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概要編集

藤田和日郎の漫画『月光条例』の登場人物。


主人公岩崎月光の同級生。

風になびいているようなショートヘアに、印象的な瞳の女子高生。

「エンゲキブ」と言うあだ名の通り、演劇部に所属している。

明るく活発な性格で、月光とは昔なじみ。

「ラーメンいわさき」のラーメンがお気に入りで、店主・徳三とも仲が良い。

その妻・節子が、月光の生い立ちについて不思議そうに話すのを、傍らで聞いていた。

性格はよく言えば明るく活発、社交的で面倒見が良い。悪く言えば、おバカで八方美人でお節介。

典型的な今時の女子高生と言った感じの少女だが、本編では時々、単なる部活動で培った技能によるものかどうか怪しい立ち回りや、精神力の強さを見せることも。


ある夏の月夜、「ラーメンいわさき」のベランダで読んでいた「鉢かづき姫」のページから、月打(ムーンストラック)された宰相の兄嫁に追われたハチカヅキが飛び出してきたことにより、物語が動き出す。

その後、執行者となることに腰の重かった月光へ、かなり強引な手段で助力を促したり、登場人物の心が救われないまま執行だけが先行してしまいそうになるときには、鮮やかな飛び膝蹴りで月光の執行の寸前で止めに入るなど、ハチカヅキとともに月光の理解者として、おとぎ話と現実世界の人物との橋渡し役を果たしていくことになる。


人物編集

学校では、多くの生徒が稽古場へ見物に押し寄せるほど演技力に評判があり、溌剌とした性格、容姿端麗、スポーツ万能なども相まって、破格の人気を誇る。

接近を試みる男子生徒が後を絶たない中、自身はある事情から、月光への想いを素直に表すことができずにいる。そのため、ことあるごとに彼氏が変わり、それぞれの趣味(釣り、鉄道模型、乗馬、ネットゲーム、サーフィン、BMXなど様々)に熱中したり、深夜徘徊に興じてしまうらしく、かつては月光のライバルである走り屋・高木天道とも付き合っていたという。ただし本人曰く、相手の趣味に興じるだけで、手も握らない、らしい。


もっとも演劇関連のトレーニング(体つくり、ダンス、バレエ、殺陣など)には、日頃からぶれない情熱を注いでいるという、まさに「エンゲキブ」というあだ名にふさわしい多才な人物でもある。新聞部・小竹からのインタビューに応じたある日の放課後だけでも、テニス部、囲碁部、水泳部、その他を難なく掛け持ちする余裕を覗かせているが、これらの活動は、ラーメンいわさきにて月光に会うまでの時間を潰すためでもあるとのこと。


一方、自分が演じる台本関連以外の読書はしないため、「おとぎばなし」の教養は皆無。そのせいで、ある童話の主人公の代役を務めた際、ヒーローショーのアルバイトによって心得たという格闘術や、並外れたアクション力を発揮するも仇となり、てんやわんやの暴走に発展してしまう場面もあった。

しかし、日頃から『午後のゴースト』の登場人物や、『老人と海』の老人(サンチャゴ)役といった渋い役柄まで好んで演じ、孤独な少女を励ましているという一面を覗かせるなど、演劇人としての奥行も持ち合わせている。


しかし、誰もその本名を知らないという。

彼女の過去の姿と思われる写真を、演劇部部長・杉村が所持していることに気付いたトショイイン、ハチカヅキらによって素性を調べられている。父親は劇団の座長、母親は演劇の専門誌の編集者であることが明かされているものの、両親と映った写真が偽物であったなど、謎は深まるばかり。

また、小学校に通っていた頃は、今とは別人とすら思えるほど表情が暗い娘だった模様。

放課後、いつも一人ぼっちで校庭のジャングルジムに佇んでいたが、月光が「おまえ…かえんねーのかよ…?」と声をかけてくれたことをきっかけに、徐々に笑顔を取り戻していった。


それ以来、月光の秘密ネタをたくさん持っていると言っては月光を脅してみたり、月光を無理矢理色々なイベントに巻き込んでみたり、強烈なスキンシップ取っていたり、食べかけの菓子やジュースを無理矢理押し付けてみたり……でも彼氏は別に居るらしい。

なんといっても、根暗だった自分を救ってくれた月光を深く慕っているが、互いにその気持ちを素直に表すことができず、来たるべき孤独に耐えかねて自分を偽ってしまう。そうした振る舞いを自覚したとき、友人の藤木裕美に向かって自虐の闇が発露してしまう場面も。


「月光がいつも怖い顔してるのはみんなの為に何が出来るか懸命に考えてるから」

なんだかんだ言って、月光の事をよく理解してたりする……でも彼氏は別にいる。

執行者とは関係ない一般人ではあるが、月光とハチカヅキと共に物語に関わっていくことになるが…。


ちなみに、キャラクターデザインや性格などは『からくりサーカス』の生方涼子を彷彿とさせるところがあるが、作品構想段階では本名不明という設定ではなく、「雨竜陽子」といった名前を持つ案などもあったことが、原画展の資料により明かされている。





関連タグ編集

月光条例
























以下、ネタバレあり






















常人であると思われていたエンゲキブであったが、誰も本名を知らないいるはずの両親の痕跡が一切ない付き合っていたという男性は皆、実は付き合っていなかった(天道も記憶していない)といった謎が浮上。


その正体は、数あるおときばなしの中で、唯一本当の話である『竹取物語』の主人公・かぐや姫その人であった。

さらに、月光がかつて生活を共にしていた、ハチカヅキの先代パートナー・センセイの養女・高勢露その人でもある。


そして、月の向こう側の異世界の住人であり、その世界の王オオイミの婚約者カグヤ・スズアカ・アナニエであった。


月の王国の中級役人の娘であったカグヤは、オオイミ王に見初められ、彼の婚約者に選ばれる。

しかし、同時期に月の住人の生命線である「青い月の光」が減少。彼女の両親を含めた下級民はわずかな水を与えられて細々と生き延びる羽目になる。

そんな中、カグヤはこっそり両親のもとに水を運び、その際に「自分は通りすがりの子どもに分けてもらったから大丈夫」と嘘をつく。

月の王国では、いかなる理由であろうと嘘は大罪であり、王の婚約者であるカグヤも例外ではなく、千年間の「穢れた地上(=地球)」への島流しの刑を科せられる。

地上に落ちたカグヤは、竹の中に赤ん坊として転生。見つけてくれた現地住民に育てられ、ある程度成長すると再度赤ん坊に転生、という人生を千年繰り返していた。おとぎばなし『かぐや姫』は、その人生の中の一エピソードだったのだ。

普通に生きていても、家族や友人が先に死ぬという「ひとりになる」地獄を味わい続けたカグヤの心はすり減っていき、感情を表に出さなくなっていく。


作中に登場した、幕末・明治の写真が載った書籍には、130年前に撮られた写真に、彼女と思しき少女が映っていた。


そして、後にセンセイと呼ばれる男性に拾われ、高勢 露と名付けられる。

今まで以上に自分を理解してくれる彼を、露は心から慕うようになるが、生まれて三ヶ月で成人女性の肉体にまで成長した彼女とセンセイが一緒に住まうさまを、当時の人々は良く思わなかった。

センセイは露の立場に配慮して、彼女と別居するが、露はその後もセンセイのところへ足しげく通うようになった。

そうしてしばらくしてから、最強月打から解放されるも『青い鳥』での自分の居場所が「もう一人の自分」に取られたチルチルこと散吉(後の月光)がセンセイのもとへ居候するようになり、彼に嫉妬する。が、月光条例するセンセイを追い駆けるうちに、自然と散吉とも交流するようになる。

やがて、病に侵されていたセンセイが、月打された幸福の王子に条例執行したあと、ほうびとして打ち出の小槌を自分の病の治癒ではなく「散吉が新しい人生を歩めますように」という願いに使ったため、センセイは病死し、散吉は未来に転生したため、またも孤独の人生を送ることになる。

なお、センセイのモデルとなった人物の生きていた時代を考えると、80~90年ほど前のことと考えられる。


その後、センセイの願いによって散吉が転生して「岩崎月光」と名付けられた時代に、彼女自身も生まれ変わり、小学生の頃に月光と出会う。その時すでに、彼女は月光が散吉だと気づいたらしい。

月光との付き合いの中で、孤独による昏い性格が、明るく社交的な性格に変化。

そして、月光への想いを日々強くしていった。


しかし、アラビアンナイト編が終わるとともに、千年の刑期が終わりを迎える。

オオイミは守護役兼見張り役としてエンゲキブの元に部下を派遣。

その際、「月の王国の光によって狂った人間が生み出した『おとぎばなし』は本来なら消しておくべきだが、カグヤが素直に月に戻るのなら、『おとぎばなし』の存在は許す」と伝言されており、おとぎばなしを守る意味もあって、エンゲキブは月光や仲間たちから距離を置こうとする。


が、オオイミに、おとぎばなしを消さないという考えはさらさらなかった。

加えて、エンゲキブが地球に島流しされた本当の理由は、枯渇した青い光の代わりとなる太陽のエネルギーをその肉体に蓄積させ、しかる後にそのエネルギーを月の民に与える「電池」代わりにさせるためだったことが発覚。

その事実を知った月光たちは、エンゲキブを守るために行動を開始することとなる。

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