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概要編集

藤田和日郎の漫画『月光条例』の主人公。


現(うつつ)高校に在籍する2年生であり、養父である岩崎徳三が営む「ラーメンいわさき」の手伝いをしながら二人で暮らしている。苦手な物は「お月さま(特に満月)」「本当の事を言う事」「エンゲキブ(月光の幼馴染。同じ高校の演劇部に所属している事からこのあだ名が付けられた)」「オヤジさん(岩崎徳三)」の4つ。

エンゲキブが読んでいた童話「鉢かづき姫」から飛び出してきたハチカヅキと出会い、青い月光によってねじ曲げられた(「月打」された)おとぎ話を正す為に「月光条例」執行者としての戦いを繰り広げる事になる。

キャラクター名の由来は児童書で有名な日本の出版社『岩崎書店』だろう。


性格編集

「自分でも嫌になるくらいのへそ曲がり」と自称するように、常に本当の事を言おうとせず、物事や周囲の人間に対して冷めた態度を取ることが多い。また、皮肉や相手を煽るような言葉を多く用いる。不良達との喧嘩が日常茶飯事であり(その殆どが月光の圧勝である)、教師や生徒の多くからは暴力的な人間であると思われている。


しかし、不幸な境遇や厳しい立場に置かれている者には基本的に優しく(自分の不幸を嘆くばかりで立ち上がろうとしない者には厳しい態度を取る)、その様な者を助ける為には自分の犠牲を顧みず行動する事から、彼のそのような性格をよく知る者や彼に助けられた人達からの評価は概ね高い。

また、不真面目な態度に見えて人の話を注意深く聞いていたり、洞察力に優れていたりするので、「月打」されたキャラクターが抱えていた周囲の環境の不満や復讐心などをいち早く見抜き、ただ「月光条例」を執行しさえすればよいと考えている他の条例執行者とは違った理念で動く事も多々ある。彼に条例を執行されて正気に戻ったキャラクターの多くは彼に感謝の念を抱き、後に協力関係を結ぶ事もある。


もっとも、良識はあるのだが、世間の一般常識について妙にぬけているところがあり、特に精密機械に関する扱いや学習が不得意。そのためか、携帯電話を持った時等は粗暴な不良としての印象だけでなく、洞察力のある人物としての一面まで鳴りをひそめ、間の抜けた言動をとってしまうことも。

この常識の抜けなどについては、彼の過去に起因するところも多少あるが、機械に関する手際などの悪さについては、そうでもないようで、作中にて座学などがそれなりに改善された後も特に変化はなかった。




















月光の正体編集

チルチル

おとぎ話の〈読み手〉(ニンゲン)として「月光条例」執行の為に奮闘していた月光だが、実は彼自身もまたおとぎ話のキャラクターであり、その正体は童話「青い鳥」の主人公チルチルだった。今の岩崎月光の姿はセンセイが振るったうちでのこづちの力でチルチルが人間に転生したものである。

能力は、月打を受けて強化された魔法の帽子(他のおとぎばなしの世界や、読み手界のあらゆる時代へ行ける)と、『アラビアンナイト』の世界で得た魔法の力。


最強月打とお菊編集

およそ100年前、チルチルは月打を超える月打「最強月打(ムーンストラックスト)」を受けて狂化するとともに、他のおとぎばなしのキャラクターが知らない「自分たちや物語は〈作者〉と呼ばれるニンゲンに作られた」という真理を知る。

そして、自分たち兄妹の不幸な生い立ちを変えてもらおうと、原作者のモーリス・メーテルリンクに会いに行くが、メーテルリンクは「物語を変えることはしない」「ハンス・クリスチャン・アンデルセンの書いた物語に比べれば、君たちは不幸ではない」と、チルチルの頼みを断る。

月光条例を執行しようとするはだかの王様とハチカヅキに追われるチルチルは『雉も鳴かずば』の世界に行き、主人公の少女・お菊と出会う。彼女と父親に降りかかった不幸を目の当たりにし、しかし民間伝承であるため〈作者〉がおらず物語を改変してもらうこともできない事実に打ちひしがれたチルチルは、駆け付けた王様に「誰かを幸せにするまでは『青い鳥』に帰れない」と懇願。

王様はその懇願を受け入れ、『マッチ売りの少女』を救ってみせろ、と言い、チルチルは『マッチ売り』の世界へ行く。


なお、物語の中で、自分が不用意に発した言葉によって父親の命を失ったお菊は、本当に必要なこと以外しゃべらなくなってしまった。

そのため、お菊が、父親の死の遠因を作ったチルチルに対してさえ文句を言わなかったことから、チルチルは「お前が本音を言わないんだったら、俺も本当のことは言わない」と誓う。

こうして、チルチル=月光は、「本当の事を言う事」が苦手になった


マッチ売りの少女とアラビアンナイト編集

マッチ売りに出会ったチルチルは、彼女をスルーした通行人や、労働を強制した叔父と娼婦を殺し、作者のアンデルセンに物語を改変するよう要求するが、「書きたい物語を書けないことは、死ぬのと同じ」と断られる。アンデルセンからどんな魔法も存在するという『アラビアンナイト』のことを聞いたチルチルは、マッチ売りをともなって『アラビアンナイト』の世界へ行き、魔法を学んで、マッチ売りに豪華な生活を送る。

そんなチルチルの横暴をおとぎばなし界は許さず、ツクヨミの大部隊によってチルチルは逮捕され、条例を執行される。ズタボロになったチルチルは、お菊とマッチ売りから打ち出の小槌を振られ、「チルチルが、いつか自分自身を助けられますように」という願いを受け、『青い鳥』に帰るのだった。


センセイと高勢露編集

『青い鳥』に戻ったチルチルを迎えたのは、自分ではないもう一人のチルチルが、妹ミチルと一緒にいるという状況だった。

考えた末に、『青い鳥』に自分の居場所がないと思ったチルチルは、読み手界の日本にさ迷い現れ、そこでセンセイと名乗る男性と出会う。

月から色々教えてもらうというセンセイに不思議と惹かれたチルチルは、「散る」から散吉(さんきち)という名前を与えられ、センセイのもとに居候することになる。キャラクターなので肉体的に成長しないはずだが、チルチルは次第に成長し、髪の色や人相が変化、現在の月光とほぼ同じになる。

センセイとの生活に充足感を感じるチルチルのもとに、センセイの養女・高勢露が現れる。センセイを父親として慕いながら、世間体のために別居させられている露はチルチルに嫉妬していた。

そして、センセイが月光条例の執行者(しかも、ハチカヅキのパートナー)であることが判明。チルチルと露は、執行者としてのセンセイのサポート役の座も相争う関係になる。

やがて、センセイが不治の病にかかっていることがわかり、チルチルはセンセイに執行者をやめるよう進言するが、「私は、私の物差しで『最高』と思えることをしている」とセンセイは断る。そんなセンセイのサポートをしていく中で、露との関係性も良いものになっていく。

センセイが最後の月打キャラクター・幸福の王子に条例執行すると、チルチルはセンセイから、露の正体が本物のかぐや姫(おとぎばなしのキャラクターではない)ことを教えられ、彼女の今後を託される。

そしてセンセイが執行者としての役割を全うした褒美として振るった打ち出の小槌によって、チルチル自身も望まぬまま、はるか未来へ転生することになる。

消滅する間際、露に「ケンカ相手でも一緒にいたい」と言われて。


そして現代。チルチル・散吉としての記憶を失って赤ん坊となったチルチルは、養子を探していた岩崎夫妻に拾われ、「岩崎 月光」の名前とともに、新たな人生を送ることになる。


能力編集

  • 格闘能力

元より不良達との喧嘩では百戦錬磨の実力であり、誰かに戦い方を教わった描写は見られないものの、蹴りを寸止めした直後に相手を殴るといったフェイント等の技術も卓越しており、彼自身の戦闘力はかなり高い。


  • 月光条例の極印

ハチカヅキと出会ったとき、彼女から無理やり写し渡された、条例執行者の証。


「月光条例」執行の際には、額に条例執行者の証である三日月型の「極印」が浮かび、極印から直接力を流し込む(頭突き、極印の力を写した拳で殴る)か、「武器や道具を呑みこむ事で、その武器の従来の10倍の力を持って変身する」能力を持ったハチカヅキが変身した武器(多くは鬼の金棒。クロスボウや自動車、果ては小型ジェット機など、その変身パターンに限界はない)で攻撃する事で、「月打」されたキャラクターに条例を執行する(正気に戻す)事が出来る。


本来の条例執行者であるハチカヅキが近くにいない場合、極印の力が薄れ、条例を執行する事が出来なくなるのだが、物語の中盤から感情が昂った際には極印が浮かばなくとも条例を執行する事が出来るようになった。その際の月光はまるで髪の毛が大きく渦を巻いたように逆立ち、「月打」された桃太郎が放つハチカヅキが変身した剣の一撃を頭で弾き飛ばしたり、桃太郎の足をつかんで地面や壁に乱暴に打ちつけたりするなどの超人的な力を発揮するようになる。

この不可思議な力は、自身がチルチルであること、過去に月打されたことに起因するものである。


  • ハチカヅキ

パートナーであるハチカヅキを武器化して戦う。

ハチカヅキは呑み込んだものに変化する兵器であり、普段は主に『一寸法師』の鬼の金棒に変化する。


  • 魔法の帽子

『青い鳥』の主人公として、作中で与えられた帽子。チルチルとしての記憶を取り戻すとともに復活した。

額のあたりのダイヤを回すことで、望む場所の瞬間移動したり、別の場所にあるものを瞬時に呼び寄せることができる。

帽子ではなく、髪型が帽子のような形になることもある。


  • 魔法

『アラビアンナイト』の世界で得た力。望むことは何でも叶えられる、ほぼ万能の力と言える。

発動には「アブラカダブラ」という呪文を唱えなければならず、呪文を言う途中で妨害されて失敗することもある。


  • エンゲキブの体液

幼い頃からエンゲキブと、ジュースの飲みまわしなどをしていたため、月光の体にはエンゲキブの体液が少しずつ入り込んでいる。

これによって月光の体質は月の民に近づいており、地球人やおとぎばなしキャラクターでは不可能な、月の民へダメージを与えることが可能になっている。


関連タグ編集

週刊少年サンデー 少年サンデー

藤田和日郎 月光条例

チルチル

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