ショルダーホルスターは、脇に銃を吊り下げるタイプのホルスター。
上からジャケットや外套を羽織ると、銃を隠し持つことができる。
一般的には拳銃用が殆どだが、小柄な短機関銃等を収めるため専用に設計されたホルスターもある。
概要
肩にベルトを掛けて、脇に銃が収まる構造のホルスター。
銃が収まる場所は脇の下なので基本的に利き手と逆側、例えば右利きなら左脇に銃が収まる。(そうしないと抜けない)
反対に、予備の弾を収める場合はリロードを行う利き手でない方と逆側、つまり利き手側の脇となる。
文章にすると面倒だが、要はメイン画像の娘さんは右利きということ。
肩のベルトはリュックサックの肩紐のように、ベルトが両肩を通る形が一般的。
後ろ側は「X字状」に交差するものと、ホルスターの真上に出ているベルトの上下に、逆側の肩に掛けるストラップが出ているもの… などなど沢山の種類がある。
多くの場合、激しい運動をした際に銃や装具が暴れないように、下側にズボンのベルトを通せるようになっている。つまり、背面が「X字型」になるものは、乱暴な言い方をすると「サスペンダーにホルスターが付いた形」になるになる。
ホルスターの種類と使い分け
特に銃の存在を秘匿したい場合は服の上からバレないように比較的小型の中型(PPK程度)か、或いは更に小さい銃である必要がある。
警護官などのように銃を持っていることは明らかだが威圧しない為に銃を隠す場合、服の上から携行がわかってもかまわないのであればグロック17等の中・大型寄りの銃が使われる事もある。
この際、銃を抜きやすくするように上着の釦は外しておく必要がある為、映像作品等では戦闘態勢に入ったことを判りやすくするため、釦を外すカットが入る事も。
ショルダーホルスターは、銃が収まる向きによって縦型と横型があるが、銃が大きくなれば長い銃を安定して収めることができる縦型一択となる。
縦型であれば、拳銃だけではなく、全長が概ね胴の長さと同等くらいになる銃までなら短機関銃だろうが散弾銃だろうが(一応)仕舞うことができる。(コート等の隠せる服装でないと見栄えは…)
一方で横型は抜きやすいが文字通り銃が横向きに仕舞われるために銃口の向きが問題となる場合がある。
つまり、銃を抜くときに扱いを誤るなどして暴発させると銃弾は地面ではなく横方向、つまり着用者の周囲に飛ぶことになる。これは、例えばボディガードが用いる場合は非常に重大な問題であることは火を見るより明らかである。
ヒップホルスター等、腰に装着するホルスターでは取り付け位置によっては座る際に邪魔となる、車両等での移動時には座った姿勢では抜きずらい、等の理由からショルダーホルスターが使われる事がある。
使用者・キャラクター
よく知られているのは、私服で活動する警察官などである。
日本の警察の場合は、.32口径程度の小型のけん銃を使用する事が一般的とされる。
治安機関や諜報機関、犯罪組織などが民間人を装って銃を隠し持つ必要がある場合の他に、重要人物の護衛を行う際にも使用される。
これは、周囲の人物を必要以上に刺激したり、威圧感を与えることを防いだり、或いは式典やパーティなど銃の存在が不適当な場所で銃を持ち歩く為である。
一方で民間分野では、多くの国では大型の銃より拳銃のほうが規制が厳しいこと、強盗や乱射事件などの犯罪を防ぐためにコンシールドキャリー(銃の隠し持ち)は有資格者などに限るなど厳しい制限があるため、ショルダーホルスターそのものは規制されていなくとも使い方によってはお縄を頂戴することとなりうる。
創作作品では、私服に合わせやすく、銃を隠し持つ事が出来るという特徴から、あらゆる作品に「出演」している。
ストラップが肩から胸の横を通る構造であるため、男女問わず身体的な魅力を増す効果があることも無関係ではない… 筈。
軍隊ではこの手のホルスターが使われることは少ないものの、身体の側面から前面にホルスターを持ってくるために腰回りが身軽になり、狭い場所で身動きが取りやすく引っ掛かりにくいのでパイロットや戦車兵など着座状態で戦闘行動に従事する将兵を中心に使用された。(戦車兵用は取り付け位置が比較的胸に近い位置であったり、ベルトの位置が異なる等からタンカーズホルスターなどの別の名前で呼ばれるものもあった)
現在では、胴回りの装備品が増えるなどで単一機能のショルダーホルスターが用いられる事は少なくなり、戦車の搭乗服やボディアーマー、パイロットのサバイバルベスト等にピストル用のホルスターを取り付けたり、ポーチで兼用させることが増えている。
短機関銃向け
小型の短機関銃が収まるホルスターも、拳銃用と比較すればごく少数ではあるが使用されている。
前述の理由からほぼ全てが縦型で、使用者は護衛などを担当する公的機関や警備員が殆どであろう。
民間人への銃規制が緩い国でも「フルオート火器」と「コンシールドキャリー」が厳しく規制されている国が殆どなので、公的機関や専門の資格を持った人以外で使い道といえば、真っ当な使い方でコレクションかTP9等のSMG等が元となった拳銃の携行、映像作品の制作、そうでなければ犯罪以外殆どない。
短機関銃向けのものは「ホルスター」と名の付くものでも形は千差万別で、例えばステアー社が自社のTMP向けに供給しているものは文字通り袋状の「ホルスター」。
一方で、H&KのMP7等に向けてイーグル社が製造しているものは、銃の前面を覆うフックとベルトで固定するもので、固定位置は「ショルダーホルスター」なんだけど、どちらかといえば「ウェポンキャッチ(スリングで釣られた小銃等を手を放して移動する際に暴れないように固定するもの)」に近いもの。
傑作なのは、H&Kが自社のMP5K向けに供給しているもので、形は「丈夫なサスペンダーの下の方にフックがついてるだけ」という代物。使い方はレシーバー後ろ側のスリングスィベル(負い紐を通す輪っか)に引っ掛けるだけ。そもそも「ホルスター」と呼んでいいものか悩ましい奇っ怪なものだが、見てくれはともかく案外使いやすいらしい。
短機関銃向けのホルスターでは抜いた銃は完全にフリーとならず、ストラップで繋がったままとなるものもある。
これは単純に銃を取り落とす事を防ぐだけでなく、銃を前に引っ張ることでストラップを通じて身体と銃の双方に安定させる力を掛けて、銃をガッチリ構えることが出来るというもの。(スリングストックと同じ機能)
MP5Kや、ワルサーMPLなど、ストックがない銃でも安定して構えられるほか、ストックがある銃でもストックを広げる手間を掛けずに射撃できる。