概要
防空巡洋艦とは、対空能力に特化した巡洋艦を指す語。おおむね、主砲を全て高射砲(日本海軍の用語では高角砲)としたものを指す。
第一次世界大戦以降、軍用機の発達と共に軍艦の側も対処のため次第に対空火器を装備・増強する傾向にあった。その中でイギリス海軍は第一次大戦型の旧式軽巡洋艦C級の近代化改装に当たって、旧来の主砲を全て高射砲に置き換えたことで注目された(1936年)。これが、防空巡洋艦の始まりとされる。
この後、イギリス海軍は新造の巡洋艦のうち、小型のものを全主砲を高射砲とした。ダイドー級である。アメリカ海軍も同様にアトランタ級を建造した。この2級が防空巡洋艦の代表例とされる。
なお、この背景には艦載高射砲が口径13センチ級に大型化した上に、これらの砲は高射砲だけに砲弾の速度・発砲の速度ともに速かったため、水上艦に対してもかなりの打撃力を発揮するようになったということがある。米英両国の戦艦が対小型水上艦の副砲と対空砲を統合して両用砲と呼び、主砲と両用砲のみを搭載するようになったのと軌を一つにしており、現にダイドー級・アトランタ級とも、戦艦の両用砲と同じものを主砲としている。
代表的な防空巡洋艦
イギリス海軍
アメリカ海軍
世界随一のレベルの防空巡洋艦を持つが、アメリカの真の恐ろしさは普通の水上戦闘艦が高いレベルの防空力を持つ点にある。特に、駆逐艦が標準装備で両用砲を装備しているのはアメリカ海軍のみである。防空艦隊とでも呼ぶべきであろう。
- アトランタ級:アメリカ海軍自身がこれを防空巡洋艦に類別するのは戦後になってからであり、当初は水雷戦隊の旗艦や嚮導艦としての役割が期待されていた。そのためか魚雷を積んでいたりする。
- ウースター級:イギリスのタイガー級同様、大戦後に出現した、15.2センチ両用砲を積んだ大型のもの。
大日本帝国海軍
- 五十鈴:C級同様旧式軽巡洋艦を改造したもの。
重巡洋艦摩耶は主砲を1基とりのぞき、12.7センチ高角砲を6基12門と強化したが、この門数はアメリカ海軍の標準レベルであり、この程度の改造では防空巡洋艦とは呼び難い。
その他、防空巡洋艦の新造や、天龍型の改造も検討された。また、巡洋艦並みの大型防空駆逐艦として秋月型がある。
フランス海軍
いずれも大戦後に建造。
- ド・グラース
- コルベール
消滅と発展
軍用機・ミサイルの発達(特に高速化)に伴い、在来の砲熕兵器では追随できなくなり、対空砲を主兵装とした防空巡洋艦という艦種は終わりを告げた。
代わりにミサイルが対空兵器として台頭したが、対空ミサイルを主兵装とした巡洋艦は一般にミサイル巡洋艦と呼ばれ、防空巡洋艦とは区別される。
なお、ミサイル巡洋艦は更なる発展でイージス・システムを積むものも登場している。