概要
名の通り『大型の』巡洋艦であり、比較的排水量の大きな巡洋艦をこう呼ぶことがある。しかし艦種としての大型巡洋艦も存在しており、どちらの用法かは文脈による。
「重巡洋艦」と何が違うのか?と言えば、軽巡重巡というのは軍縮条約で定義された艦種の枠であり、大型巡洋艦というのは、建造国が名乗らせた艦種という点である。
条約では備砲が8インチ以下までが重巡、6インチ以下までが軽巡、排水量はどちらも上限1万トンと定義されたため、後に紹介する米英の大型巡洋艦は、軍縮条約に照らせばどちらも(条約違反の)重巡ということになる。
しかしどちらも軍縮条約が無い時代の艦であるため重巡とは定義されず、大型巡洋艦と名乗っている。
艦種としての大型巡洋艦
第二次大戦中のアメリカ海軍の場合、艦種記号はCB(Cruiser, Big/Large)であった。アラスカ級大型巡洋艦がこれに該当する。巡洋艦を大型化し、 戦艦並みの主砲を搭載した、かつての巡洋戦艦によく似た存在である。アラスカ級は戦艦より一段劣る主砲と、対弾防御が不十分な巡洋艦的な防御方式を採用しており、本来の意味での元祖英国的巡洋戦艦、さらに言えばその前の装甲巡洋艦に回帰したかのようなコンセプトを受け継ぐ存在であった。当然、ユトランド沖海戦で否定されたコンセプトであり、この時代の改装された巡洋戦艦とも違う独特の性格をもっていた。つまり砲戦力が高めの、従来の巡洋艦の延長であった。アメリカ海軍は元々重巡を巡洋戦艦的な砲戦主体の運用にも使っていたが、アラスカ級は重巡としては巨大かつ高価過ぎ、建造にも運用にも戦艦並のコストがかかるが、基本的には巡洋艦と同じことしかできないという、中途半端かつコスパが悪すぎる存在となってしまった。
巡洋艦としては間違いなく最強クラスであるため、もし敵が全盛期の枢軸国海軍であったならばまだ活躍の場はあったと考えられるが、登場時期も悪く、竣工した1944年には既に独伊両海軍は大幅に活動を縮小し、日本海軍も劣勢であったため、2隻で建造は打ち切られ、戦後も比較的短期で引退している。
このほか、例えばイギリスのハッシュハッシュ・クルーザーは『大型軽巡洋艦』に分類されていた。喫水の浅い大型の船体(20,000t級)に戦艦以上の主砲を搭載する特殊な艦である。ソ連海軍での重航空巡洋艦や重ロケット巡洋艦などの『重』は、通常の巡洋艦よりもワンランク上の存在であることを示すものであり、大型巡洋艦に相当あるいは類似したものであるとも考えられる。しかしながら、時代背景の違いや、他艦種との区別における問題があり、大型巡洋艦の定義は必ずしも一致しないことに注意が必要である。