概要
企業戦士YAMAZAKIで知られる富沢順の漫画作品。『週刊少年ジャンプ』で1981年から82年にかけて掲載されたが、全2巻で打ち切り。
しかしながら再開を望む声も多い熱血SFバトル漫画としても有名。
当時は車田正美の風魔の小次郎などのバトル系のヒット作が多数登場しており、残念ながらコマンダーゼロはそれらと競い合う形になってしまい読者アンケートでは有効な数字を出すことができなかった。それゆえの打ち切りだったが、実際には熱狂的なファンが多数存在しており、それらが連載終了後の再開要求や、単行本の大ヒットなどに繋がっている。
現在であれば青年誌などを媒体にして掲載されてもおかしくない作品であり、明らかに早すぎた傑作である。
あらすじ
クレイジー80S(エイティーズ)…人はその時代をそう呼ぶ。
1980年代後半、日本は未曽有の激動を迎えていた。凶悪な武装犯罪に対抗すべく作られた特殊警察日本武装警察、通称JAPは、36人の超戦士「コマンダー」を保有し市民を守ることを決定した。
そんな中、表はダメ警官で通しているコマンダー0=鋼零太は、原子力発電所からプルトニウムを盗み出したテロ組織を鎮圧するように命じられる。0の前に立ちはだかるテロリストの正体は、兵器と合体したサイボーグ「兵器人間」を操る軍事組織「フェニックス」だった!
登場人物
日本警察
鋼零太
警視庁門仲署の捜査課の刑事だが同僚たちからは『門仲署の恥部』と馬鹿にされている。
典型的な昼行灯で勤務中に出前のラーメンを食べてるほどラーメン好き。
しかし、その正体は極秘組織J.A.Pの秘密捜査官であるコマンダー・ゼロ
一般所轄の捜査課に勤務しているのは偽装であり、あくまでも任務の一環。そのため正体が露見しないように鋼零太でいる時は何一つキメちゃいけないと自分に課しているためである。
特殊能力を持たない生身の人間であるため、バトルのたびに重症を負ってしまう。そのため様々な理由(食中毒、交通事故、ガス爆発――などなど)をつけて入院を繰り返している。
最終回直前で長期研修名目で北海道の駐在所に飛ばされる事になり門仲署の仲間たちの前から姿を消すがそれはフェニックスとのラストバトルのために、表社会との繋がりを断つためであった。
神代課長
門仲署捜査課課長で零太の上司。いつも手にしているリンゴがトレードマーク。昼行灯の零太と違い常に冷静で落ち着いている。しかしその正体は――
門仲署捜査課職員
零太の同僚たち。零太を厄介者扱いしつつも、入院時には見舞いに必ず駆けつけるなど仲間としては大切に思っている。ラストバトル直前で北海道への転勤名目で姿を消す零太を暖かく見送りつつも、突然の辞令には疑問を抱いていた。
森田由美
交通課の婦人警官で零太の恋人。(表向きは)事故や不運でよく大怪我をする零太の面倒を甲斐甲斐しくみている。零太がコマンダーであることは知らない。フェニックスエージェントの一人であるアロマに目をつけられ拉致されかけた事がある。
ラストバトル直前の頃には零太の周辺に重大な事件・事故が多発することに疑問を抱いており、零太の正体には薄々感づいていた。
五十嵐マキ
門仲署交通課の婦警で交通巡視員。由美の同僚である。元スケバンで街の不良少女たちの姉貴分。その経歴もありケンカがめっぽう強い。由美を拉致しようとしたフェニックスの工作員を撃退するが、特殊武器を保有したアロマには歯が立たなかった。
零太のことを常に馬鹿にしていたが、彼の正体については早期に気づいていたようである。
警視総監
国家公安委員会から発令される司令ゼロを通達する役目がある。J.A.P.の神代司令に直接指示を下す立場にあるが、常にやりすぎてしまうコマンダーには不信感を持っている。
J.A.Pメンバー
コマンダーゼロ
極秘組織J.A.P.の秘密捜査官コマンダーの一人。J.A.P.の中では最強であると言われている。化け物じみたタフネスの持ち主でありいかなる負傷を受けても短期間で戦線復帰してくるほど。闘争本能・正義感、ともに被と並外れており、理不尽な暴力を行使するものには激しい怒りをあらわにする。
その出動には国家公安委員会からの「司令ゼロ」が必須となる。
所有武装として、インパクトの瞬間相手に高出力電磁波を叩き込む打撃系ナックルウェポン「電磁ブレイカー」と、拳銃型特殊兵器「コマンドキャノン」を所有。専用車輌は特殊オートバイ「クェーサー」
ただし肉体は全くの生身であるため、フェニックスのウェポノイド相手には苦戦することが多く、勝利しても多大なダメージを負ってしまう。そのため事件解決後には入院となるのが毎回のお約束。
闇の軍隊フェニックスとの戦いに挑むことになるが、やがて敵組織の背後にある陰謀に気づくことになる。
コマンダー・レオ
「この俺に命令できるのは俺より強えヤツだ!! つまりそんなヤツはいねえんだよ!!」
「いいのかい?公衆の面前で…PHOENIXのエージェントが晒しもんだぜ!!」
本名不明。「無敵の獅子」の二つ名で恐れられた、アルゴンガスレーザーブレード「斬光剣」の使い手(二丁装備しており二刀流でも戦える)。そのパンチ力はアメリカン・バッファローの頭蓋骨をも砕く(とは本人の弁)。口は悪いが意外に面倒見がいい。
かつて日本国内の犯罪シンジケートを単独で壊滅に追いやったほどの凄腕であるが、性格的に協調性がなく、犯罪シンジケート壊滅の折に死亡説を流して国外に脱出、アメリカのニューヨークに隠れ住んでいた。しかし激化するフェニックスの討伐のために神代司令に呼び出され、反発しつつも戦闘に合流、ウェポノイド相手に斬光剣を振るうこととなる。
戦闘したウェポノイドはアレクス(未決着)とヴァルファーの2名。
フェニックスの本拠地に突入して行ったゼロを追ってラストバトルへと合流することとなる。
コマンダー・ジョー
本名不明。ニューハーフであるとカミングアウトしている。粒子ビームブラスターを2門携行しており使用時には前腕部に装着する。終盤にシルエットで出没し由美とマキを助けたりしていたが最終話にようやく登場。
本作の打ち切り状況を最も表している不遇キャラである。
林 紅竜
「科学が命を踏みにじる為にあるなら…オレたち科学者は何の為にいる!!」
J.A.P.科学班チーフで優秀な科学者。コマンダーの使用する武装の開発や戦闘技能の訓練を引き受けている。ゼロの相談相手であり、気の合う親友、ゼロに電磁ブレイカーの威力とリスクについてレクチャーしている。
フェニックスの残した証拠物からフェニックスの科学力や組織力の巨大さを察知し、またウェポノイドやB兵器のレベルの高さから、フェニックスに関与している科学者の存在や組織のバックボーンに早期に気づいていた。
ラストバトルにて警察上層部からの撤退指示を無視してフェニックスへと突入していったコマンダーたちを見送ることになる。
神代司令
J.A.P.総司令官。36人のコマンダーのまとめ役であり総元締め。組織掌握に長けた傑物であり、重要事案への決断が鈍い警視総監や国家公安委員会を皮肉っていた。
フェニックス討伐の陣頭指揮を取るが、フェニックスの背後に存在する巨大なバックボーンに気づいたため撤退を指示する事になる。
南
J.A.P.が装備するジェットヘリのパイロット。ウェポノイド・エウリノームとの戦闘に巻き込まれフリーズブラスターの餌食となり落命する。
民間人
スーパージーニアスファイヴ
5つの異なる国の出身からなる超天才科学者集団。IQの合計は二千とも三千とも言われている。日本で開催される世界平和特別会議に出席するために来日するが、日本警察の必死の警備やコマンダーゼロの抵抗も虚しくフェニックスに拉致されてしまう。
その後、フェニックス側から5人の返却が通告されるが、ゼロが引き取りに向かえば、そこで引き渡されたのは大脳を抜き取られ廃人と化した5人でありかろうじて生命が維持できている状態だった。
禿頭にされた頭部に切開跡が残る姿は強烈なトラウマシーン。
その後、ウェポノイド・カッシェル戦においてゼロに加勢するために奇跡的に肉体を動かし、カッシェルに抱きつき高圧電流ケーブル線にわざと触れることで感電焼死する。
抜き取られたその大脳はフェニックスのメインコンピューターに組み込まれ、生体コンピューターにされていた。間違いなく本作における最大の犠牲者である。
主要メンバーは以下の5人。
- ロバート・メッツ ロボット工学博士(アメリカ)
- カール・リンク 医学博士(ドイツ)
- ビリー・ナイト 化学博士(イギリス)
- ハリー・ダージリン 物理学博士(オーストリア)
- 浜崎勝士 コンピュータ工学博士(日本)
フェニックス『PHOENIX』
ベリアル
第一話に登場した兵器人間(ウェポノイド)。重武装機甲師団を率い原子力発電所からプルトニウムを強奪。しかし真の目的はJ.A.P.最強の男・ゼロをおびき出し、彼とJ.A.P.に宣戦布告することにあった。
カッシェル
またの名を「閃光のカッシェル」。会議のために日本に集結したスーパージーニアスファイヴを誘拐し、両目からのレーザー砲「熱きまなざし(ヒートビジョン)」で一度はゼロを退ける。
「崇高な目的の為にはすべての手段は正当化される!!それが強者の法則だ!死ね ゼロ!!」
エウリノーム
兵器獣・魔犬エルサスを従え「虐殺計画(ジェノサイド・プロジェクト)」を遂行する兵器人間。「電子冷凍砲(フリーズ・ブラスター)」を装備しゼロを苦しめる。
「甘いなゼロ…この世に存在するのは“力”という事実だけだ」
「まさか…このいいかげんな時代に…全身から炎を撒き散らして生きる男が…いる…とは…」
魔犬エルサス
巨大化・狂暴化改造を施された兵器獣第一号。その正体は・・・・・・。
ヴァルファー
エウリノームとは別行動でエルサスをコントロールしていた兵器人間。レオに見つかり、クリプトンガスレーザーブレード「マッド・サイザー」を振るうも一刀両断にされる。
「ハッ!光栄だね無敵の獅子よ! 君をこのマッド・サイザーで叩き斬れるとは!!」
「悪い冗談だぜ(上段台詞に対するレオの返答)」
アレクス
複数話にわたって登場するゼロのライバル的存在。「電光(サンダーボルト)のアレクス」の異名通り、高圧電流を武器とする兵器人間。ブロンクス出身。人間の恋人がいる。
「安心なさい。地獄はあなたの生まれ故郷でしょう」
「フッ…幻想…か…それでも、いいさ…おれは…なにかを…追い求めて…いたかっ…た…」
アロマ
アレクスの恋人。生身の人間だが、高速振動棒「クレイジー・ロッド」を携行し戦闘訓練も受けており、アレクスと行動を共に出来るくらいには強い。アレクスをはじめ自分たちを道具としかみなさないフェニックスに疑問を抱き、最終話でゼロと共にフェニックス本部に向かう。
登場組織
日本武装警察 〔 J.A.P. 〕
凶悪化の一途をたどる未来型犯罪に対抗する為に日本政府と日本警察が極秘裏に発足させた武装警察。組織としての正式名称は『日本武装警察』で英語表記は『Japan Armed Police』で略称として『J.A.P.』と呼ばれている。その存在を知るものからは地獄の使者として非常に恐れられている。
警視庁本庁の地下深くに極秘の本拠地があり、その存在は一般市民にはもとより警視庁職員にすら公開されていない。〔ただし、コマンダーの存在は警視庁職員の間では実在する事は知られている模様〕
超法規的存在であり、重火器や特殊武装などの所持と運用を許可されているほか、特別な許可なしに犯人を殺害する事が許されている。指揮系統は国家公安委員会直下で、一般警察からは切り離されている。
神代司令をトップとして、所属メンバーの秘密捜査官である『コマンダー』を総数36名保有、その他に武装の開発や、捜査対象の鑑識分析を行う『科学班』が存在する。科学班のチーフは林紅竜。
一般的な犯罪者はもとより非合法な組織犯罪者に対して絶大な捜査実績を持ち所属するコマンダーは犯罪者からは畏怖の対象である。
フェニックス『PHOENIX』
日本武装警察の前に立ちはだかることとなるサイボーグテロリズム集団。
組織の全容は分かっていないが、リーダーである総帥ミスターシャッフルを頂点に、幹部メンバーとしての兵器人間(ウェポノイド)が存在し、さらにその下に機甲師団や一般兵士が存在する。
また、作品内の描写では、一般の民間企業の技術を取り込んでいると思われる描写があることから、民間企業に偽装して活動している面もあると思われる。
組織の行動目標として理想国家の建設を掲げており、その手段として民間人の間引きを意図した大量虐殺行為である虐殺計画(ジェノサイド・プロジェクト)を実行する事となる。
組織としての規模はもとより、科学力・機動力・資本力、そのいずれも一介の犯罪組織の範疇には収まらない物であり、J.A.P.でもその組織の背後にヤバい存在を感じていた。
以下ネタバレ
実はフェニックスの背後に存在していたのは、軍国主義者や兵器産業などであり、日本の優れた科学技術を利用して、日本を世界に冠たる軍事兵器大国へと作り変えることが真の目標であった。
ミスターシャッフルはそれらの人物たちと結託した、世界兵器産業のフィクサーであり、兵器人間たちは彼らにとっての新商品でしかなかった。しかも、コマンダーたちにことごとく撃破されたことにより兵器市場では評価されず失敗作の烙印を押されてしまう事となる。
兵器/テクノロジー
本作品に登場する破壊兵器と、それに採用されているテクノロジー
(本稿は推測を含みます)
電磁ブレイカー
コマンダー0が所有する打撃兵器。
「サイボーグを殴って倒す!」と言ういかにもジャンプ的な男気あふれる破壊兵器。
『電磁波破砕法』と言う技術が適用されており、高圧の高周電磁波を短時間に大量に対象物へと浴びせることで対象物を破壊する技術。電子レンジをさらに強力にしたものと考えて差し支えない。
両肩のプロテクター内に電磁波を発生させる高出力マグネトロンが内蔵されており、そこからシールドケーブルで両拳のナックルプロテクターに誘導された電磁波を、打撃接触時に開放する事で機能を発揮する。起動スイッチは両肩のプロテクターの周囲の鋲に擬装されている。
近接戦に特化した兵器で分厚い鋼鉄すらぶち抜くが、敵に肉薄しないと使えないほか、使用者に対して跳ね返ってくる反動も相当なものらしい。
コマンドキャノン
コマンダー0が所有する拳銃型兵器。
リボルバー拳銃を模したデザインをしているが、シリンダー弾装でない為、一般的な薬莢を用いない発射システムが用いられている可能性がある(液体炸薬式、電磁レールガン式など)
コマンダー0の遠距離攻撃手段であり、首都高速の路盤を真下からぶち抜く威力がある。
ラストバトルでは自衛隊の戦車をふっ飛ばしていた。
アルゴンガスレーザーブレード『斬光剣』
コマンダーレオが両腰に下げているレーザーブレードでガスレーザーを用いる。
本体から噴出するアルゴンガスレーザーを刀身として用いている。
通常時はレーザーブレードの長さは1m程だが、振り回すことで攻撃有効範囲を伸ばすことが可能(らしい)しかし、レーザーの刀身部の長さをどうやって制御しているかは不明
粒子ビームブラスター
コマンダージョーが所有する超小型の粒子ビーム兵器、使用時には両腕の前腕部に装着する。
白銀色のビームを打ち出し遠距離に有効。ただし、使用チャンスが一回しかないため、詳しい威力や原理などは明かされなかった(泣)
ジャンプコミックス運営に与えた影響
かつては週刊少年ジャンプでの打ち切り作品は集英社の子会社である創美社からジャンプスーパーコミックス名義で発行されていた。これは打ち切り作品はコミックスでの売り上げも見込めないと言う観点から来た処置であり、打ち切り作品は終了後も差別されていたことが窺える。
とうぜん、コマンダー0も創美社送りとなるのだが、ここで大事件が起きる。
それまでジャンプスーパーコミックスで刊行された作品は追加増刷はありえず、一回発行されたらそれで終わりである。いわば打ち切り作品のコミックス刊行はお情けでしかなかったのだ。
ところが、コマンダー0のコミックスは刊行後即日完売、追加増刷を行うも、これも完売、最終的には第5刷以上を数えている。編集部には連載再開を希望する声が殺到する事となる。
これはジャンプ編集部に対して、多大な衝撃を与えた模様でアンケートランキングで下位でも、コミックスで人気が望める作品が存在すると言う認識を与えるきっかけとなった。
事実、これ以後ジャンプスーパーコミックスでの刊行はほぼ途絶え、打ち切り作品でも集英社本体で発行されることが通例となった。
魔少年ビーティーやメタルKと言った、大人気は無いがカルト的な人気がある作品は短期打ち切りの性格から本来なら創美社送りになる運命だったが、コマンダー0の単行本事件が起きたことで、ジャンプコミックスにて発行されることとなった。
その意味では少年ジャンプコミックスのターニングポイントとなった作品である
ニコニコ動画のMAD
信じがたいことだが、30年前の打ち切り漫画なのに、ニコニコ動画にMAD動画が2本も!公開されている。
30年前の打ち切り漫画なのに!
30年前の打ち切り漫画なのに!
(大事なことなので2度言いました)
リンクを張りたいけど、いろいろとアレなので・・・・・・
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