概要
オーストリアのシュタイアー(ステアー)・マンリッヒャー社がMP5の対抗馬として開発したサブマシンガン。
銃床がオプションであることなどからマシンピストルにも分類される。
MP5Kよりも小型で軽量であり、とても低価格で完成された。
弾倉はUZIのように垂直にグリップ内に収める仕様であった。
しかし、MP5は当時既にシェアの大半を占めており、TMPはこれに食い込むことに失敗。
さらに1994年のAWBと1996年のワッセナー協定による銃器の所持や輸出入に関する規制強化が決定打となり、販売数が低迷し生産が中止され、シュタイアー・マンリヒャー社は、スイスのブルッガー&トーメに全権利を売却した。
ブルッガー&トーメ社は、これを独自に改良してMP9として発売した。
取り外し式アッパーレールをアッパーカバーと一体にする、オプションだったストックを標準装備にする、等、様々な改良がされている。
ボルトキャリアには9mm弾の薬莢径と同径の窪みが加えられている。TMPのチャージングハンドルはAR-15同様に解放方向にしか作動しない構造となっており、閉鎖不良時に強制閉鎖は不可能であった。ボルトフォアードアシストを搭載していないが、リム側を差し込んだ弾薬をハンドル代わりに押し込むという方法で解決が出来る。(本来は薬莢の貼り付きによりボルトが解放できなくなった際に強制開放に用いる機構であるが、ユーザーがこういった強引な解決方法に使用しているので正規の使用方法ではない)
フォアグリップとフルオート射撃機能がない拳銃モデルのSPPも存在するが、こちらはアメリカ市場を狙うもAWB連邦攻撃武器規制(所謂アサルトウェポン規制)により千艇程度で販売は終了。
こちらの権利もブルッガー&トーメ社に売却してしまい現在はブルッガー&トーメがTP9の名で発売している。(公的機関向けTP9はフルオート射撃可能)
フォアグリップ部にはSPPにはなかったアンダーマウントレールがあり、フォアグリップやライトモジュールなど、様々なオプションが装着可能となっている。(アンダーマウントのないMP9もレール付サウンドサプレッサーを使用する事でフォアグリップ側にライトの装着が可能)
また、MP9同様にサイドレールも搭載されており、カートキャッチャーはレール後端部に取り付けるようになっている。
どちらのモデルにもフェイスシールド付ヘルメットに対応した大きく湾曲したストックも用意されている。
現在の最新モデルはMP9-N及びTP9-Nとなっており、セレクターは同社のAPC9やAPC556等と同じ回転式のセレクターへと変更されている。
MP9-Nはスイス軍にてMP14(Machinenpistole 14)として採用されている。
AWBは時限立法であるため2004年9月13日に期限を迎えて失効しており、現在はアメリカ国内でも販売がされている。
口径バリエーションとして6.5x25mm CBJを使用するモデルや、.45ACPを使用するMP45が予定されている。
MP7A1と同じ4.6mm弾を使用するMP46の試作が発表されているが、現在も量産はされていない。
データ
全長 | 282mm |
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銃身長 | 130mm |
重量 | 1,300g |
口径 | 9mm |
装弾数 | 15/30+1発 |
余談
基本的に銃床は付属していないが、張った状態のスリングをストックのように使うスリング・ストック(負い紐銃床)を考えた設計となっており、スリングスイベルの位置が側面ではなく後部になっている。
後部のスリングスイベルとグリップ下部の二点で固定される樹脂製固定式ストックには左右にスリングスイベルの装着が可能であり、スペーサーによってバットプレートの厚みを調整できるようになっている。
光学サイトを取り付けるマウントベースは別部品となっており、必要に応じて取り付けるようになっている。
(マウントベースは別部品は当時としては普通であったが、ストックまで別としたのはこれらをオプション化することで必要な部品を必要な分だけ買えば良いので安く済むということを目的としていた。後のMP9はサイドスイングタイプのフォールディングストックや固定式ストックを持ち、マウントベースも一体式となった)
また、バレルのように見えるものはマズルカバーとなっている、閉鎖方式が銃身が回転するロータリーバレル式、機関部のレイアウトが一般的な構造に対して横向きになっている等の少し珍しい構造をしている。
マズルカバーにサウンドサプレッサーを取り付けることで動作に影響を与えないような構造となっており、取り付け方法がねじ込み式からラグ式に変更されたもののMP9でもその構造は受け継がれている。
当初マガジンはAUG同様に半透明樹脂を使用する予定だったのか、マガジン外部に装填数を示す数字が刻印されていたが量産品では不透明の樹脂で成形されており、刻印が意味を成していなかった。
その後、MP9として販売される際に半透明樹脂へ変更され、ようやく外部の刻印が意味を成すようになった。
ステージガンは民生型を改造することが多いのでSPPでフルオート射撃は仕方ないと言えるが、KSCが販売したSPPのエアソフトガンの影響なのか、なぜか日本製アニメ等ではTMPではなくSPPをフルオートを可能にしたものが登場することが多い。
なお、KSCのSPPにフルオートが残されているのはセミオートのみではエアソフトガンとして面白くないため。
余談ながら、KSC版TMP/SPPは実銃用ストックを無加工で装着可能である。
後にKSCはMP9及びTP9を発売。専用サウンドサプレッサーは前部の消音器部と後部のQD機構の分割構造となっており、M14P1.0正ネジで接続されているので後部のQD機構に他のサウンドサプレッサーや他社製品の接続が可能となっている。
なお、実銃の販売終了後にシュタイアー社の工場にあった在庫のストックすべてを日本の無可動実銃販売店が仕入れたという逸話がある。