概要
もともと鬼の持ち物とされており、平家物語では鬼が持っている描写がある。
また七福神の一人である大黒天の持つ小さな槌も打ち出の小槌と呼ばれる。
その存在は御伽噺『一寸法師』で広く知られている。この話の中では姫を襲った鬼を退治した際に一寸法師の手に渡り、その使用法を知っていた姫の手によって使われ、法師を武士にし、数多の財を与えたといわれる。
またそれ以外にも人を幸せにしたり、宝物や力を与えるといった効用を持つとされる。ただしその効果は話によってまちまちで、末永く願いをかなえるものから鐘の音を聴くと失せてしまうものまで様々であり、また「使用法がわからなければ使えない」「心が素直でないものが使うと誤作動を起こす」などの描写もあることから、必ずしも万能の力を持つわけではないようである。『酉陽雑俎』収録の新羅の話では、いろいろあった兄が超自然の子供から槌をとり、裕福に暮らしたものの、彼の死後、親族が、
といって振ったところ、壊れたという(水木しげる『世界の妖怪百物語』では打ち出の小鎚部分だけハッピーエンドぽいが、原典は兄弟のどろどろがある)。
類似の品に『稲生物怪録』で稲生平太郎が妖怪の王から与えられた「魔王の小槌」がある。
大昔から、「石器時代の石斧」を雷神のものとして崇拝する習俗はローマ帝国を筆頭に存在(ハイチのブードゥーとかでも先住民族の石斧を「雷石」として拝んでたり、それへ影響を一応与えたヨルバ人のオリシャである雷神シャンゴはど突き棒と手斧持ってたり)、し、大黒天のソレもこのバリエーションと考えられるが、これはもともと「ガネーシャの鉞」が伝播の過程で大黒天の持ち物になったらしい。「何でも願ったものを出す」これは、鼠退治用ウォーハンマーとしても語られる。南方熊楠によれば同じような過程でトールのミョルニル(ソースの『鼠に関する民俗と信念』では「ムジョルニル」表記)もできたと考えられる。またガネーシャと大黒天に関連する鼠を冠し、「打ち出の小鎚甲子」と書かれ小鎚が描かれたお守りが山崎宝寺で配られていたという。
ちなみに、なぜ槌という形を持つのかという由来には諸説あり、
- 「槌」は「土」、すなわち米をはじめとした様々なものを生み出す「大地」を意味する。
- 脱穀や餅をつくる杵が、その用途から神聖視された(南方熊楠によれば、「乳棒的なものと杵と斧と槌はだいたいあってる」とされた上に『酉陽雑俎』に出てくるものは「錐」)。
- 鬼や小人の持つ小槌は日常とそれ以外の世界の境界を打ち壊すという伝承から、現実と使用者の心との境を揺るがせることで願いをかなえている(南方大先生によると―、「子供が死ぬのを防ぐために槌を死体に見立ててお葬式をする」とか「巫女の周りに槌をおくと霊力がそがれる」と言った謂れや習俗が存在する)。
といった様々な謂れや仮説が存在する。