概要
正式名称は「B65型超甲型巡洋艦」。
日本海軍では重巡洋艦のことを甲型巡洋艦(軽巡洋艦は乙型巡洋艦)と呼んでおり、文字通り現在の重巡を超える重巡として計画された艦である。
背景
漸減要撃作戦
日本海軍の艦隊決戦計画は、仮想敵国がアメリカ海軍になって以降潜水艦・航空機・水雷戦と段階を踏んでから、戦艦同士の砲撃戦に挑むことを考えていた。
しかし1930年代後半、水雷戦の火力支援部隊主力である金剛型戦艦の老朽化が進んでいた。また艦隊指揮に関しても、金剛型の老朽化、さらに高雄型重巡洋艦では代替として能力不足であることが問題になっていた。
そのため艦隊旗艦設備、巡洋艦を圧倒できる砲力を備えた「超甲型巡洋艦」が第五次海軍軍備充実計画(⑤計画)で建造されることが決定した。
性能
重巡洋艦を圧倒し、金剛型戦艦を補完し得る艦として31cm50口径砲が3連装3基、計9門搭載されている。また98式65口径10cm高角砲を連装8基、計16門搭載しており、機動部隊の直衛艦としても運用できる出来になっている。
建造中止
1942年6月のミッドウェー海戦の敗北によって、航空母艦の拡充が図られることになり、改⑤計画が決定し、2隻の建造が予定された超甲巡は建造中止となってしまった。
アラスカ級との関係
アメリカ海軍のアラスカ級大型巡洋艦とは、スペックのうえで似通ったところが多数あり、どちらがどちらをパクったなどとも言われることもある。
但し用兵上の両海軍の考え方は全く別で、超甲巡は先に述べたように夜戦部隊旗艦・火力支援部隊用に特化された艦である。
一方のアラスカ級はドイツ海軍のドイッチュラント級装甲艦、さらに日本海軍がドイッチュラント級に似たスペックの「秩父型大型巡洋艦」を建造し、通商破壊戦を挑んでくるとの情報が入ったため(もちろんデマ)、それらを圧倒できる艦を作るという考えに基づいて建造されている。
余談であるが、実際に建造されたアラスカ級であるが、運用側からは
・旋回能力不足(細長く作ったため、舵の危機が悪くなった。)
・機関出力不足で速力がカタログデータ通りに出ない。
・艦橋構造物の配置不具合で、CIC設置に一苦労。
などボロクソな評価により、戦後予備役に編入されてからは再役することなく解体された。このことから超甲巡が仮に予定通り就役したとしても、アラスカ級と同じく散々な結果になるのではとの評もある。