待されていた。
5隻の建造も計画されたが、紆余曲折の後、予算が得られなかったということでこの計画は潰えてしまった。
運用と問題点
実際の運用に際しては、搭載するトマホークミサイルが大変高価であることや、洋上補給が困難であること、トマホーク自体が内陸の攻撃に向かない事、空母艦隊とまでは行かないが、護衛の随伴艦が複数必要なことから実際の対費用効果はそれほど高くなかったという推察がなされている。
また、このような単機能艦を成り立たせるためには多数のVLS装備のミサイル護衛艦艇などが必要になるが、艦隊機能を成立させるほどの護衛艦艇を揃えた場合、アーセナルシップ抜きでも十分艦隊が成り立ってしまい、ミサイル発射数もさほど変わりがないなど構想自体が破綻してしまう。冷戦期の被害妄想ともいえるだろう。
よみがえったアーセナルシップ?
アメリカ海軍のズムウォルト級は、多数のVLSに各種ミサイルを搭載し、強力な155㎜砲とトマホークで対地攻撃をするという、戦艦のようなコンセプトで開発された。
しかしコストの高騰によって、ズムウォルトの武装や装備は弱体化&削減され、建造数は3隻にまで減少した。155㎜砲も砲弾の値段がトマホーク並みになってしまい、主砲が撤去される事態となったが、そのスペースに共通極超音速滑空体(C-HGB)を搭載することになった。
結果的に主砲と呼べる物が存在しなくなり、メイン武装がほぼミサイルのみとなり、ある意味でアーセナルシップに近い艦となった(155㎜砲を除くと、砲と呼べる物は30㎜機関砲しかないため)。
また海上自衛隊のイージスシステム搭載艦は、計画当初は大型の船体に多数のVLSを搭載する艦であり、こちらもある意味でアーセナルシップに近い艦だった。
後に計画が変更され船体は小さくなったが、それでも西側の戦闘艦では最大規模である。ただしこちらはミサイルだけでなく、その他の装備も多数搭載予定である。