エインセル(Fate)
かがみのしぞくのえいんせる
妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェに置いて度々言及される妖精で鏡の氏族の長。『予言の子』や『真の王』についての予言をもたらし、氏族達共々何者かに滅ぼされてしまったが、氏族長会議の内容からエインセルのみは生死が分からないまま行方不明扱いを受けている模様。
実はエインセルはとある妖精の失われた記憶と深い関わりがあった。
ネタバレ注意
その正体は記憶を失う前のガレスその人。
妖精騎士ランスロットの手に掛かり、同胞の鏡の氏族諸とも殺されたのは身代わりになった従者のミラー。
幸か不幸か唯一生き残ったガレス(エインセル)はショックで名前以外の記憶を失い、その状態で予言の子の従者として主人公一行に加わる。
『鏡の氏族』は「誰かを護り奉仕する」という目的を持つため未来を詠む力に特化した妖精だったのだが、その桁外れな能力ゆえに『一度見定めた運命は、たとえどんな不幸なものであろうと変わらない』という負の作用が備わっていた。
(妖精達の『上辺だけで中身はどうでもいい』という本質から、予言そのものに注目は向けても内容自体に興味は無いので、対策を練って備えようという考えそのものが湧かない。或いは取っていたとしても、些細な気まぐれを要因とする突発的事故等の影響により、思いもよらぬ形で予言が成立してしまった例も考えられる為、回避のしようがなかったのだろう…)
その結果として、妖精國内で巻き起こった幾多の戦争や惨劇を目の前にしても何も出来ず、大切なものが次々失われていく様をただ傍観し続けるだけの人生に嫌気がさしていき、とうとうそれは女王モルガンが即位して間もない女王暦2001年のある時、ブリテンの救世主となる「予言の子」の登場と共に「自分達氏族と妖精國の滅亡」を予知してしまった事で決定的となる。
「自分達が死ぬ恐怖よりも、この苦しみから早く楽になりたい……」という感情が上回り皆が悲観的になる中、ただ一人異議を唱えていたのが氏族長エインセルだった。
たとえ未来が変えられなくても、そこへ至るまでの道筋は変えられるかもしれない。そうすれば大事なものを失う規模や回数は少なくなるかもしれない。そう信じていたエインセルは、皆を率いる長として同族の妖精達と妖精國のため積極的に働きかけ、彼女なりに少しでも両者の未来を良くしようとしていた。
(氏族の中で唯一女王側についた妖精騎士ポーチュンは、モルガンへの感銘の他にも同胞のこんな姿に呆れ果てて見切り去った節もあるのだろう)
そして女王暦2011年。「予言の子」の予言が気に食わなかったオーロラの悪意なき嘘によって妖精騎士ランスロットが派遣され鏡の氏族ほぼ全員が虐殺される中、エインセルを慮った妖精達の提案により彼女だけがミラーを身代わりとして逃がされたのである。
最後の最後まで自分達に尽くしてくれた長を助けたかったのは勿論だろうが、もしかしたら「自分達が行動を起こせば、未来はきっと良い方向に変わる」という言葉を今際に皆が信じて彼女にその行く末を託したのかもしれない。
実際『ロンディニウムの騎士ガレス』となった彼女は、文字通りその身をもってして、残り最後の『巡礼の鐘』となる形で予言の子と異邦の魔術師、そして円卓軍の希望となったのだから・・・・